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第一話 少年と呪い

ヒュー…ヒュー…

静かな町…いや、荒廃した町。その中で今にも消えそうな小さな呼吸音が響く

誰の息だ…?

死にそうじゃないか…

あぁ…そうだ…俺の息だ…………


ーー

---

----


「あぁ…腹減ったなぁ」


ボロボロに朽ちてしまった木造建築の建物にもたれながら、大きくお腹を鳴らす。

彼の名はエクシア・ファリル。浮浪孤児だ。

彼の父親は彼が生まれてすぐに、魔力に汚染され、魔力を帯びるようになった異形の生物…魔物に襲われ死亡し、女手一つで育ててくれた母は呪いにかかってしまい衰弱死してしまった。

ちなみに呪いとは、魔力によって体に負荷がかかり変異してしまうことだと一般的には言われている。

何故こんな曖昧表現かというと、研究が進まなかったからだ。

呪いについての研究は始めるとほぼ同時期に世界魔力大戦が始まり研究員は徴兵された。

その後政府は崩壊し、資金も研究員も無くなってしまい研究は凍結してしまったのだ。


「水は雨でどうにか凌げるが、メシは…だめだ。」


彼はそんなことを呟きながら荒廃した町をトボトボ歩く。

フラフラしていて、今にも倒れてしまいそうだ。

すると、金髪の少女が目の前を走り去っていく。

まるで何かに追われているようだ。

そう思った瞬間、目の前を猪のような魔物が三頭、走り去っていった。

全力疾走だ。

このままでは追いつかれてしまうだろう。

だが俺には関係ない。

誰が死のうとそいつの勝手だ。

俺は知っている。

魔物に襲われたが対抗手段のない奴の末路を。

そして、実力も無いのに助けようとした奴のもだ。

俺はこの場を後にしようとした。


「キャー」


女子の悲鳴が聞こえた。

さっきの少女のものだ。

俺は悲鳴が聞こえて、反射的に聞こえた方を向いてしまった。

彼女はこけており、魔物がもう近くまで来ていた。


「誰か…助けて…」


少女の震える声が聞こえた。


「ウォオォオォオォオォ」


その瞬間、俺は叫びながら魔物に向かって走り、近くに落ちていた木の枝で魔物の目玉に向かって刺した。

それはまるで、さっきまでの空腹がなかったように動いていた。

そして残りの二頭の方にに向かって行き、そのまま倒してしまった。

そして、金髪の少女に「大丈夫か?」と優しく声をかけようとした矢先に、最初に倒した筈の魔物が俺に突進してきた。

思いっきり腰が曲がってはいけない方向に曲がると同時に、腹に牙が突き刺さった。

ありえないほどの激痛を感じながら俺は倒れてしまった。

魔物が俺の背中をガブリといこうとしたその時。


「氷矢」(アイス・アロー)


そんな声が聞こえたと同時に、背中の魔物に氷柱のようなものが突き刺さる。

絶命したのか、魔物が俺の背中に倒れ込む。


ヒュー…ヒュー…

荒廃した町でいかにも死にそうな呼吸音が響く。

金髪の少女を助けようとしたら、魔物に返り討ちに会ってしまった。

何ともダサいことだ。

恥ずかしすぎる。

にしてもこの魔物すこぶる重い。

こんな魔物なんて早く退けてしまいたい。

そう思い、俺は二度と覚めないような深い眠りについた。



---



目を覚ますと、ベッドの上だった。

そして上半身は包帯でグルグル巻きだ。


「目が覚めましたか?」


声の方を見ると、そこには先程助けようとした少女が椅子に座っていた。

なかなかにボロっちい椅子だ。

大人が座ったら足が折れそうだ。


「あ…あぁ。魔物にかかっ返り討ちに会った後君がここっここに運んで来てくれたの?」

「はい!さっきはありがとうございます!おかげで助かりました」

「いいいっいやいや。俺なんてけけけ結局返り討ちに会っちゃったしカッコ悪かったな」

「いえいえ全然カッコ悪くありませんでしたよ。むしろカッコよかったです!」


そう言われるとなんか嬉しいな。


「あと、何かガチガチですね。もっとリラックスしてください。」


あれ俺そんなに人見知りする方だったっけ?

何か心臓バクバクだし。

深呼吸するか。

スゥーーハァーースゥーーハァーー

と、深めに深呼吸いると、彼女の椅子の足が折れた。


「キャッ」


彼女が小さな悲鳴を上げながら後ろに倒れた。


「大丈夫か!?」


と素早くベッドから降りて少女に駆け寄る。

だが痛みはない。

あれ?俺って、魔物に腰を折られて腹を貫かれたんじゃなかったっけ? 


「そっそういえば、俺を助けてくれたあの魔法使いの人はどこにいいっいったんだ?」

「今は食料の調達に行っています。」

「そっそうか。ああっ後敬語はやめて…ね。なっなんかきょっ距離を感じるから…ね。」

「あっ敬語だったね。ごめんね。でも、君もそのビクビクするのやめてね。」


彼女はちょっと怒ったふうに言う。

これは、やめようとおもってもやめれるものじゃないんだ。

すまないね。


「そういえば自己紹介もまだだったね。あたしの名前はミア・シスタイル!よろしくね。」

「つっ次は俺の番だね。えーっと俺の名前は……」


自分の名前を言おうとしたところで固まってしまった。

彼女…ミアも少し驚いたような顔をしている。

なぜ固まったか……それは自分の名が思い出せないからだ。


「思い出せない…」


ミアは絶句していた。


「そんな…私を助けたせいでこんなことに…」


ミアはとてつもなく落ち込んでいた。

そんな彼女を横目に俺は何か自分の手掛かりがないかとズボンのポケットを探ってみる。

何も無かった。

なんならポケットに穴が空いていた。

ふと首を触ってみると、冷たい金属の感触があった。

ペンダントだ。

それを取ろうと両手でペンダントのチェーンをつまもうとしたところで左手違和感を感じた。

手首から上の部分が全く動かないのだ。

だがそんなことに構わず、右手だけでペンダントを取る。

するとそれは開くタイプのペンダントで、片面には写真が入っていた。

家族写真だ。

そしてもう片面には小さな鏡があり、自分の顔が写っていた。

その顔は、家族写真の小さな10歳くらいの子供にそっくりだった。

おそらくそれは自分だろうと俺は確信した。

よく見てみると、背景と同化して見にくいがそれぞれの顔の下あたりに名前が書かれていた。

その10歳くらいの子供の下には、エクシア・ファリル…と書いてあった。

おそらくこれが俺の名前だろう。

そう考えている間に魔法使いの人が帰ってきた。


「あっ、目が覚めてるね。」

「こんにちは。僕の名前は、オリヴァーと言います。魔術師として世界を旅している者です。」


彼の声は不思議だ。

何か安心感がある。

遺跡でトカゲの魔物の鱗拾っていたら、依頼を横取りされたと勘違いされてぶん殴られてそうな感じだ。


「こんにちは、助けてくれてありがとうございます。俺の名前はエクシア・ファリル…だと思います。」


俺はさっきのペンダントに書いてあった名前を名乗る

そう言えば人見知りはしない。

何でだろ。


「だと思います?なんで曖昧なんだ?」

「さっきの魔物との戦いで記憶喪失なになってしまったもので…。」


俺は苦笑いを浮かべながら答えた。

オリヴァーさんは少し驚いたような顔をしていた。

だがしかし、オリヴァーさんはすぐに表情を整えた。


「そういえば、君にまだ治癒魔術をかけてないはずなのになぜ動けるんだ!?」

「えっ!?かけてないんですか?」


すると明らかにさっきよりも驚いた顔をしていた。

俺はそんなに重傷だったのだろうか。

まぁ腹を貫かれてるしね。

当然だろうな。


「うーん。まぁ治ったならそれに越したことはないからね。」

「なんで治ったんでしょうか?」

「おそらく呪いってやつじゃないかな?」

「呪い…ですか…」


呪いか…俺の怪我を治してくれる呪いか。

寿命とかも伸びるのだろうか。

というか、自分に利益のある効果のやつも呪いっていうのだろうか?


「なんで呪いにかかってしまったのでしょうか?」

「これはあくまで僕の仮説だけど、君が怪我をした傷口から魔物の体液が血管に入ったことで、魔力が全身を巡り、呪いにかかってしまったんじゃないかな?」

「ということはこの左手が麻痺しているのも呪いですかね?」

「ちょっと診せてくれ」


左手を差し出すと、クライブさんが俺の左手をまじまじと見る。

ちょっと恥ずかしい。


「これは、左手は麻痺じゃないね。硬化だ。おそらくこれも呪いだろう。」


そう言われて左手の甲を右手の甲で叩いてみると、コンコンコンと音が鳴った。

まるで石を叩いているみたいだ。

麻痺じゃなくて硬化なら完全に呪いだな。

これからどうしようか。

いくら回復しようが痛いものは痛いし、食べられたらおしまいという可能性もある。

あくまで回復は増強だ。

捨て身の攻撃などできない。

更に片手も使えないとなると、もうおしまいだな。


「解呪する方法はないんですか?」

「どうだろうか。僕も世界の全ての村、土地を回ったわけじゃないから無いとは断言できないが、僕が知る限りではそんな方法はなかったね」

「時間はかかるだろうがもし本気で解呪したいなら旅に出てみることをお勧めするよ。」


どうしようか。旅に出るにしても俺は魔法使いじゃ無いし、魔物に遭遇してしまえば終わりじゃないか。

 

「とりあえず夕飯にしようか。」


ここは窓がないからわからなかったが、夜だったらしい。

そういえば荒廃した町には絶対ないような綺麗な家だな。

椅子はボロっちかったけど。

まぁ細かいことは後で決めよう。

今は目の前の夕飯(ごちそう)を食べ尽くす。

そのことに全力を尽くそう。

初めて連載致します、Eiと申します。是非感想の方、お願いします。

更新は月曜日と水曜日と金曜日が定期更新で調子が良ければそれ以外の日にも出します。

次回予告:第二話多すぎる呪いと魔法 デ○エルスタンバイ!


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