中度鬱沼の淵に立つ③
##とのやり取りはもう止めたいなぁ……正直、そんな気持ちでいっぱいでした。
ですがC氏は「この作品」と、ある一本のログラインを指しました。
「設定が面白いので、これをもう少し詰めていきましょうか」
こう言われて断れるほど、私の心臓は強くなくて(普段はつよつよメンタルのイケイケGoGoタイプだけれど、変なところで意外にチキンなんですよ、私)。
そうしてC氏の要望を取り入れつつ、私のカラーもふんだんに入れたプロットを制作し、提出したのでした。
が。
「シー○アの作品と全然違いますよね」
またもや言われてしまいました。
そりゃあ違いますよ。パクりなんか書けるわけないじゃないですか。
そこからはもう、パクりを書かせたいC氏と、自分カラーを出していきたい私の攻防戦です。
私だって、商業作家としてのプライドがありますからね。
他人の色を乗せるより、自分色で染め上げられた作品を綴りたい。
その一心でした。
もちろんC氏からの要望は、できる範囲できちんと取り入れましたよ。クライアントの言葉も取り入れつつってのは、フリーランスとして当然のことですからね。
だけど作家としてどうしても譲れない一線があったのです。
私の場合、それがパクりではなく自分のカラーを前面に出すこと。ただそれだけでした。
こうして何度かやり取りを重ねた結果、C氏から出た言葉は
「今忙しいんで、また手が空いたら連絡します」
ということでした。
要は体のいい断り文句ですよね。
こうして私と##の関係は、プッツリと切れたのです。
最初のやり取りから半年以上が経過していました。
これでよかったんだ……と思う反面、言いようのない虚しさが私の胸に去来しました。
――結局##が欲しかったのは、“私”の作品ではなく『復讐は離婚の後で』の原作者である“すずしろ たえ”というネームバリューだけだったんだな……。
これは、ほかの出版社・制作会社もそうだったのですが、わりと内容なんてどうでもいいふうで、とにかく“すずしろ たえ”という名前を作品に使いたいという気持ちがヒシヒシと伝わってくる企業がわりと多かったのです。
何度も繰り返しますが、『復讐は離婚の後で』は純度百パーセントすずしろ作品ではありません。
つまり多数が求めている『復讐は~』のすずしろ たえは、私であって私でないのです。
――どんなにオファーが来たところで、真に求められているのは私じゃないんだ。
そしてどんなに私らしい作品を出そうが、それらは全て一蹴されてしまっておしまい。
私にはネームバリュー以外の価値はないのか……。
そんな思考が頭の中にジワジワ広がっていきました。
この日から私のメンタルはどん底もどん底、やる気も根気も尽きて抜け殻のように生きていく日々が始まったのです。




