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何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第四章

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門は直される

破られし門は今戻る

平原の国では神聖皇務庁による君塚悠里とヤドヴィガ殿下に対する報復措置としての平原の国の破門によって引き起こされた宗教問題がまだ継続されていた。

聖女教とはこちらの世界におけるキリスト教的な立場を有する宗教であり、まさしく人々に善と悪を定義付けする為の宗教である。


そんな宗教から国家を見捨てられ、今は収まってはいるがもし再度侵略戦争をされても仕方の無い世界中に開戦事由をばらまいてしまった全方位敵対者もしくは敵対者に成りかねない隣人達しか居ない国家ではあった。


だが外交よりも内政について影響は深く、影を大きく落としていた。

司教達が去り、聖堂や一部の教会は焼き払われて霊園の門は固く閉ざされてしまい葬儀は簡易的なものしか実施出来ていなかった。

そして何より問題に成るのはこの世界では即位式に際して必ず司教か枢機卿により祝福された上で戴冠すると言う儀式が必要だが破門されたのはヤドヴィガ当人である事がネックであり即位式が行えない為16歳までに即位式を執り行うべきであったのにその目処が立つどころか遠くなっていった。


郷土愛の有る残った一部の司祭達は何とか立て直そうとするがやはり彼らには冠婚葬祭に関して権限が存在せず、更に神聖皇務庁からの圧力で異端認定されるリスクに晒されて満足な宗教活動が出来ずにいる。


君塚はこのような惨状に一度官僚達に平原の国国王に任命権の存在する正教会構想を提案するも候補者が尽く信用ならぬ者たち─つまり神聖皇務庁とパイプが存在していて王国政府にとってあまり従順ではない不都合な人物である可能性が高かった。


「…はぁ、なぁ、同志諸君。いやまあ確かにそれはそうだが…ただ王国の王室自体廃したら多分俺死ぬ未来しか見えんぞ。確かに社会主義に染め上げるとは…最後の最後の手段でしかないぞ」

「しかし同志彼らは今思想を失い何を基準に生きていけば良いか分からなくなったのです、これでは王国軍への軍事支援もままなりません。私の率いるスペツナズ達もやはり訓練を施そうとしてもその愚痴がいつも聞かされると」


チュイコフ元帥は麾下のスペツナズ隊員達による王国軍並びに龍の国真の王派軍事教練中の問題に対して報告をしていた。

だがかといって政治的に解決困難な話しではあったから君塚へ対応を迫っても仕方なかった。


「そうだな、同志チュイコフ…分かったよ。心の内に留めておきたかった内容だが司令官たる諸君に伝える。近い内に対応するさ、それも今回の件に完全に終止符を打つための秘策が有るんだ」


君塚は参謀本部に久しぶりに集まった将校たちが直談判してきていたが全員様々な表情ではあるものの戦略についての話を始めた。


「ではまず対龍の国ですが、攻勢を受けた場合及び攻勢を受けた場合の正面は戦線は大体800m程度の幅になるかと思われます」

「そして奴らから攻勢をかけることはまずないと思われますのでこちらからの攻勢前提で進めますと諜報活動により既にポーション倉庫等の高価値目標の位置も判明しており、龍の国の戦線には親衛戦車師団2個と自動車化狙撃兵師団は3個程度と2個砲兵旅団、空挺軍は1個師団有れば地上は制圧可能かと思われます」


ヴァシレフスキー元帥が簡単に立案された攻勢計画について説明した。


「またあのワイバーンどもについては飛び立つ前に潰す必要が有りますが戦略偵察により既に巣は判明しております。こちらは空爆により敵が飛び立つ前に潰す事は可能であると判断致しました」

「敵の下級妃達は以前よりも脅威度は低いとはいえまだ人員は居るらしいがそれについては?」


ロコソフスキー元帥が戦闘要員であろう戦闘部門下級妃達の脅威について尋ねる。


「そうだとも、私の部下の空挺軍は奴らと実際に戦っていたがやはり強い者は強かったし一部は取り逃がしてしまったからな…私達が一番奥深くに突っ込んでいくのだから─」


マルゲロフ将軍は懸念を表していたがそれを遮るように発言する者が居た。


「それについても問題ない、何故なら私の想定では敵の戦線は最初の砲爆撃で崩壊する予定だからだ。それに所詮は中世レベルの、しかも失敗国家相手なら我々の砲兵は最早鶏を捌くのに牛刀を用いるようなものだ」


トゥハチェフスキー元帥は自信に満ちた返答をして周りの諸将は言い返すと面倒と思いやむなく閉口した。


「大体偵察写真を見ろ、あんな王宮とは名ばかりの雑草まみれで壁も朽ちて崩れ落ちているボロボロの納屋はTOS-1の一斉射で壊せるぞ」


彼だけが油断しているよう見えたが、しかし全員様々な程度ではあるものの龍の国の脅威度は非常に低く見積もっている。



会議が終わると君塚は自身の執務室で昨年提出されたナディアの報告書を読み始める。

内容は君塚透の聖女化についてであり彼女は聖女化した事を確認された。

聖女としての能力はさまざまであり


大剣を展開して斬撃を飛ばす

距離無関係での瞬間移動

強力な自己回復、しかもその傷付けた攻撃に対して免疫を作り出し無効化する


既に判明しただけでこれでありもう少し修練すればさらなる成長も見込まれると言う内容である。


(俺よりも優秀な奴だっただけに少し才能の芽が有ればすぐこうなる…俺にも少しくらい分け与えられても良いだろうに。それよりもだ)


相変わらず弟の才覚へ嫉妬する君塚ではあったがしかし彼女が聖女として覚醒したならばある問題が解決する。


それは正教会構想の中心となる人物の選定である。

漸く容姿が整っていて信用に足る人物をトップに据えることが叶い君塚透の正教会総主教任命をヤドヴィガに提出する事にした。


その前に透に対して話をする為に王宮の摂政用執務室まで自室の前で立哨していた警備をしていたソコロワ中尉を迎えに寄越して呼び出すことにした。


「すまないソコロワ中尉、少し頼みが有るんだ」

「はい、どのようなご命令でしょうか同志?」

「簡単だ。今から俺の家に行って透をここに呼んで」

だが

「呼んだかい兄さん?私に何か用かな?」


もう彼女は執務室まで来ていて使いのソコロワ中尉に内容を伝える前に来ていた。


「…手間が省けたな、中尉。持ち場へ戻ってくれ」

「は!」


敬礼した後持ち場へソコロワ中尉は戻っていった。


「取り敢えず立ち話もあれだから座れ。茶を淹れてくるから席を」

「ごめん兄さん、もう淹れちゃった❤」


二人分の紅茶を勝手に淹れてテヘペロとしている目の前の銀髪美女の可愛らしさに一旦惑わされかけたがすぐ気を取り直してしっかりと向き合った。


「で、透よ。まずは本題から話そうか、世間話をすると伝え漏れが起きかねん位面倒な話だからな」

「うん、分かったよ兄さん。それで兄さんは『摂政』としてどんな面倒な話を私に任せてくれるのかな?」


そのアーモンドのような眼には光が更に爛々と宿り顔立ちはまさしく聖女そのもので見ている側の人間を魅了する美貌を愛する兄に対して振りむけていた。


「凄く大変な務めだが、心して聞いてくれ。良いかお前は知らないだろうがこの国は聖女教と呼ばれる宗教から破門されたのだ。まぁ主にこれは十分の一税の廃止や宗教施設への地税の課税だとか断行した俺のせいだが…まぁおかげさまで宗教的な権威は失われてしまった」

「そりゃある程度は知ってるけど、でもそれで何を私に任せたいのかな?…まさか」


ふと透は何をして欲しいか何となく分かったので期待するように聞いてみた。


「そうだ、そのまさかだ。お前を指導者、つまり総司教にした新たな教義の分派を作って殿下の権威を取り戻す!」

「やっぱりかぁ~…でもその話は引き受けるけど私聖女教の教義全くわかんないのはどうするの?」


君塚透はこの世界の人間ではない故聖女教には疎いが悠里は「そこは気にしなくても良い」と言う。


「大丈夫だ透、何も今すぐ成れという話ではない。俺もお前にいきなり宗教家成れって言うほど鬼では無いからな。だが割と時間が無いんでな」


ドサリと綾錦繭がこさえたバッグの中からそのバッグの大きさとは見合わぬ冊数の本が机の上に取り出された。


「こいつらを使って聖女教を勉強して欲しい。期限は1年だ、それまでにこれらの資料を読んで教義や思想を理解しろ。…透、俺は出来の良い弟であるお前を信じているんだ。頼んだぞ」


口角を上げ自分よりも遥かに何もかも出来の良い弟へ試しつつも一度完全に頼ってみることにした。


そして透は満面の笑みを浮かべ

(えっ……それってつまり、私が平原の国で一番偉い聖職者になって、兄さんとヤドヴィガちゃんの結婚式、それどころか私達の結婚式の権限や予算、人選も全部私が握れるってこと……? ふふっ、任せて兄さん♡)

「任せてよ兄さん!!私聖女教の全部を理解するから待っててね!!」

そう言うやいなや「やっと頼ってくれた!!」と喜びながら何処かへと飛び去った透の後ろ姿を眺め


「少し辛い立場に置いてすまないな透…」と大任を押し付けた自分を悔いていた。



「お喜びください、殿下」

「成る程、本日は君塚様は何か吉報をお持ちしたと言う事でしょうか?内容を伺ってもよろしいでしょうか」


ヤドヴィガは玉座の間にて君塚の話を聞いていた。

最近ヤドヴィガは真の王から食糧やら難民キャンプの設営の許可やら色々煩わされていて、しかし真の王本人に中々会えないのでそのふざけた態度に機嫌を悪くしていた。


一応心当たりがある者に探りは入れてはいるものの確たる証拠もなく、ヘルウィヨトゥルの娘達は政変で神堂に対して反旗を翻した事によりほぼ全員死亡しており、唯一長女シグルーンのみ行方不明ではあるが足取りは未だに掴めていない。


「漸く殿下を『陛下』とお呼びすることがかなう事に成りつつ有ります。その為に少し…具体的には1年程度透に総司教としての立ち居振る舞いの研修や新たな宗派の教義について詰めたいのでもうしばらくお待ちいただいてもよろしいでしょうか?」


ヤドヴィガに正式な王位に就かせるための式典の下準備を整えつつ有る事を伝えた上で期間の設定について相談していた。


「成る程…確かに君塚様の弟君の透様なら信用出来る人物ではあるのかも知れません。ですがあの方は失礼ではありますが処女ではございません。そういった方向からの…つまり聖職者の童貞性、もしくは処女性について指摘された場合はいかがされるおつもりで?」


聖職者の童貞性はいつの時代も拘ってしまうものでありそしてスキャンダルの種になる事も多かった。

せっかく司教を長年勤め上げ枢機卿(妻帯が許される階位)が見えてきてもアッサリ失脚する者が後を絶たなかった。


「神聖皇務庁の上層部は尽く非童貞者が多く妻帯しております。なら何故聖職者は職業の階位によって幸福追求権を侵害されねばならないのでしょうか?しかもエリート層はそれでダメージを受けぬというのに」

「ですが今居る助祭達は皆童貞では有ります」

「殿下、民が求めているのは『処女の聖女』ではなく、『奇跡を起こし、我々にパンと平穏をもたらす麗しき聖女』です。透の圧倒的な力と容姿と私の支援、更に私が用意する教義があれば神聖皇務庁の腐敗した教えなど数年で駆逐できます!」


君塚は正教会ではそのような階位による差別を起こさないようにして神聖皇務庁の教えとの差別化を図ったので


「そうでしたわね君塚様…まぁ良いでしょう。なら正教会の案を進めてくださいませ君塚様。それと真の王ですが、あちらは何とか成りそうでしょうか?」

「ええ、真の王派は何とかなる予定でございます。陛下の即位式の頃にはきっと西の空は綺麗な虹が見える。そんな景色に成るでしょう」


二人は龍の国の有る西の空を眺めた。

近々滅ぼす予定である、忌まわしき暗愚なる王が率いる政権を睨むように眺めた。

権威は不死鳥のように蘇る

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