月曜日の動画視聴会①
土曜日曜と、一緒に集まって行動を共にしておいてアレだけど。週明けの月曜日にも、律儀にも定例集会の名目で集まる『ニー党連合』の面々であった。
場所もすっかりお馴染みとなった、直哉の部屋に恒例のメンバーが。ラインでの遣り取りの果てに、1人の欠席者も無い集合振りである。
もっとも、直哉だけは欠席のしようも無いのが現状。そんなメンバーだが、各所から筋肉痛の訴えやら変な虫に刺されたかもとの声が。
この町は大都会とは言えないけど、山やら川などの自然を簡単に堪能出来る立地でもない。そんな面々が、ほぼ知識の無いままの田舎体験である。
どこかに負担が掛かっても、それは仕方がないと言うモノ。とは言え、皆が総じてマイナスのイメージを田舎の活動に持たなかったのは何より。
逆に耕した畑で、今から何を育てようかとのプラスの意見も色々と出て場は騒がしい限り。モノ作りって、基本は楽しい作業との認識が学生ズにはあるようだ。
そんな雑談を制して、議長の充希が声を上げた。他人の家に長居もアレだから、さっさと活動を始めるぞと声を発して場を仕切る構え。
それを合図に、一同は口を閉じて会議が始まるのを待つ。
「よしっ、それじゃあ今日の議題はどうするかな。さすがに昨日の今日じゃ、誰も話し合いのネタを用意出来てないと思うからな。
土日の農地開拓の振り返りと反省をしつつ、今後どうするかの話し合いを軽くしてから終わろうか。まぁ、ネタやら報告のある者はしてくれて全然構わないけど」
「俺は持って来たネタは無いけど、以前に話してたニートの知り合いの件が何とかなりそうだからそれを報告するよ。次の会合が木曜だっけ、その時にセッティング出来るかも?
土曜の反省に関しては、やっぱり初めての農作業だったから手際は凄く悪かったね。日曜は行けなかったけど、どんな事したの?」
「日曜日は耕作予定地の土を耕したり、そこに石灰や堆肥を撒いたりしたかな? 後は鶏小屋を撮影したり、裏山に登ってみたりと動画素材集めも割と捗ったかも。
それでやっぱり、小型耕運機を使うのも手間取ったよね、ガンちゃん」
最初だから仕方がないと、大真面目顔で朋子の言葉に返事をする充希。次からは、もう少しマシに草刈り機も耕運機も使いこなせる筈だと妙な自信を覗かせている。
来週は、種やら苗をホームセンターで買って、再びお邪魔するぞと充希が予定を口にした。それに対して、何を植えるのと和也が気軽に質問を飛ばす。
それに応えるのはやっぱり朋子で、種から育てるのは大根とかオクラが良さそうとの事。苗からは、トマトやナスやピーマン辺りが順当かも。
イモ類も割と簡単だが、時期がずれてるから出来て里芋とかサツマイモが良さげとの話。収穫時期の早いジャガイモは、やはり4月あたりに植えないと無理みたい。
爺婆から聞き出した情報だと、素人ならその辺りから栽培を始めるのが良いみたい。三宅先生とも相談して、ホームセンターに寄った際に最終決定する予定だと朋子が口にする。
何しろ野菜作りなど初めての素人集団、難しいと言われても何がどう難しいのかも分からない。そこは身をわきまえて、ベテランに従うのが正解ルートとの認識である。
それに何の文句も無い男性陣は、野菜が採れたらバーベキューだなと、収穫後の楽しみを語り合っている。気の早い事だが、モチベーションってやっぱり大切。
それならトウモロコシも欲しいよねと、知佳も追従の言葉を口にする。それは確かに外せないねと、和也や直哉も盛り上がりを見せている様子。
何とも単純だが、一行の意気はそんな感じで高まっていたりして。来週の集まりも楽しみだねと、労働の大変さは報酬に見事にかき消されている感じ。
それを密かに目論んでいた基哉は、心の中でしめしめと悪い顔。何しろこの集会は、大半はボランティア活動で成り立っているのだ。
皆の興味を引くイベントを持ち出して、出来るだけ参加して貰って活動を活性化させなければ。その合間に、課題となるニート問題が何とか解決出来たら占めたモノ。
何しろ問題解決の糸口は、ニートや不登校が大きな社会問題となっていながら未だに見つからない状況である。たかが学生の身分で、それを解決に導こうってのはおこがまし過ぎる。
それでも困っている元同級生を、立ち直らせる支援位はしてあげたい。集まったメンバー達が、同じ気持ちかどうかは不明だが少なくとも寄り添うだけでも力になるのだ。
大事なのは、引き篭もりルートを事前に阻止する事である。こうやって毎週顔を合わせていれば、自然とそれも適うって寸法だ。
或いはそれが、この『ニー党連合』の本来の意味なのかも知れない。そんな事を考えながら、基哉は皆の話に耳を傾けるのだった。
今は朋子が、皆に家でも簡単な栽培を始めようと布教を始めている。朋子もお婆からの情報で、コンパニオンプランツでマリーゴールドをポットで育てなさいと勧められてるとの事。
そうして種を貰って、ただ今絶賛ポットでの育成中なのだそう。まだ芽も出てないけど、その姿を想像するだけで毎日が楽しいと熱弁している。
面白そうだなとの充希の返答に、種もポットもまだ余っているよと朋子の笑顔での返し。すかさず帰りに寄るから頂戴と、遠慮の無い充希と知佳が食い付てい来る。
それには朋子も上機嫌で、土も一緒に買ったからポット4つ分くらいずつ持って帰って良いよと言って来る。それよりコンパニオンプランツって何なのと、基本の分かっていない和也が質問を飛ばす。
和也もマリーゴールドは知っていても、コンパニオンプランツに関しては意味不明みたい。
「要するに、相性の良いハーブや花を野菜と一緒に植える事によって、野菜に虫が付き難くなったり、育ちが良くなる組み合わせの事だな。
他にも色々あるけど、代表的なのはバジルとかのハーブ類やネギ類とか、それからマリーゴールド辺りかな?」
「そうそう、他にもハーブ系はお勧めみたいだねっ。料理にも使えるし、元が雑草だから繁殖力が旺盛で育てやすいみたいなの。
私も、カモミールやルッコラも今度買う予定だよっ」
物知りの基哉が代わって説明してくれて、マリーゴールドやハーブ類はそんな中で一番メジャーであるらしい。ネギ類も収穫すれば食べれるし、お勧めではあるそう。
朋子もその勢いに乗って、色々と家庭で試す発言をしている。まずはハーブ類からなのは、やはりネギ類よりは彩りが楽しめるからなのだろう。
確かにネギの方が食材として使い勝手は良いが、しょせんはひょろっと伸びた葉っぱである。あれを観賞用に楽しむとなると、ちょっと美意識が疑われるレベル。
そんな訳で、朋子のお婆も年頃の娘さんにはお勧めしなかった模様。
「へえっ、知らなかったなぁ……歌で有名だってのは知ってたけど。確か、麦わら帽子みたいな花が咲くんだっけ、マリーゴールドって?」
「普通に、ぽわぽわの黄色とかオレンジ色の花だったと思うけど? 種は細長くって、ちょっと変わった形をしてたかな?」
「歌の歌詞をそのまま鵜呑みにしない方が良いぞ、和也。赤いスイートピーだって、実は歌がヒットした頃は実在してなかったらしいからな。
ピンクとか白が基本で、品種改良でやっとこ赤い品種が最近出来たって話だぞ」
そうなんだと、驚いた様子の和也はともかくとして。土日の反省としては、とにかく回数をこなして要領を良くしていくのが今後の指針と言う事に落ち着いた。
来週も当然、同じ時間に同じ場所に集合との決定がなされ。朋子と知佳が、三宅先生に連絡してそれで良ければそのまま決行される流れに。
――そんな感じで、メインの議題は決定の運びに。