表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
62/65

初の動画視聴会①



「うん、悪くないんじゃないかなっ……って言うより、かなり良い出来な気がするんだけと。効果音とかBGMとか、物凄く凝った作りになってるよね!」

「そうだな、文字起こしとかも出来てるし、本格的な編集で観易いと思うぞ。時間は15分ちょっとか、次回以降もこの位でまとめる感じなのかな。

 見事な手際だな、2人とも」

「ウチがどんな活動内容なのかも、この動画を観たら分かる感じだねっ。最初の動画は、『ニー党連合』の結成と何をメインに頑張るかに焦点が当たってるし。

 編集するだけで、こんなドラマティックになるなんて凄いね!」


 もはや皆からこんなに称賛されるなんて、思ってもいなかった和也と直哉(なおや)である。確かにそれなりに、編集作業は時間を掛けて一緒に頑張ったとは言え。

 ソフトの使い方さえ把握出来ていれば、動画の編集は手法が確立されている。つまりは、アップされている動画を観て真似れば、標準レベルのモノが出来てしまうのだ。


 とは言え、ここ数日は2人で頑張ったのも確かではある。特に直哉は、学校に行く時間がフリーなので、パソコンの勉強がてら熱心に励んだのも本当。

 その甲斐あって、称賛コメントを仲間から貰ってホッと一安心の直哉であった。もちろん和也にも手伝って貰ったけど、大半の作業は彼が(にな)ったのだ。


「それじゃ、もう1本観て貰おうかな……こっちは田舎での農作業が中心で、割とみんなで作業を楽しんでる動画になってると思うよ。

 こっちも、メインは直哉君が頑張って編集してくれたよ」

「ふむっ、土日の農作業風景の動画か……楽しみだな、それじゃあ頼む」


 そんな充希(みつき)(うなが)しの言葉に、続けて2本目を流し始める和也。そんな訳で、ノートパソコンの画面には田舎の復興作業を学生ズが行なう動画が流され始める。

 そんな2本目も好評で、みんなが楽しく作業している姿が生き生きと撮られていた。こちらも15分程度に(まと)められていて、こうなった経緯もしっかり説明されていてグー。


 そんな評価を貰いながら、まだまだ動画データは未編集のが幾つかあると和也は口にする。皆の好評を受けて、あと2~3本分のストックがあるから、こんな感じで良ければどんどん作って行くよと直哉も控え目に言葉を発する。

 ぜひ頼むぞと鷹揚な充希の返答に、場からは温かい拍手が巻き起こった。良く分からないシチュエーションだが、和也と直哉は何となく嬉し恥ずかしな表情。


 これは最初に作った動画だし、目指せ100回再生くらいかなと和也は控え目なコメント。タイトルやタグ付けで大きく変わって来るらしいねと、その辺も要勉強だと各所から。

 やっぱりユーチューブやらティックトック系の動画視聴は、皆慣れているだけあって助言が的確である。100回と言わず1千回目標だよと、意気は高いけどどうなるモノやら。


 その辺は、世間がどの程度『ニート問題』に関心があるかの試金石にもなるのかも。それから和也から、登録や収益に関しての紐付けは全部直哉君のアドレスと口座にしたよと報告が。

 その点は、特に問題無いねと皆からも同意を貰えた。



「うむっ、しかし……本当に収益が出たら嬉しいけど、そう簡単には行かんだろうな。何だっけ、バズる動画を目指すんだっけか?

 1本目からは無理だろうけど、いつか叶ったらいいな」

「まぁ、特にバズらせる必要は無いけど……色んな人に観て貰って、問題提起となる動画だと認識して貰いたいよな。それで勇気付けられるニートの人が出てくれば、作り手としても本望だろうし。

 直哉も和也君も、本当にご苦労様だったな」

「これって、視聴回数が多い方が良いの? それともいいねボタンとか、チャンネル登録数が多かったら喜べばいいのかな?

 いざとなると、詳しいやり方って良く分からないよね」


 朋子(ともこ)はどうやら、そっち系にはあまり詳しくないらしい。充希も首を傾げているし、詳しい奴に丸投げで良いだろうって方針みたい。

 和也がどれも大事だけど、本格的にするのならばブログとかツイッターとか、全部紐づけてやるべきかなと説明を始める。それも同じく、2人で進行中との事である。


 それは頼もしいなと、基哉(もとなり)も2人の報告を耳にして後押しの構え。それじゃあこの動画は問題無くアップして貰って、ブログなどの活動は定期的に報告して貰う方針でと、今後の活動を(まと)め上げる。

 了解と、皆から良い反応を貰った2人は気が軽くなったのがモロに表情に出ている。この動画のアップで、『ニー党連合』の活動に弾みがつけば彼らも幸いだろう。

 そんな感じで、最初の視聴会は幕を降ろしたのだった。




「さて、それじゃあ続いていつもの討論会に移ろうか……ブンさんには悪いけど、そのまま撮影の方をお願いします。

 最初の議題は何にしようか、ガンちゃん?」

「そうだな、最初はニート問題にしようか。前もってラインで、ニートからの脱却方法をみんなに考えて来てくれるように伝えていた訳だが。

 まぁ、そんな簡単に解決する問題じゃないけど、1度は話し合っておかないとな。なんたって、()えある新拠点での最初の課題には相応(ふさわ)しいだろう」

「確かにそうだねぇ……やっぱりそこは、『ニー党連合』を立ち上げた根底の問題だもんね! とは言え、簡単に解決方法が分かってたら、こんなニート人口数十万人とかの規模にはならないよねぇ。

 でも多分、話し合う事に意義があるんだよね、ガンちゃん?」


 そんな知佳(ちか)の言葉に、もちろんだと大きく頷く充希である。確かにその通りで、解決方法と言っても簡単には浮かばないよと、あちこちから批難もあがっていたり。

 それならと充希は、いつものように基哉(もとなり)から具体例を幾つか話して貰おうと振って来る。それならと、古いニュースを見付けて来たから発表しようかと基哉もトップバッターを務める構え。


 それに待ってましたと、周囲からの良く分からない拍手が巻き起こる。最近はこんな感じで、話し合いの核となる議題を提示するのは、基哉の古いネットニュースか和也の漫画やアニメからのネタ探しがメイン。

 それを皆が茶々入れして、話題として盛り上げたりするのだ。そして最終的に、充希が使えるネタを探し出して『ニー党連合』の活動内容に加えるか否かを判別する感じ。


「何か変なノリだけど、まぁいいか……それじゃ、1つ目のニュースは割と悲惨と言うか、ニートがその結末に救われたのかは判然としない例ではあるな。まぁ、それでも一応は極端な例として耳に入れておいてくれ。

 要するに、人間は“切っ掛け”が無いと変われないってのはみんな分かると思うんだが。ニート生活の要因には、その生活を支えている親にも問題がある訳だ。

 この出資者が突然いなくなると、呑気に隠居生活も出来なくなるのは分かるよな」

「ふむっ、そんな例があるのか……と言うか、遅かれ早かれ親の方が年が上なんだから、普通は亡くなるのは親の世代の方が先だよな」

「確かにそうだね……でも『5080問題』って、そんな感じで生まれた言葉じゃ無かったっけ? 80代の年金受給で生活している老齢の親たちが、50代のニートの子供の生活を支えてやってるって。

 無茶苦茶に不自然な状況だけど、そんな世帯が急増してるんでしょ?」


 何の対策もせずにニート生活を続けていれば、当然そんな時代が来るのは目に見えている。恐らく政府は、そうなっても(ろく)に対策は講じないだろう。

 今でさえ、生活困難者には充分な対応は出来ていないのだ。予算が限られているので仕方が無いのだが、間違ってもニート生活者が生活保護を受けられる未来は来ない筈。


 基哉がネットから拾って来た話も、まさにそんな典型的な構図だった。その問題の家庭は、老齢の両親と40~50代の息子の3人家族だったらしい。

 それがある日突然、ニートの息子を置き去りに老齢の両親が家を出て行ってしまったそうなのだ。息子には何も言わず、文字通りの失踪である。


 捨てられた息子は、当然ながらそれ以降は1人で生きて行くしか無く。市役所に相談するも、生活保護なんて甘い汁は当然吸えない。

 そこで仕方なく働き始めるも、両親への(うら)み節はニュースの文面からも伝わって来た。その老夫婦も、実家を手放して相当な覚悟だった筈である。

 相当なパワープレーだが、これで何とか息子の脱ニートはなった模様。





 ――ただし実家を1軒引き換えは、何とも割に合わないような?








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ