5 魔王城はテーマパーク?
世間に知られてはいけない、この世界の、魔王城の真実。
「テーマパーク、ですか?」
プラシアはキョトンとした顔をする。
まさか、そんな訳、みたいな顔をしていた。
「そう、ここはダンジョン型のテーマパーク。実際にキャストして雇っているのは、腕自慢で本物の魔物達。それから元冒険者の人達や、僕達家族も参加しているよ」
ダンジョン型のテーマパーク。それがこの城の意味。
魔王群って言うのも、あくまで盛り上げるためのキャスト。
攻撃的な人達はいるけれど、みんなそれぞれの理由でここに居る。
本物の魔物達や訳合って冒険者を辞めた人達、そんな人達がたくさんだ。
「えっと、動物園や遊園地と同じ理屈ですか?」
「そうそう、理屈は同じ。ここは元々、僕達の義父さんが魔王時代に使っていた居城。それをダンジョンとして改良して、実際にお宝や報酬の入った宝箱を設置することで、自然由来のダンジョンを真似した人工ダンジョンなんだよ」
プラシアの言いたいことは、大体当たっている。
ここは動物園とか遊園地みたいなテーマパークと、やりたいことは一緒。
だけど本物の魔王が澄んでいた魔王城なのは本当。
おまけに金目のものが入った宝箱も、報酬として存在している。それっぽく見せるために、わざわざミミックに頼んで、宝箱を分けて貰ったりもした。
ここまで来ると、自然発生のダンジョンとは全く違う。
所謂、人工的に客寄せ用に作り上げられた、見せかけのダンジョンだった。
「理解してくれた?」
僕はプラシアなら理解できると思った。
だけど腑に落ちないことが幾つもあるみたいで、その口は塞がらない。
「理解はしました。でも分からないことがあります!」
「分からないこと? 一杯あるよね」
分からないことで一杯なのは知ってる。
僕だってよく分かってないから。
きっとシャベル義兄さんも分かってないから。
「どうして、そんな回りくどいことをする必要があるんです? たとえ人工的なダンジョンだとすれば、わざわざそのような面倒なことをしなくても」
「するよ、面倒なこと。だって、完全な安全が確保されている訳じゃないからね」
プラシアの疑問は最もだった。
人工的に整備されたダンジョンは、世界中を探せば幾らでもある。
だけどそのことを伏せるのには、一応経営戦略? 的なものがあるらしい。
「それに、よく分からない方が、冒険者の心をくすぐるでしょ?」
「確かに、冒険者の多くは、“未知”に対して高揚感を得る方が多い印象ですが……あれ?」
冒険者は血の気が多い。
おまけによく分からない物に飛び付く。
まるで虫みたいで、分からないくらいの方が儲けが出る。
「もしかして、それが狙いですか?」
「正解、それが狙いだよ。どんな醜い理由であっても、その方が儲かるからね」
僕は指を使ってお金の形にした。
ニヤニヤ笑みを浮かべると、沢山稼げていることを表現した。
きっと、これだけでプラシアなら気付いてくれる……よね?
「儲かる……ですか」
「そう、儲かるんだよね。じゃないと、こんなバカみたいなことやってないよ」
僕はにこやかな笑みを浮かべた。
するとプラシアは何となく想像したみたい。
「えっと」と一つ間を置くと、無理やり理解しようと頑張ってくれる。
ごめんね、解り難くて。一応機密事項なんだよね、あはは。
「それでは、貴方は本当に私達を殺す気はなかったんですか?」
「だから何度言わせるの? そんなの当り前だよ。どうして殺さないといけないの? 逆に言えば、殺されないといけないなんて、理不尽すぎるでしょ?」
プラシアは今更になって、そんな当たり前なことを僕に訊ねた。
いやいや、普通に本気で殺し合いなんてする訳無いでしょ?
それにテーマパークで殺し合いになる訳? そんなのある訳ないじゃんか。
寧ろ、魔王城がどんな風に世間で噂されているのか、改めて調べないとダメそうだと、僕は再認識する、いいきっかけになった。
「そんな、それじゃああの罠?」
「ああ、罠はこっちの管轄外だよ?」
魔王城の中には大量の仕掛けが設置してある。
その中でも罠はかなり多い。
僕も全部把握している訳じゃなくて、罠が大好きな部隊もあるくらいだ。
危険なものも多くて、僕も毎日ヒヤヒヤしている。
「管轄外?」
「そう、色々仕掛けはあるけど、あくまでも“殺し合い”は仕方がないけど、推奨はしていないってだけかな。最大の死因の、罠とか二次災害的な奴は、魔王城のルールに無いんだよね。だから、原則死ぬとしたら、罠とか二次災害的な奴になるんだけど……でも、一応規約には書いてあるからね!?」
僕は訳わかめな顔をしているプラシアに、何とか取り繕おうと必死で言い訳した。
実際、原則として規約に書いてはいた筈だ。
イレ―ナ義姉さんが作ってくれたんだから間違いはなくて、そもそも規約を読まなかった冒険者が悪い。僕は責任逃れを始めると、プラシアは視線を逸らす。
「規約を読まないのは問題かもしれませんが、流石にそれはやり過ぎですよ」
「ごめん。あー、えっと、それよりさ、立てる?」
僕は手を差し伸べた。
プラシアは瞬きをすると、何を言われているのか分かっていない。
ポカンとしてしまうと、プラシアは挙動不審な態度を取る。
「は、はい。立てますけど?」
「そっか。それじゃあこんな所で話しをするのもなんだから、もっと安全な場所に行こうよ」
僕は仲間に置いて行かれたプラシアを可哀そうだと思った。
だからかな? 僕はプラシアを助けてあげることにした。
どのみち足を捻っちゃっているんだ。まともに魔王城を出るなんて無理。
せめて安全な場所に連れて行ってあげることにした。所謂、親切心? って奴。
「どうしてそこまでしてくれるんですか?」
「あはは、そんなの単純だよ」
「単純?」
如何してそんな単純なことを聞くのかな?
僕はただ単に可哀そうって思っただけ。
後は助けてあげたいって気持ちがあるだけなんだよね。
「うん。放って置けないだけかな? プラシアはこんなに素敵なんだから、ここで終わらせたくないでしょ?」
「!?」
「プラシアなら、本当に進むべき道が見えるでしょ? だからここで終わっちゃダメだよ。さっ、一緒に行こ」
正直、プラシアは凄い。マジで強い。その実力があるなら、ここで終わるなんて無理でしょ?
スッと手を差し出すと、プラシアは顔が真っ赤だ。
えっ、体調悪くしたのかな? 心配になっちゃった。
「あ、あの!」
「なに、プラシア?」
プラシアは僕の手を取ってくれた。
よかった、捻った足は痛むのかもしれないけど、立てるは立てそう。
ホッと一安心した僕だけど、プラシアの口から爆弾が投下される。
「本当に勝手なことだとで、無理を承知でお願いします。この魔王城のこと、なにより貴方のことをもっと教えてください」
プラシアは突然変なことを言い出した。
魔王城のことに僕のこと? 何でそんなのが聞きたいんだろう。
冒険者としての好奇心かな? うーん、困るな。
「はっ?」
なーにを言ってるのかな? 正直理解が追い付かない。
けれど言い切ったプラシア本人の目は曇りない。
真剣そのもので僕に問い掛けると、流石に返答に困っちゃって、数秒間固まった。
その間もプラシアは僕の目をジッと見つめると、何だかこっちが緊張しちゃった。
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