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何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第四章

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臥龍、まどろみの中に佇む

虜囚に成るのは

エリカからの贈り物として贈られた3人の捕虜を前に君塚は憮然としていた。

A400から降ろされた女性たちは高地の国の兵士達から平原の国の兵士に引き渡され、全員身嗜みは乱れているどころか衣服が穴だらけであり様々な汚れでぐちゃぐちゃでドロドロで不潔そのものである。肌は潤いを無くしてカサカサになり爪もかろうじて手入れされている。

そして腹部は妊婦のように膨れ上がっていた。


「…ようこそ我が国へ、ここは龍の国よりも豊かで自由な国だ。どうか気兼ねなく虜囚生活をお楽しみください」


自身で書いた棒読みの台本を読み上げた君塚は隣に居る綾錦の複雑そうな顔を見て心配そうに見つめた。

3人は君塚と綾錦を非難がましく睨みつけるように見ており針のむしろとはこういう事かと思いながら彼女達の護送車に乗せていった。

引き渡しの際に彼女達のカルテをそのまま見せられてもさっぱりわからなかったので部下の医官に渡して彼女達を病院へ移送する事にした。


「綾錦」

「繭ですよ、悠里さん」

「繭…正直嫌かもしれんがアイツらは()()上級妃らしいから俺が…その、なんだ何とか上手いこと」

「悠里さん、無理はしなくても良いのですよ。私ももう無理は決して致しませんから」


最近は繭はいつぞやのポヤポヤしてる雰囲気はすっかり鳴りを潜めむしろ大和撫子然としている雰囲気を漂わせている。

少なくとも今も尚3歩後ろを歩くようにしており、彼女は自身が仕立てた緩めの服を着用し彼女へ憐れみと同情の視線を向けていた。


「私には上級妃の頃なんて悪夢でしか有りません。…あんなおぞましくて爛れた日常なんて恥でしかありませんから」

「繭…あの国では何が起きているんだ?転生者は妊娠しない筈だろ、何故あんなにお腹が膨れているんだ?」

「…夢を見せて騙すのにも限界が有りました。だから神堂は少しだけ夢の一部を現実に持ち込む事にしたんです」


綾錦は口を一文字に締めた後重い口を開いた。


「肉人形…私達は彼の子どもを産む幻覚を見せりていましたが、彼はやはり幻覚だけでは私達を完全に従わせる事に限界を感じていたんです。だから…」

「昔の事はもう良い、お前は今なんだ?」


君塚は今の現実に引き戻す為今の綾錦繭に対して話しかけていた。


「私は…そうでしたね平原の国の、悠里さんのお嫁さんに成る予定のまだまだ花嫁修業してる女子高生でした!」

「違うと思います」

君塚は即座に訂正を要求する。


「がーん!そんな、私悠里さんに責任取ってもらうって聞いてたのにー!!何か良い感じの家庭持って良い感じに暮らしたかったのにー!!!」

「い、いや違うそれは君の願いを代わりに叶えるという話で有ってだね!それはそれで!これはこれだ!!」

「それもこれでこれもそれですよ悠里さん!」


イチャイチャしている2人はきっとそれは年の差カップルのように見えていた事であろう。


「で、繭。あいつらのギフトは俺の役に立つとエリカが言っていたが本当に役に立つようなギフトが来たのか?」


綾錦は少なくとも君塚よりも上級妃について詳しいだろう綾錦に彼女達のギフトについて尋ねた。


「はい。本来であれば悠里さんの為に間違いなく役には立つ…筈なのですが…。神堂龍牙(ギフト劣化の達人)の影響で今の彼女達はあまり頼りにならないかと」

「そっかぁ、まぁそんな気はしていたけど。でも上級妃辞めてもらって大会からも辞退してもらった上で処遇は決めるとしよう」

「私もそれで良いかと思います。ですがあの子たちの説得は少し骨が折れるかと思いますが大丈夫でしょうか?」

「問題無い。最悪始末するさ、俺にとって役に立つギフトを持っていても反抗的なら使いにくいし信用出来る身内でさえないんだから」


冷たい判断ではあるが例え有用なギフト持ちでも容赦なく切り捨てる事は君塚にとって息をするような簡単さではあった。


そんな事を言い放った君塚の顔を覗き込むように見て

「でも悠里さんは私を側において頼ってくれますよね?だから私も悠里さんを支えたいんですよ」

と言い

「…そうか」

と君塚は言葉を返した。



「繭みたいに更正…と言うのが正しいのかな?してくれて立ち直ってくれたら儲けものと言うか、こっちの仲間に成ってくれさえしたら助かるとは思う」

「そうですね、私もあの子達が味方に成ってくれたら悠里さんはここから先の戦いにおいてだいぶ楽には成ると思います」

「だろうな」


そして2人は暫く話をした後に別れて綾錦は自宅へ、君塚は庁舎に赴き今後の対応について確認する事にした。



(真の王か…恐らくシグルーン姫とは思われるが当人は何処に居るか不明だし何より龍の国内部に拠点が無いのが弱い所だ)


真の王派は平原の国内の難民キャンプが拠点であり龍の国内部に拠点をまだ構えていなかった。

そもそも、以前の体制なら侵攻しても龍の国の下級妃達により撃破され追い返されるのが普通であり龍の国国内への伸張が出来なかった。

それ故真の王派は龍の国内の影響力が小さかった。

だが今となっては話は変わって龍の国の政府は弱体化され、龍の国国内へ何ヶ所か拠点を築く事に成功していた。

彼らは再び解放する為軍事訓練も終えて摂政軍から武装されたテクニカルトラックを提供されている為装備も充実し、遅くても年内には侵攻が可能になる見込みである。


問題はその真の王の所在であり、諜報部が血眼に成って探しても見つからずやむなくスペツナズ部隊の龍の国国内への派遣を行ってでも探していたが今のところ有力な手掛かりを得られなかった。

余程隠匿が上手いのかそれとも何か見落としているのかわからなかった君塚はとある秘策を思い付いた。

そして陛下に対して真の王派への内密な調査を行う事を手紙を出してから綾錦に少しだけ相談する事にした。



国境付近に『人道的支援物資』を受け渡す為にKamazタイフーンの車列がやって来た。


「遅かったじゃないか摂政軍、道中で襲われていたのかと思ったよ」

「同志、奴らにもうそんな戦力は存在しない事はそちらもよくご存じだろ?我々の心配よりも自分達の祖国奪還を気にかけて欲しいね」

「さて…では今回の荷物を確認しようか」

「どうぞ、お好きに」


荷物の中身は難民達の食糧や衣類等の為の支援物資も入っているが真の王派の民兵はそれらを退かして大切な荷物を確認していた。

AK-74小銃、PKM軽機関銃、Dshk重機関銃、そしてハインド用のロケット懸架装置や様々な無反動砲にZSU-23連装銃架、更には彼らの為の軍服一式。

これらのような兵器を難民達の支援物資に紛れ込ませて支給していた。


龍の国の兵士達は後装式ライフルを装備していた部隊が多数存在していた為平原の国の王国軍兵士達よりナガン小銃の訓練についてはそこまで苦労する事はなく、そしてマドセン軽機関銃等の兵器についても飲み込むまでが早く龍の国の民兵達は祖国奪還の為に訓練されていた。


「さて、摂政軍からの荷物について確認した。間違い無い、リスト通りに納めてくれている。我々への支援感謝する」

「当たり前だ。貴様らを支援しているのに何で横流しするような愚行をすると?」

「疑っている訳ではない、失礼した」


そして二人のやりとりが終わると真の王派民兵達は馬車やトラックに乗せた荷物を一路自分達の拠点に運び込む事にした。


「しかしハスティング大佐、彼らは変わらず我らに支援をしてくれているとはいえ殿下の秘密について調べようとしています。もし殿下の居場所がバレたら…」

「ああ、わかっているともアンデルセン大尉。だが奴らは殿下の許には辿り着けんさ。奴らから隠すことは至難の業だが現にこうやって隠し通せているならそれを続けるしかない」


真の王派の主力部隊は元々職業軍人であった者たちで構成されていてその為ノウハウ等が継承されていて部隊の統率力は高めであるが龍の国国内には中々潜入出来ずに居た。


「殿下はまだ目を覚されておらん。あのような惨劇を目の当たりにされてしまったが故ではあるが、他の妹君達も自分勝手で愚かな将軍達に勝手に擁立された後神堂の手にかかり軒並み殺害されてしまったのではな…無理もあるまい」

「ですが平原の国からの疑念を晴らす為には殿下の無事を示す必要があるかもしれぬと…!くそっ!我らにもっと力さえ有れば!!」

「今はあのインチキな聖剣が無いだけでマシだ大尉。今は昔より遥かにマシなのだ」


悔しがる兵士達と荷物を乗せた荷馬車とトラックの車列は龍の国内部の要塞へ辿り着くとそれぞれ物資を保管先ごとに分けていた。


そして一際綺羅びやかな意匠の箱は彼らが大切にしているものを保管している部屋に運び込んだ。

これはシグルーン殿下の為の衣服を要請していた物であり、目が覚めぬ主と言えど臣下達は彼女の為に服を設えていたのだ。

そして目覚めた時のために用意したドレスも多数有り今は眠る姫君の目覚めを待ちわびている。


「…殿下、失礼致します」

そう入室した侍女は服を着替えさせてシグルーンの衣を清潔な物に取り替えた。シグルーンにきつくないように緩めの服装へと交換した後そっと立ち去った。



(何とか潜入出来たがまさかこのような事態が起きていたのか…)

ぬるりと綾錦が設えたシグルーン用の服の中から出てきた君塚はそっと端末を起動して彼女の姿を撮影し始めた。


「ふむ、この様子では確かに長い事目が覚めていないと言うのは本当なのだろう」


長い間切られずそのまま伸び切った赤い髪の毛、まぶたもよく洗われているのだろうが目やにがまだ付いていた。

そして近くの靴は全く靴底もすり減っておらずまるで新品のようである。


ふとたわけた事を考えた。

(そう言えば眠れる森の美女という童話が有ったが、まさかそんな非科学的な…)

【良いんじゃなーい?君塚っち〜、ちょっと位キスしてもさぁ】


ふと担当官のニケが出てきたが追い払おうと君塚は頑張っていた。


(頼むから今だけはどっか行けよニケ!今バレたら俺は不審者として八つ裂きにされてもおかしくねぇんだよ!!)

【えー?でもまぁさっきのオジサマ達の場面覗いてたけどぉ、ずっと寝たきりなんでしょその娘】


空気を読まないニケへ久々に苛立ちを覚えどうしたら良いか悩んでいると

「殿下の部屋に運び込まれた箱が多かった?」

「はい。本日は一箱の予定でしたが2つ専用の箱が有りましたのでやむなく運び入れましたが…」

「成る程…なら少し確認する。一緒に来い」


(し、しまった!このままじゃ戻っても怪しまれて服ごと燃やされる可能性が出てきた!!)

【それじゃお姫様のお目覚めに全てを賭けて一か八かのちゅー!ちゅー!!】


倫理的に問題の有りそうな、しかも非科学的な根拠でキスを推すニケ。

荷物の確認の為に部屋へと入ろうとする巡回兵。

そして眠れる要塞の姫。


君塚はどうせ助からないならと─


「ええいままよ!!」


シグルーン殿下の唇に口づけをした。


シグルーンは長い悪夢から覚め、そして再び眼が世界を映し始めていく。

もしかしたら

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