表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
45/65

月曜日の動画視聴会②



 前準備に関しても、前回と同じ道具を各自で持参するのを周知する朋子ともこであった。ついでに、これから日中は暑くなるし、飲み物やらの持参もなるべく各自で行なうと言う決まりに。

 農作業に熱中していて、脱水症状になるってのは本当によくある事らしく。帽子をかぶっている位では、さすがにそれは防げないので対策は必要との事。


 そんな前もっての備えは、各自でお願いねと朋子から通達がなされた。それを真面目顔で聞く学生ズは、早くも週末のイベントに心躍らせている感じ。

 労働は確かに大変だが、皆で集まって盛り上がるのは全く嫌ではない面々である。御呼ばれした昼食も美味しかったし、良いイベントだったとの皆の認識であった。

 そんな訳で、今回も全員が参加表明をする流れに。



 それから話は、動画の編集をどうしようって方向に。その辺の作業に関しては、和也と直哉なおやが一緒に進める方針に落ち着いていた。

 直哉に至っては、既に『動画編集ソフト』を買ったとの事である。充希みつきはそれを聞いて、動画のアップで儲けが出たら返すからとレシートの催促。


 ついでに『ニー党連合』の会計役も決めておきたいなと、一行の前でそう口にする。それを聞いた朋子がすかさず挙手をして、この問題は呆気なく解決した。

 これで充希が会長で基哉もとなりは書記役、朋子が会計と役職は順調に埋まって行く。そんな会長は、取らぬ狸の皮算用に忙しそう。今まで消費した金額は、動画アップの儲けで回収するぞと意気だけは高い。


 そんな充希の言葉に、基哉は懐疑的な視線を投げかけている。最初からそう上手くは行かないぞと、当然の助言を飛ばして心配顔。

 あまり過剰に期待し過ぎて、早々にリーダーがへそを曲げたら活動がとどこおってしまう。それこそ、誰が悪いとか仲間に亀裂が入ったら最悪だ。

 そのフォローだが、すかさず朋子も介入してくれてまずは安心?


「確かにそうだよね、最初からそんなに上手くは行かないよ、ガンちゃん……そもそも学生が、素人丸出しで田舎の放棄農地を開墾しているだけの動画だよ?

 特に売りも無いし、動画の途中に盛り上がりも無いんだから」

「それは仕方がないと思うけど、そもそも他の動画を観てもそんな盛り上がったりはしてないでしょ? 踊ったり大食いしたり、素人が歌ったりとか特段に意味が無いのも多い気がするかな。

 それを考えれば、やってる事は有意義だし面白いと思うけどなぁ」

「そうだよねっ、可愛い女子高生が2人も出演してるんだし! あっ、三宅先生も入れれば美人が3人も出演している動画だよっ!?

 いきなりバズったりの可能性も、ひょっとしてあるんじゃないかなっ!?」


 そんな訳無いだろうと、ある意味冷静な基哉もとなりの突っ込みに。はしゃいでた知佳ちかは、一転して可愛くむくれた顔付きに変身する。

 まぁ、この場の女子たちが可愛いのは本当かも知れないけれど。それだけでバズる程、ユーチューブの世界も甘くは無いだろうと充希も真顔のフォロー。


 その編集作業は、計画通りに直哉と和也に任せるとして。そう言えば、不登校児の動画のユーチューバーの話を先週したっけなと、さり気なく話題転換する策略家の基哉である。

 二番煎じとかでは無いけど、不登校問題を売りにするのは正論か否か。どんなアイデアを前面に押し出して、玉石混交ぎょくせきこんこうのアップされた動画の中で生き残るべきか。

 その辺の策略をどうするべきかと、基哉は皆へと問題提起。



「う~ん、その不登校児の動画……確か、自称“少年革命家”だっけ。どっちかと言えば、炎上してますってネガティブなネット記事しか見掛けないんだけど?

 確かクラウドファンディングでは、つのったお金で日本一周しつつ、全国の不登校児と交流をするって確約してたのに。動画では遊んでばかりで、交流してる気配が無いって感じで炎上したらしいね?

 本人は、動画の外では交流してるし規約違反じゃないと言ってたけど」

「どうなんだろうね……炎上してるって事は、世間から関心を寄せられてるって事だとは思うけど。不登校児を元気づけてるとか、本当に革命を起こしてるかって言われると、ちょっと盟約とは違う気もするかな?

 真面目に登校している生徒に対して、ロボットみたいと発言してたけど。本人が父親のロボットじゃないのとか、そんな反論も喰らってたし。

 少なくとも、この前言ってた“エジソン”や“オードリー・タン”の経歴とは全然違うよねぇ」

「でも全国を回る車の名前は、ちゃんと“スタディ号”なんでしょ? 本人はその旅を通して、色々と勉強する気があるって事なんじゃない?」


 最初に和也の発した言葉は、変に不登校を前に出して世間に叩かれるのは嫌だって意見みたい。それに対して、朋子は革命家や何やらの意見は、少なからず周囲の大人の影響があるんじゃとの勘繰かんぐりらしい。

 最後は知佳の、擁護とも取れる中立的な立場の意見だろうか。要するに、学校に通うだけが勉強じゃ無いって意見は、自分も理解出来ますよと。


 充希みつきもそれには同意して、学生全員が等しく小学校6年と中学校の3年間と。それから高校の3年間で、無理に知識を頭に詰め込む必要も無いんじゃないかとの意見を口にする。

 人にはそれぞれペースがあるのだし、人生って意外と長いのだ。そもそも教育知識をこれだけ頭に詰め込めば、一人前の大人として振る舞えますよってラインなど無い。


 逆に知識や教養はあっても、人と接する経験や礼儀作法を知らない者はビックリする位多い。学歴社会なので、卒業の認定証が無いのは劣ってるとみなされるのは仕方が無いけど。

 あるテレビ番組で、道行く人やスタジオの芸能人に『日本地図』を高校卒業した一般人に描いて貰ったのだが。その結果が酷くて、半数以上が四国や九州の位置が分からなかったのだ。そう口にする基哉も、充希の意見には一部同意の構えっぽい。

 こう言うのを見ると、12年の勉強期間ってナニ? って思ってしまう。



「たとえ本人が、のんびり学習する気があってもなぁ……充希の言い分も分かるけど、基本の知識は頭の柔らかい子供の頃に詰め込んだ方が効率が良い気がするかな。

 そもそもこの革命家が度々炎上するのも、やはり何かやり方が間違ってるんじゃないか? それを回避するための知恵は、どこでどうやってつけるんだ?」

「なるほど、その為の学習を基哉もとなりは放棄してるんじゃないかって言いたい訳だ。確かに学校に行けば、色んな知識や交友関係が手に入り易いもんな。

 友達が増えれば、その分世の中には色んな考え方があるって体感出来るからな」

「あっ、でもでもガンちゃん……知名度の高い大学を出た政治家さんとかでも、汚職とかで捕まったりなんてニュースは良く聞くよねっ!?

 せっかく知恵や交友関係を手に入れても、それをいい方向に使う良心もちゃんと育まなくちゃダメだと私は思うの!」


 基哉と充希の話し合いに、やや方向違いの論法で斬り込む知佳であった。確かにそれは重要ねと、同じく女生徒の朋子もその話を擁護の構え。

 一概いちがいに高学歴の人達が、人格者であるとは言い切れないのは世のことわりである。そんな連中が良い就職先を独占して、例えば政治家になったとしても、政治や経済を悪い方向へと導いているのではないか。


 そうなると、教育や良心の育成は一体どこで行えば良いのかって話になって来る。小学校から高校の12年の教育で駄目、それに大学生活の数年を足しても駄目だと言うのならば。

 本当に優秀な人材は、どこから発生するのか……その点、“オードリー・タン”の能力を買って政府に迎えた台湾は、本当に見事な手腕だと言わざるを得ない。

 日本にも、そんな構造改革的なモノが備わっていれば良いのだけれど。



「ううむっ、ちょっと話がそれたかな……教養を身に着けたり良心の育成については、また今度改めて話し合う方向で行こうか。今は動画の話をメインで行こう、不登校を前面に出すか出さないかって事で。

 俺はアンチが多く発生する動画は、ちょっと嫌だな」

「本家の方も、別にそんな意図で動画をアップしてないでしょ。たださっきも言ってた、チェックを全員ですればそれだけ色んな意見が出て安全になる気はするかな?

 編集って、やっぱ大事な作業だと思うよ」

「なるほど、ヤバい発言や行き過ぎた行動のアップを回避出来るのは確かに編集の魔術だな。それなら、もう少し人数を増やして行くのもアリなのか?

 人数が増えれば、出来る事も増えて行くだろうしな」


 基哉もとなりの軌道修正に、すかさず合いの手を入れる和也だったけれども。充希の人を増やそうか発言には、この場にいる全員から総突っ込みが。

 今ですら6人も揃っていて部屋が狭いのに、それ以上の人数は無理だよと。もっともな反論に、珍しく充希も黙り込むしかないない有り様。

 それより顧問は、三宅先生でいいかなと朋子の言葉に。





 ――ほぼ満場一致で、その案は採用されるのだった。








評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ