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家族経営の魔王城〜家族の落ちこぼれな僕が、魔王役をやらされている件について〜  作者: 水定ゆう
1章

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10/22

10 雑貨屋さんの倉庫にて

在庫管理ってメチャクチャしんどいですよね。

「よっと」


 僕は魔王城の構造を利用して、一瞬で転移した。

 転移した先は、如何やら地下のようで、僕が予め設定しておいた地点だ。

 だから動揺することもなく、壁に設置されたスイッチを押した。


 カチッ!


 僕が壁のスイッチを押すと、部屋の中が一瞬で点灯した。

 爛々とした灯りが、部屋中を覆い尽くしてくれると、何でも見つけられそうだ。

 

「改めてみると、この倉庫、デカくない?」


 僕がやって来たのは、魔王城とは別の場所にある倉庫。

 しかも広い空間を利用するために、地下に倉庫を用意してある。

 そのおかげか、大量の荷物を貯蔵することができて、最高に便利だった。


「えっと、確か除去剤はこっちのコンテナに……」


 地下倉庫は、一つの大きな空間じゃない。

 様々な部屋へと繋がる扉が設置されている。

 そのおかげか。部屋の扉を一つ開けると、現れたのは巨大なコンテナだった。


「あった、この茶色のコンテナだ」


 目の前に現れた茶色のコンテナ。

 イレ―ナ義姉さんにお願いして、コンテナごと転移して貰った。

 そのおかげで、部屋の中はコンテナで一杯になっている。


「確かこの中に……」


 コンテナの中に入ると、大量の木箱が積み込まれていた。

 それもその筈で、別の国から輸入したものを、そのまま買い取った。

 中身の詳細はよく分かっていないものばかりで、正直ヤバい物もありそう。

 タブレットには、〔除去剤は茶色のコンテナ〕としかメモが取ってないので、仕方がないので適当に手を付ける。


「どれだっけ。これかな?」


 とりあえず目の前にあった木箱を開けてみる。

 摘まれている木箱の数は尋常じゃない。

 手当たり次第に蓋を開けて中を覗き込んでみたけれど、除去剤じゃなかった。


「違う。それじゃあこっちかな?」


 僕は木箱を一つ開けてみた。

 だけど中身は除去剤じゃなくて、全く違う消費アイテム。

 今は必要じゃないからか、一旦木箱に蓋をして、別の木箱を開けてみた。


「こっちかな?」


 別の木箱の蓋を開けた。

 中身を確認してみると、首を捻ってしまう。

 眉間に皺が寄ると、中に入っていたものを取り出した。


「これなんだっけ? えっと、グリンリーフ?」


 “グリンリーフ”ってなに? こんなの買ってたっけ?

 一体何処が原産国かも分からない観葉植物が入っていたので慄く。

 この空間の時間は止まっているから、搬入したままの状態にはなっている。

 けれど取り出してみると、葉っぱの部分が完全に枯れていた。


「こんなの買ってたんだ。(クンクン)く、枯れてない?」


 臭いもかなりキツくて、僕は顔がクシャクシャになった。

 流石にコレは僕も知らないもので、タブレットで確認を取る。

 イレ―ナ義姉さんは、処分した様子だけど、何故か木箱の中に残っていた。


「イレ―ナ義姉さんが捨てていない? ってことは、シャベル義兄さんの仕業だね」


 こんなことをするのは、シャベル義兄さんに決まっている。

 イレ―ナ義姉さんが、本来廃棄処分した筈のものを、勝手に持ち込む。

 魔物の血が混ざっているせいだけど、本当にシャベル義兄さんは“犬”っぽかった。


「って、こんなの置いておいたらダメだよ!」


 流石にこんな姿になった観葉植物を、木箱の中に戻す気にはなれない。

 一旦捨てることを検討した。ううん、もう決定した。

 流石にシャベル義兄さんが不満を抱いても、こんなものは残せない。


「って、こんなことしている場合じゃなかった。除去剤……あれ? 全然見当たらない」


 僕は他の木箱も開けて、中身を確認した。

 けれど一向に見つかる気配さえなく、苦戦することになる。

 何でこんなことになるの? タブレットを改めて確認してみる。


「やっぱり茶色のコンテナだよね? ……ん」


 僕は改めてタブレットを確認する。

 除去剤が入っているのは、茶色のコンテナらしい。

 けれどいくら探しても見当たらないので、もう諦めてしまおうとするが、タブレットを確認すると、追加で記入がされていた。しかもごく最近だ。


「誰かが書き込んだ跡がある。一体誰がなんのために?」


僕はつい気になったので、除去剤の欄をタッチした。

 すると表示されたのは、除去剤についての追加事項だった。


「えっとなになに?」


 僕はタブレットを凝視した。

 追加で記入されたらしい書き込みがある。

 [除去剤は店の方に移動しました]と書かれていた。


「店の方に? 店って、あっちだよね?」


 除去剤を店の方に持って行った。

 誰が、何のために? 頭の上ではてなが浮かぶ。

 だって除去剤はスライム用で買い込んだものだから、店に並べる訳がない。


「嘘だ。誰が持ち出したの?」


 普通に嘘だと思った。

 そんなバカみたいなことをする義兄弟姉妹は……シャベル義兄さんくらいかな?

 それでもシャベル義兄さんなら、コンテナの中を丁寧に並べたり、片付ける訳がない。

 一体誰の仕業なのか、無性に気になってしまった。


「イレ―ナ義姉さん。そっか、イレ―ナ義姉さんか」


 担当者の名前を確認した。

 そこには“イレ―ナ”の名前が記入されている。

 安心してしまうと、心配する必要が無くなった。


「イレ―ナ義姉さん……うーん、なんの目的か分からない」


 僕は困ってしまった。

 流石に納得はするけれど、それでもイレ―ナ義姉さんが持ち出した理由がピンと来ない。

 とは言え、イレ―ナ義姉さんのことだ。きっと意味がある。


「そっか。店の方にあるんだ」


 地下室に無いってことは、自然と持ち出されたのは分かる。

 だけど一体何処にって思ったけれど、ちゃんと書いておいてくれた。

 流石はイレ―ナ義姉さん。僕はホッと胸を撫でた。


「これがシャベル義兄さんだったら、なにも書いてないもんね」


 悪口みたいになっちゃうけど、シャベル義兄さんと比べちゃう。

 それくらいシャベル義兄さんはズボラで杜撰な人。

 だからついイレ―ナ義姉さんを引き合いに出してしまって、正直比べたらダメだって分かってた。


「早くしないと、スライム達も元気が出せないよね。善は急げだ!」


 僕は茶色のコンテナを出た。

 そのまま部屋の扉を閉めると、地下室も飛び出す。

 向かった先は階段。手すりが付いていて、凄く使いやすい。


「にしても除去剤を店に持って行くって、なんの用事があったんだろう? 気になるな」


 正直、除去剤は店においても売れる気配がない。

 それなのに、如何して店に並べたんだろう。

 イレ―ナ義姉さんの考えが読めない僕は、そうは言いつつも階段を上り切った。

 その先に広がっているのは、地下室とは雰囲気の異なる空間。そう、雑貨屋の内装だった。

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