10 雑貨屋さんの倉庫にて
在庫管理ってメチャクチャしんどいですよね。
「よっと」
僕は魔王城の構造を利用して、一瞬で転移した。
転移した先は、如何やら地下のようで、僕が予め設定しておいた地点だ。
だから動揺することもなく、壁に設置されたスイッチを押した。
カチッ!
僕が壁のスイッチを押すと、部屋の中が一瞬で点灯した。
爛々とした灯りが、部屋中を覆い尽くしてくれると、何でも見つけられそうだ。
「改めてみると、この倉庫、デカくない?」
僕がやって来たのは、魔王城とは別の場所にある倉庫。
しかも広い空間を利用するために、地下に倉庫を用意してある。
そのおかげか、大量の荷物を貯蔵することができて、最高に便利だった。
「えっと、確か除去剤はこっちのコンテナに……」
地下倉庫は、一つの大きな空間じゃない。
様々な部屋へと繋がる扉が設置されている。
そのおかげか。部屋の扉を一つ開けると、現れたのは巨大なコンテナだった。
「あった、この茶色のコンテナだ」
目の前に現れた茶色のコンテナ。
イレ―ナ義姉さんにお願いして、コンテナごと転移して貰った。
そのおかげで、部屋の中はコンテナで一杯になっている。
「確かこの中に……」
コンテナの中に入ると、大量の木箱が積み込まれていた。
それもその筈で、別の国から輸入したものを、そのまま買い取った。
中身の詳細はよく分かっていないものばかりで、正直ヤバい物もありそう。
タブレットには、〔除去剤は茶色のコンテナ〕としかメモが取ってないので、仕方がないので適当に手を付ける。
「どれだっけ。これかな?」
とりあえず目の前にあった木箱を開けてみる。
摘まれている木箱の数は尋常じゃない。
手当たり次第に蓋を開けて中を覗き込んでみたけれど、除去剤じゃなかった。
「違う。それじゃあこっちかな?」
僕は木箱を一つ開けてみた。
だけど中身は除去剤じゃなくて、全く違う消費アイテム。
今は必要じゃないからか、一旦木箱に蓋をして、別の木箱を開けてみた。
「こっちかな?」
別の木箱の蓋を開けた。
中身を確認してみると、首を捻ってしまう。
眉間に皺が寄ると、中に入っていたものを取り出した。
「これなんだっけ? えっと、グリンリーフ?」
“グリンリーフ”ってなに? こんなの買ってたっけ?
一体何処が原産国かも分からない観葉植物が入っていたので慄く。
この空間の時間は止まっているから、搬入したままの状態にはなっている。
けれど取り出してみると、葉っぱの部分が完全に枯れていた。
「こんなの買ってたんだ。(クンクン)く、枯れてない?」
臭いもかなりキツくて、僕は顔がクシャクシャになった。
流石にコレは僕も知らないもので、タブレットで確認を取る。
イレ―ナ義姉さんは、処分した様子だけど、何故か木箱の中に残っていた。
「イレ―ナ義姉さんが捨てていない? ってことは、シャベル義兄さんの仕業だね」
こんなことをするのは、シャベル義兄さんに決まっている。
イレ―ナ義姉さんが、本来廃棄処分した筈のものを、勝手に持ち込む。
魔物の血が混ざっているせいだけど、本当にシャベル義兄さんは“犬”っぽかった。
「って、こんなの置いておいたらダメだよ!」
流石にこんな姿になった観葉植物を、木箱の中に戻す気にはなれない。
一旦捨てることを検討した。ううん、もう決定した。
流石にシャベル義兄さんが不満を抱いても、こんなものは残せない。
「って、こんなことしている場合じゃなかった。除去剤……あれ? 全然見当たらない」
僕は他の木箱も開けて、中身を確認した。
けれど一向に見つかる気配さえなく、苦戦することになる。
何でこんなことになるの? タブレットを改めて確認してみる。
「やっぱり茶色のコンテナだよね? ……ん」
僕は改めてタブレットを確認する。
除去剤が入っているのは、茶色のコンテナらしい。
けれどいくら探しても見当たらないので、もう諦めてしまおうとするが、タブレットを確認すると、追加で記入がされていた。しかもごく最近だ。
「誰かが書き込んだ跡がある。一体誰がなんのために?」
僕はつい気になったので、除去剤の欄をタッチした。
すると表示されたのは、除去剤についての追加事項だった。
「えっとなになに?」
僕はタブレットを凝視した。
追加で記入されたらしい書き込みがある。
[除去剤は店の方に移動しました]と書かれていた。
「店の方に? 店って、あっちだよね?」
除去剤を店の方に持って行った。
誰が、何のために? 頭の上ではてなが浮かぶ。
だって除去剤はスライム用で買い込んだものだから、店に並べる訳がない。
「嘘だ。誰が持ち出したの?」
普通に嘘だと思った。
そんなバカみたいなことをする義兄弟姉妹は……シャベル義兄さんくらいかな?
それでもシャベル義兄さんなら、コンテナの中を丁寧に並べたり、片付ける訳がない。
一体誰の仕業なのか、無性に気になってしまった。
「イレ―ナ義姉さん。そっか、イレ―ナ義姉さんか」
担当者の名前を確認した。
そこには“イレ―ナ”の名前が記入されている。
安心してしまうと、心配する必要が無くなった。
「イレ―ナ義姉さん……うーん、なんの目的か分からない」
僕は困ってしまった。
流石に納得はするけれど、それでもイレ―ナ義姉さんが持ち出した理由がピンと来ない。
とは言え、イレ―ナ義姉さんのことだ。きっと意味がある。
「そっか。店の方にあるんだ」
地下室に無いってことは、自然と持ち出されたのは分かる。
だけど一体何処にって思ったけれど、ちゃんと書いておいてくれた。
流石はイレ―ナ義姉さん。僕はホッと胸を撫でた。
「これがシャベル義兄さんだったら、なにも書いてないもんね」
悪口みたいになっちゃうけど、シャベル義兄さんと比べちゃう。
それくらいシャベル義兄さんはズボラで杜撰な人。
だからついイレ―ナ義姉さんを引き合いに出してしまって、正直比べたらダメだって分かってた。
「早くしないと、スライム達も元気が出せないよね。善は急げだ!」
僕は茶色のコンテナを出た。
そのまま部屋の扉を閉めると、地下室も飛び出す。
向かった先は階段。手すりが付いていて、凄く使いやすい。
「にしても除去剤を店に持って行くって、なんの用事があったんだろう? 気になるな」
正直、除去剤は店においても売れる気配がない。
それなのに、如何して店に並べたんだろう。
イレ―ナ義姉さんの考えが読めない僕は、そうは言いつつも階段を上り切った。
その先に広がっているのは、地下室とは雰囲気の異なる空間。そう、雑貨屋の内装だった。
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