表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第四章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

47/52

平らな原っぱ

平原の国にて

龍の国の真の王派のシグルーンと会談し平原の国へ帰国した君塚摂政は早速ヤドヴィガに呼び出されていた。


「ただいま戻りました殿下。我らが支援していた軍閥、真の王派の内情についてある程度判明しましたのでご報告致します」

「おかえりなさいませ、君塚様。此度の旅路はいかがでしたでしょうか?お聞かせくださいませ」


ヤドヴィガは久しぶりに彼に甘えるために君塚の許を訪ねようとしたがその時には既に手紙を渡された挙句他所の王を訪ねようとする愚行に出て一体何処の誰が彼の王かその身に分からせようか考えていたが流石に軽挙妄動が過ぎると思い自重した。


「結論から申し上げれば彼女らは王女シグルーンを王位に擁立しようとしている王党派であり、シグルーン本人は神堂により母親を売国奴に仕立て上げられた時や妹を下級妃にされたことでトラウマを植え付けられていた為何年も眠らされていたようで御座います」

「あの男が原因でシグルーン様はお眠りに成られてしまったと。成る程、それは面倒な事に成っていた様ですね。で、その肝心のシグルーン様は?」


真の王派の名目上とはいえ首魁たるシグルーン本人は一体どうしたというのかヤドヴィガは君塚へ確認を求めていた。


「…殿下、まずひと言断ってからお伝えしますのでどうかお気を悪くされないでくださいませ。少しその…」

「はい、君塚様。私は良くも悪くも何時も貴方様に驚かされてばかりでございますからどんなことでも仰ってくださいな。もう貴方様の行動に驚けるほど子どもをするのはもう辞めましたから」


ヤドヴィガはもう君塚の奇行では驚けない程達観してしまいどんな結果も過程もバッチコイなメンタルに進化していた。


「殿下、私君塚悠里は龍の国の王太子シグルーン殿下に口付けをして彼女を長い眠りから覚ますことに成功しました」

「ぐふっ!き、君塚様!?な、何でそんなハレンチな…ああもう!!」

「童話を真似てみた結果でございます」

「童話の真似!?童話は架空のおとぎ話であるから許されるのであり普通はしませんよ!確かに眠り姫を目覚めさせる話はございますが貴方のような…いえ、別に君塚様の容姿とか年齢ではなくてですね…とにかく、貴方は一体なんてことを!!」


ヤドヴィガはもうどうしたら良いかわからない国際問題発言を聞かされて今からシグルーン殿下に会いに行って何とか謝りに行こうかと考えていた。

普通他国の王族に寝込みを襲って口付けなんて国によっては手打ちにされて膾斬りもあり得る程の蛮行である。

そしてしばらくして脳の処理が追いつき一旦落ち着いたヤドヴィガはキスの報告を聞いた瞬間、一瞬だけ部屋の温度が下がるほどの冷たい笑顔を浮かべる。

「……そうですか。他国の王族の唇を、私の許可なく奪ったのですね。外交問題としては私が揉み消しますが、私個人としては……どう責任を取っていただくか、後でゆっくり考えますね。それと君塚様」

「はい、何でしょうか」


いじましそうに髪の毛をいじりながらヤドヴィガは君塚を見つめる。


「もし、もしですよ。私がもし目覚めぬように、呪われてしまったら君塚様は…変わらず私を、私を待っていてくださいますか?」


もし自分がシグルーンのように何かが有って、目覚めぬ身体になってしまっても君塚悠里は離れず20歳まで契約を守って側に居てくれるかどうかの確認であった。

彼女には君塚悠里以上の頼れる男性が居らず、そして周りの男性と言えばカジミエシュ筆頭にろくでもない男性達ばかりであり国防も今や王国軍が居るがそれでも秩序を維持するにはやはり君塚の私兵が必要に成る。

不安そうなヤドヴィガを見て君塚は流石に不味いと思い流石に少し考えた後ヤドヴィガと視線をキッチリ合わせてから


「殿下が仮に目を覚されなくなってしまっても私が必ず助けます。例え私が貴女様にとっての王子様で無くとも私が迎えにあがりますから殿下は何も気にせず玉座でふんぞり返って待っていてください。私は今、貴女様の為に働いているのですから殿下の為に私はその悪夢に魘されていても戦い続けましょう」

と答えた。

嘘は言っていない、君塚は今ヤドヴィガの臣下として実直に言葉を選んだ。


「…ふふ、わかりました君塚様。貴方は本当に変な人ですね、私から王位を簒奪されるのに私がおばあちゃんに成ったとしてもそれでもその言葉を実行しそうな貴方様であるからこそ信じましょう。だから…私も貴方が長い眠りについても私が今度はお助けしますから必ず夢の中で貴方の主を待っていてくださいね?」


「殿下はそんなに待たなくても」「君塚様こそ私なんてほっといて何処かへ行くくせに私の側にずっと居るなんて仰るのですから」「殿下こそ私を忘れて自由に王国を支配するか何処かへ旅立たれる事も可能なのに」「そんな事はしませんよ、私にも責任はございますから」「む…」「むー…」


そんな会話をして少しした後ふふふ、はははと2人は互いに笑い合い暫く全てを忘れるように時間を過ごした。


「……まぁ、私が主役の童話の王子様気取りの貴方にはお似合いの手段ですこと。ですが、もし私が呪われて眠りについた時は……キスなどという生ぬるい真似で私を起こそうなどと考えないでくださいね。その時は、私のために世界を火の海にしてでも呪いを解いてみせなさい」

「はい、殿下。もし殿下を呪った者が居たならこの命に変えてでも必ずや討ち取り呪いを解いてみせましょう」


だが今回はそれだけで終わることは無かった。

次にとある議題について確認と対処であった。


「君塚様。では龍の国の話題は終わった事にしますが別の件で一つ喫緊の課題が出て参りました、その件に関してもこの場にてご判断頂きたいのです」

「喫緊の課題…まさか神堂関連でしょうか?」

「いえ、今回の件は君塚様に関する事で御座います。もっと具体的に申し上げれば君塚様の私兵、摂政軍と呼ばれる事も有る部隊についてでございまして」

「わ、私の部隊が目を離した時に略奪でも働いたとか─」

つい君塚は慌てるがヤドヴィガはすぐに首を横に振る。


「そのような事ではなく、君塚様の私兵を法的に今後どのような枠組みとか後は名称であるとかそういう事を決めていただきたいのです。もう貴方の軍隊の兵隊の数は100万を超えているのですよ、その軍隊が正規軍ではなく国家に籍を置かぬ一人の人間の私兵の集まりであると言うのは国家運営上あまり外聞に悪いかと…」


君塚の私兵─ギフトで創造した軍隊は100万を優に超えていて、まだ拡大傾向に有ることから流石に野放しにしていることへ危惧する声もヤドヴィガに届いていた。


今まではまだ数が精々数個師団程度で有ったからある程度は許容されてはいたものの、今となっては君塚の軍隊だけで大陸における超大国と化してしまった公的な立場が彼らには必要である。


すなわち正規軍化を経る必要が生じていた。


「…さようでございますか殿下。成る程、確かに私の私兵達はそれこそこの平原の国以外にも何もかも轢き潰せる大兵力を有してしまいましたから正規軍化する必要は有るかと」

君塚はこの件に関して納得して、そして彼の失敗を今理解した。

法律には確かに君塚の私兵について何も記載が無かった事を思い出して頭を抱え始めていた。

確かにこの件については間違いなく君塚の落ち度であり摂政としてもう少しキチンとしていればこの問題は回避出来ていた筈であった。


「確かに私の私兵達はあんなにも巨大化した以上政府の枠組み内部に早く組み込んでおくべきでした。これに関しては私の責任かつ失敗です」

「ええ、ですのでこれに関して何か考えはございますか?」

「一つ案が御座います。我々の軍に対して内務省と言う省を建てて麾下の国内軍と言う存在に定義して王国軍と同等の正規軍として扱うと言うものです。こうすれば恐らく私兵ではなく正規軍として見なすことは可能に成るかと思います」


すぐに一つ現実的な提案をした。

ロシア連邦を中心に旧ソ連系の国々で見かけられる内務省の下に存在する準軍事的組織であり、国境警備や麻薬の捜査等を行うのだが今回は国内での君塚の私兵についての早急に行われる処置であるが故この場合は国内のもう一つの正規軍と言う意味の国内軍創設であった。


「軍部への過度な権力集中を避けるためにも私の直属部隊は『内務省・国内軍』として独立させ、治安維持と対テロ部隊(転生者対策)を名目に再編します」

「わかりました君塚様、では貴方様に案が有るならそれを進めてくださいませ。では本日の話は以上でよろしいかと思います」


失礼致しました、と君塚は退室してから龍の国解放戦争に関する書類を纏めて侵攻計画書の保管庫を確認した。


シグルーン派と共に各地に点在している軍閥達を陸空から同時に叩きながら神堂の居るリンドルムを目指して進撃する至って単純な作戦であり敵勢力を掃討するのはそう時間は掛からないと想定されているが君塚はソコロワ中尉を呼んだ。


「どうかされましたでしょうか同志摂政殿」

「うちの将校連中は第二次世界大戦や冷戦期のように平原での大軍同士の激突しか考えていない。だが、龍の国の王都(リンドルム)は完全にスラム化している。第一次チェチェン紛争のグロズヌイ侵攻で歩兵を付けず戦車だけを不用意に市街地に突っ込ませてRPGの雨に焼かれたロシア軍の無様を俺は繰り返すつもりはない。市街戦にはBMPTターミネーターが必要だ、戦闘に使える下級妃達はまだ居るからな」

「了解しました、ではそのように伝えて参ります」


ソコロワ中尉は指示された様にメモと訂正要望の書類を持って退室した。

君塚は彼女が退室した事を確認した後窓の外を見ながら呟いた。


「神堂討伐は最早簡単な話だがしかし今の平原の国の国内軍は少し気が緩んでいる気がしてきた。チェチェン紛争でロシア連邦軍がどのような無様を晒したか…確かに彼らは知らないとは思うがな」


その後夕方に成り会食や会議の予定が無いので帰宅することにした君塚はふと執務室に差し込んでいた夕陽を眺めた。

ズラトポルは今や再開発で見違えるように近代化されていて以前の中世ヨーロッパな街並みは消え去り遠くの公社工場の排気ガスが黒くたなびいている姿が見える。


他の国も平原の国に影響されたのか驚異的な速度で近代化が進んでおり鉄道が各地に敷かれ船は帆船ではなくなり、そして電線が張られるように成って様々な事に用いられて工場や電話回線が繋がるように成った。


その結果異世界に放り込まれてからしばらくして文明人であった事を捨て去り無法者である転生者達は文明化された社会には適合出来ず追い払われ、ギフトで暴れれば警官隊に包囲され射殺される、まるでアメリカ開拓時代の終焉頃に居たであろう荒野のギャング達と同じ様な末路を辿っている。


「まぁこんな事なら確かにエリスからしたらつまらない事をしやがってとか思うんだろうな」


そう思い邸宅へ帰る支度を整えるとナディアを伴い帰宅した。

つむぎの糸で邸宅の門が開くと2人のメイドは既に君塚の帰宅を待っていた。


「おかえりなさいませ、ご主人様。夕飯の支度は済ませております」

「おかえりなさいませぇ~ご主人様、今丁度お風呂の準備も完了致しましたぁ」


メイドの桂木つむぎと雨宮美羽が既に帰宅後の支度を終えていて何時でも風呂や夕飯を済ませられる状況であった。


「ああ、ただいま二人とも。いつも家を空けててすまないな」

「いえ、ご主人様はご多忙ですからやむを得ない事かと。それより…」

つむぎはそっと美羽の方を見て美羽は縦に頷いた。

「ご主人様ぁ…その、私達も頑張っておりますのでご褒美みたいなのが欲しいなって」

「うん、まぁ休暇とかボーナスとかは出す予定だけどどうかしたか」


「いえ、私達が欲しいのはその…」

「美羽の代わりにお伝えします。ご主人様にキスをしていただきたいのです」

「つむぎちゃん!?」


つむぎがあんまりにもストレートな物言いをするので美羽が驚いたがつむぎはそのまま続ける。


「私どももご主人様をお慕い申し上げています。ですので、その…無理にとは言いませんが…」

「ご主人様…」


そしてつむぎは身体を密着させて

「……外では恐ろしい兵器を操る摂政でも、このお屋敷の中では私達がご主人様を『支配』して差し上げますから」

と耳許で甘く脳を震わせるように囁かれた。



二人に押されて理性が揺らぎかけていたが君塚はほんの少しだけ悪魔に負けてしまった。

「…分かった。少しだけならキスはするがそれ以上はしないからな」

「ありがとうございますご主人様!」

「ありがとうございますご主人様!!」

つむぎは普段の冷静そうな彼女から想像出来ない天真爛漫な笑顔を見せ

「んむ、あむ、んっむ」

「はむ、んっ、むっ」

と左右から同時に首筋からゆっくりと登っていき最後は

「んっ」

「むっ」

と二人に唇を重ねるだけのキスをした。


「閣下…その…」

「ナディア…お前もか」

「はい閣下、ご迷惑でしょうか?」

「いや別に…」


そしてナディアもまた同じ様に首から唇をかけてキスをして四人は仲良く邸宅内に入っていった。

そして平原の国は戦乱と平和の間にて存在するのである。

平和な原っぱである

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ