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何故現代兵器をファンタジー世界へ持ち込んではならないのか?  作者: ウォルギリウス
第二章

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助け出される

ヤドヴィガ「やれやれ、君塚様はいつも誰かを助けようと必死になられますからね。正妻としてこういった事は全て許容しないとですね」

きっとまた透は地獄の中で苦しんでいるのであろうと思うと居ても立ってもいられない心境だったが、流石にヘリコプターの中で走っても仕方ないしナディアを囮にして城内に押し入らなくてはならないから寧ろ落ち着きはらわないといけないので必死に自身を落ち着かせる。


「……閣下。もう一度よろしいでしょうか?私が『転生者として神堂龍牙の下級妃を志願する』という設定で潜入するのは分かりますが……」


流石に現実的に作戦内容を考えていたナディアが不安げに尋ねる。


「ああ。安心しろ。あいつらは俺の『ぷりちーゆーりぃ(毛むくじゃらのおやじ)』でも通すガバガバ判定だ。美少女のお前なら顔パスだよ」

「は、はあ……」


君塚は少し嘆いていた。

あんな目が節穴並みに何も考えていない愚者共に通された過去の自分が憎くて仕方なかったが、あれほど無能な警備兵ならこの大所帯でも何とか通ることは出来るだろう。

それに今回の鍵となるであろう秘密兵器も勿論持参している、抜かりはない。


《ランディングゾーンまで1分!!》


総員が装備の点検を開始した。

持っているAK-74を点検してこれから始まる戦闘に備えて準備を整えていた際にナディアは君塚にとあるお願いをした。


「閣下、鼻の下までその目出し帽を脱いでいただけませんでしょうか?」

「ん?ああ、良いけどどうかしたかナディア──んっ!?」


ナディアは君塚にキスをした──それも初々しい付き合いたてのカップルがしてそうな唇が触れ合うだけの可愛らしいキスを。


「……えへへ。そのご不快な思いをされたならその、ええと……ご武運をと思いまして、ふへへ……」

「……??」


今起きたことに全く反応出来ずに混乱している君塚と思いを半分程度果たせたナディアを見て兵士達は君塚にあまり感情は表に出さなかったもののいつか彼が背中から刺されないか心配に成るのであった。


そしてヘリがランディングゾーン、つまり王宮の前に到着したのは午後6時、夕暮れ時であった為龍の国の警備下級妃達は何か来たかも知れないが下級妃志望なら全て通すように厳命されていたので誰も何も指摘できなかった。


門衛の下級妃にナディアは話しかけた。


「すいません、私神堂龍牙様の寵愛を賜りに来た者でございます。神堂龍牙様はどちらにいらっしゃるのでしょうか?」


下級妃はこの様な完全武装した一団を見ても態度を変えず、うんざりした様子で言い放った。


「この門を通って中に入ったら他の下級妃が居るからそいつらに聞いて、多分どうせ最上級妃様の所だろうけどさ」

「わざわざご親切に、ありがとうございます。では後ろの供回りと共に入らせていただきます。」

「そうか、さっさと通りな」


ソコロワ中尉は(……本当に通ってしまった)と不思議そうに門番を見つめていた。


そして君塚達は全員誰一人怪しまれることなく無事王宮内に侵入出来た。


「閣下……やはり本当なのですね。下級妃志望なら誰でも何でも通すと言うのは。」

「あぁ、だって俺もこうやって入ったんだからな。ぷりちーゆーりぃにゃんとして毛むくじゃらなおっさんでも通すガバガバぶりだ。遅かれ早かれ俺以外の転生者に討ち取られても仕方ないかもな?」


そして恐らく美しかったが……今は下級妃の不慣れな手入れにより荒れ果て雑草と倒木により崩壊していた庭園を警戒しながら抜けて、そしてナディアにもマカロフPMを渡し突入時に最低限の威圧を行う道具を装備させた。


下級妃達は栄養不足と神堂の幻覚に対する中毒もしくは離脱症状、或いは激しい彼の『遊戯』で心身に多大なるダメージを負い全員思考能力が低下していて、とても警備は緩く誰でも侵入可能な状態であった。


そんな状態であるが故に透から貰った地図を頼りにアッサリと彼女と神堂の夜を共にしているだろう寝室へと辿り着いた君塚は兵を配置して突入の準備を行なっていた。


中では争う男女の声が聞こえて来て君塚は速やかに突入する事を決断し、ソコロワ中尉はやる気に満ちていたのかドアノッカーを装備して万歳(ウラー)と叫びながらドアを破った。



少し部隊の突入から時は遡り、透は神堂に組み伏せられながらも過去の自分を思い返していた。


透は3人兄妹の次男として生まれ妹と兄がいた真ん中の子供である。


君塚家は比較的裕福ではあったが、両親が不在である事が多く父は海外に単身出張する事が多く母も看護師であったが故夜勤で家に不在である事が多かった。それ故に彼は事あるごとに兄である悠里に甘えることが多かった。


透が夜悪夢を見たら兄が自分の布団の中で寝かせて寝られるまで側にいたり、或いは夜トイレに行く際に付き添ってくれたりして兄にしっかりと依存するように甘えきっていた。幼い頃から兄を恐らくだが、愛していたのかもしれないと透は思っていた。


それに兄が小学校の時から朝から食事を作り美味しい食事を提供してくれていた記憶は透が忘れられない記憶として鮮明に覚えていた。

しかし、兄弟は成長すると兄はいつも愚弄され透は持て囃されるようになりいつしか二人の間に亀裂が走り、会社では事業の運営保全部門に回された兄とは対象的に透は営業のエースとなった。兄を愚弄する輪の中に入った事を透は終生後悔してしまうのだが、当時はそれ以外の選択肢など存在しなかった。劣っている社員はゴミで早く辞めさせるように追い込む様イジメを推奨するような社風の企業で労働基準監督署なんて政治家から圧力をかけさせて動けない様にした暗黒企業だったのだ。


そんな中兄が不運にも事故死し、そして兄の恋人エリカも後を追って自殺した事や兄の分も頑張らないといけない様になり透はその負担や重圧に耐えられず若くして過労死してしまった。


透はその後、この大会とは別の転生者大会に参加して強力な聖剣を引き当てて大会を見事優勝したものの彼の剣技を惜しんだ担当官は彼をその聖剣のアシストシステムとして押し込み肉体も魅了的な女性の肉体にされた上でギフトにされたのである。


そんな中神堂は幸運にも女性支配、竜族支配と並んでこの聖剣を引き当てて今大会の一番人気に成り上がれた。

神堂は初日から下僕として透を扱い彼女を尊厳を打ち砕くよう好きなように扱った。

彼は透に母親として普段は振る舞わせて夜は女性(都合の良いおもちゃ)として扱って彼女は心を折られかけていた。


途中女性支配に屈しかけた事も有ったがそれでも耐えられたは、過去の兄との思い出が彼女の心を保たせた唯一のアイデンティティにしてオリジンに成っていたのである。


転機があったのは神堂がふと平原の国に関心を抱き視察に出た際に兄の大会参加を確認して兄に助けを求めていたが兄はそれに応えてわざわざ危険を冒して単身ぷりちーゆーりぃ(恥を晒してでも)助けると約束した兄に昔の兄と重ねて今彼女は兄との思い出や約束を束ねて、契約で縛り付けようとしてくる獣の暴君と一人の『恋する乙女』として透は対峙していた。


「もうやめろ神堂。私はもう貴方のママでも、妻でも都合の良い女でもないんだ。龍の国の最上級妃ももうこれでおしまい」

「はあ?何寝ぼけた事を言ってんだよ聖剣、お前は俺の女で持ち物なんだよ。てめぇ何生意気な事抜かしてんだ、あぁ?」


神堂は当然ながら激怒していた。

突然いつも好きなだけ蹂躙していたお気に入りの女に反旗を翻されてしまったので心底その今まで見せなかった程の反抗的な態度に驚いていたのだ。

確かに生意気な面が有るとは思っていたが彼女のそういった所も魅力と思い今まで接してきたが今日はいつもとは違う雰囲気であり目つきも激しく睨見つけてきていた。


「どうやらお前の存在が誰のものか1回教えねぇといけねぇみてぇだな、聖剣!!」


「私の人生は、私はあなたのものじゃない!私の物よ!!私は兄さんが好きだ、だから兄さんの為だけに私は生きる!!」


「万歳!(ウラァ)」


そして以前の雪辱を果たせると思っているハイテンションなソコロワ中尉の勝ち鬨の声と共に兵士達がなだれ込んできた。


ソコロワ中尉は咄嗟にAK-74に持ち替えて神堂の足を撃ち抜き立てなくさせた後SVDで腹部も撃ってその場から動けなくさせた。


悠里は直ぐ様バラクラバを脱ぎ捨てて透に叫んだ。


「待たせたな、早くこっちに来い!透!!」

「兄さん!待ってたよ!!」


透は兄の許へ駆け出して行ったが鎖がジャラジャラと透の首に繋がれていった。

その鎖は神堂の右手に握られていた、そして神堂は勝ち誇るように宣言した。


「わりぃなおっさん、そいつは俺のもんだわ。こうやって鎖が有るからどう足掻いても──」

「それが狙いだったんだよ、アホが」


君塚はその鎖に目掛けて秘密兵器の能力解除の鞭を振るい見事に命中させた。


空間全体に軋んで亀裂が走り、ガラスの割れるような音と共に砕かれた鎖は散らばり『聖剣』は『君塚透』として解放された。


「兄さん……!兄さん……!!ありがとう、本当にありがとう!!」

「当たり前だろ?気にするなよ透、家族は助け合う為にこそ存在しているんだからな」

「でも兄さん……!本当に来てくれるなんて……!!私、私は嬉しい……!!」


恐怖と屈辱から解放されても尚恐怖と屈辱、そして死と苦痛の記憶に震える透は悠里に抱きしめられていた。

これからまた家族の時間を過ごす為に透はもう二度と悠里から離れないように必死に泣きじゃくっている顔を見せないように悠里の服にしがみついていた。涙が己の服に染み込むが悠里は彼女の為なら喜んで己の服が汚れる事さえも厭わない様に考えていた。

自分の苦しみに比べたら彼女は耐え難いそれを過ごして来たのだからこの程度なんてことは無い。


突然ソコロワ中尉がSVDを再び発砲した。

狙いの先には神堂が居て、ポーション薬を飲んで回復していたようであり再度今度は股間を撃ち抜いていた。悶絶してのたうち回るが更に何回も撃ち込み続けてマガジンを交換して再び撃とうとしたので手で射撃中止のジェスチャーを君塚から出された。


「急ぎましょう閣下、恐らく奴は他にも複数何らかの治療手段を持っている可能性が御座います」

「そうだなソコロワ中尉、助かった。礼を言う」


薄着だった透に軍服のシャツを被せて部屋から脱出するとふらふらと白無垢のような服を着て近寄って来ていた少女が居た。

少女──上級妃、綾錦 繭は神堂にこっそり寵愛を貰おうと神堂の閨に赴いていたが、騒がし過ぎる騒音がしたので様子を伺っていたのだ。


その白無垢の上からもわかる程に成長している、年齢に見合わないバストサイズは神堂に寵愛を注いでもらうのにぴったりであり、彼女のギフト『被服生成』は幾らでもどの様な服でも作成可能な万能ギフトである。

それ故に上級妃に任命され毎日夫として見立てている神堂から『多産で次々子どもを産み神堂や子供たちの服を仕立てる自分』の幻覚を見せてもらっていた。


「あの、何かお祭りでもなされているのですか?主人の部屋で物音がしましたが……」

(しまった、こんな所で上級妃かもしれない奴に出くわすなんて……しかもアホそうだし)


彼女は優しげな顔立ちで年齢に見合わない豊かな山脈を柔らかく揺らしながらきょとんとした顔で立っていた。

仕方ないのでチラリと透を見てコイツは連れて行くべきか始末するべきかどうか確認していた。


透は一瞬だけ考え、コクリと縦に頷いた。


彼女の『被服生成』は有用だという判断かあるいは単に殺すには惜しいと思ったのか。少なくとも自分よりも賢い透の判断を尊重して彼女にも愉快なフライトにご同行願う事にした。


そしてヘリコプターに全員乗り離陸すると下級妃達はようやく異変に気付きヘリに攻撃を仕掛けようとしたものの爆装したMiG-29Sが次々と爆弾を投下して混乱を招かせてヘリコプターから注意を逸らして無事龍の国王都から脱出した。


透はそっと悠里の隣に座ってもたれ掛かり安心したのか気絶したように眠っていた。

その寝顔は君塚透の面影さえ無くただの女の子にしか見えなかったので悠里は彼女に対して放置していた事への申し訳無さと深い悔恨に包まれた。


(……すまなかった透。もっと早く見つけてやれれば)


君塚はそっと彼女の長い髪を撫でて必ず二度と家族として彼女を泣かせない事を誓った。


一方、綾錦繭は隅っこで体育座りをさせられていた。


「あの〜、まだ着かないんですか〜?主人のご飯作らないといけないんですけど〜」


兵士たちは無視を決め込んだ。

彼女もまたズラトポルへの「ご同行」が決定した。

──ヤドヴィガ殿下はキレた

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