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気づいたら 鬱 ど真ん中にいました  作者: すずしろ たえ


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絶望と衝動

 推し色のチャリを手に入れてからの私は、時間があればあちこち出かけるようになりました。

 以前、夫に折りたたみチャリを借りたときは、こんなことなかったんだけれどね。

 購入したチャリがよほど自分に合っていたのか。はたまた自分のチャリだと思うと気易く乗る気になれたのか。

 その辺りはよくわかりませんが、とにもかくにもチャリを乗り回している間はとても気分がよく、私はますますチャリに熱中しました。


 だけどチャリに乗っているばかりではいられません。

 その頃の私は複数の商業作品の執筆を抱えており、当たり前のように締め切りがあります。締め切り近くになれば、自然と遊び控えをするのは当然の話です。


 しばらくチャリを封印して、PCに張り付く日が続きます。

 が、何故かちっとも文章が書けない。全く書けない。

 むしろチャリを乗り回していたときのほうが、よっぽど書けたほど。


 ――これは後になって判明したことなのですが、このときの私はまだ鬱の思考抑制真っ只中で、そのため文章を書き進めることが困難となっていたのです。

 そんななか出会ったチャリ。

 チャリは鬱の改善に効果的だという研究結果が報告されているらしく、つまり私は自身でも知らない間に鬱改善の行動を起こしていたようなのです。


 ただし、この時点で私はそのことに全く気づいていませんでした。

 だからこそ、チャリを封印して仕事を優先させてしまったのです。


 プロットはある。話の筋も決まっている。

 それなのに、肝心の文章が迷子になってしまっている。


 例えるならば、A→Bに行こうとしているのに何故か迷ったり、Bを飛び越えてCに進もうとしたり、Bに行きかけてAに戻ったり、などなど……。

 ずっとこんな感じで、混乱っぷりが酷すぎて。

 しかも気の利いた言い回しどころか、普通の単語・文章すら全く浮かばなくなる始末。もう最悪です。


 それでもなんとかかんとか最後まで書き上げて、あとは担当さんに提出するだけ。

 でもその前に読み返してみよう。

 そう思って冒頭から目を通してみたのですが。


 ――これ、面白いんか?


 そんなことを、思って、しまいました……。

 作家あるあるでよく聞く「面白いんか?」病(?)。

 どこに出しても恥ずかしくないほどの自作大好きマンだったりする私は、自作に対して一度もそんなふうに思ったことがないんですよね。

 少なくとも自作は私にとって最高に面白い! そう思い続けていたのですが。


 ――いや、これ面白くないだろ……。


 読めば読むほど、絶望的なまでに面白さがわからない。


 ――え、これどうやって直せばいいの? 修正できる? 無理じゃね?


 なんてことを考えながらも、一応なんとか頑張ってみました。悩んで悩んで悩みまくって、だけどどこをどう直したら面白く仕上がるのか。それがちっともわからなくて、同じ箇所を何度も何度も修正する私。

 わからないまま進める作業に何の意味があるのでしょうか。

 ついには修正の手まで止まってしまい、にっちもさっちもいかなくなってしまったのです。

 頭の中にあったのは、絶望の二文字のみ。


 ――あぁ、もう駄目だ……。


 こんな作品、読むに値しない。

 こんな不出来な原稿を読者さんはおろか、担当さんにもお目にかけることはできない。

 私はなんて力のない、最悪な作家なのだろう。


 そう思った瞬間、もう消えてなくなりたい気持ちでいっぱいになりました。


 そして。


 衝動的に、完成原稿を削除しました。バックアップごと、完全削除です。

 削除した瞬間、何故だかホッとした気持ちになったのを覚えています。


 ちなみに消去したのはこれだけじゃなく、計二作品でやってしまいました。

 二度の作品殺しを行ってしまったのです。

 作品を消去したからといって、問題は何一つ解決していないんですけれどね。むしろ最悪な方向に転がっていくばかりなんですけれどね。

 でも不出来な物がこの世から消えた。

 そのことに心の底から安堵する私がいたのでした。

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