開始直後の3カウントの巻
『我が王国の未来を担う三人の王子がリングに上がります!長男マッチョ、次男セイギ、そして三男シューター!』
「お前たちの実力はわかっている。女だからとか小規模のギルドだからなどという理由で手を抜くことはない。本気で殺りにいくよ、いいんだね」
上下青い装備で統一しているセイギ王子は私たちに全力で向かっていくことを予告する。もちろんそれで構わないけど、私たちの作戦通り試合が進めばその機会があるかどうか……。
セイギ王子は真面目だった。ところが残りの二人が集中できていない。マッチョ王子は立会人席にいるマキに対して叫ぶ。
「大聖女様―――っ!あなたに釣り合う男であることを証明してみせます!どうか私の戦いから目を逸らさないでください!」
「……………」
マッチョ王子は気がついていなかった。目を逸らすどころか、マキは最初から王子のことを全く見ていない。声すら届いていないのだから、絶望的な戦いになりそうだ。そして王子にとって最大の敵は私だ。マキは私だけを見ている。
「キミがサキー……美しい女剣士だと耳にしていたけど、想像を遥かに超えてきたね」
「………ハァ?」
「もっとキミのことを知りたいな。この試合が終わったらいっしょに食事に行こうよ」
シューター王子の狙いはサキーだった。いつの間にか持っていた小さな赤い花束をサキーに渡し、そのまま手にキスをしようとした。
「……がっ!!痛っ!?」
ところが直前でサキーの手は逃げていった。しかも渡された花はシューター王子の頭を殴りつけるために使われた。花束はボロボロになってリングに散らばった。
「残念だが私はお前に興味がない。いくら人気があっても中身が薄い人間なんかどうでもいい」
「………気が強いね。ますます好きに……」
「これ以上話す気はない。お前は王の息子である以外全く取り柄がないただのクソガキだ。黙っていろ」
花束で攻撃されても笑顔だった王子の表情が怒りに変わっていく。サキーの暴言はとてもひどいもので、我慢できなくても仕方がなかった。
「中身がないのはキミだろうが!剣聖になれず、弱小ギルドでお山の大将、闘技大会では大聖女様に惨敗!偉そうに振る舞っているがキミは小物だ!」
「………その通りだ。だからこそ本物がわかる。私やお前とは違い、真に崇められるべき人間が」
「………!!」
私を見てサキーが微笑んだ。それに気がついた王子は怒りを私に向けるようになった。睨みつけられている。
(これで二人目か………)
マッチョ王子に続き、シューター王子の恋敵も私だ。暗い道を一人で歩けなくなった。
「ボクの実力を教えてあげよう!こちらの先鋒はボクだ!サキー、キミでもいい。キミが過大評価する女でもいい。かかってこい!」
「シューター!シューター!」 「シューター様!」
この歓声では二人の兄も先鋒を譲るしかない。サキーがシューター王子を煽らなくても、目立ちたがりな彼が最初に出てくるのは予想できていた。
「ならばこっちはこいつだ。行け!」
「………は?」
私とサキーはリングの外に出た。残ったのはマユだ。
「こんな試合、どうでもいいんだ。お前たちも究極龍の卵もな。勝っても負けてもいいとなれば、こいつに経験を積ませるのが一番だろ。なあ?」
「そうだね。マユの素質は私たち以上で、足りないのはリングでの実戦。いい機会だよ」
「ありがとうございます!頑張ります!」
勝敗度外視でマユに試合を託す。眼中にないと言われたも同然のシューター王子はますます怒った。
「弟よ、落ち着け。まずは様子を見ていくんだ。あのスライムがどんな戦い方をするのか確かめてから攻撃すればいい、じっくり攻めろ」
「………わかっていますよ」
その助言は届いていない。熱くなったまま、いきなり派手な大技を出そうとしている。
「ふ――――――っ」
マユは初めての大舞台でも冷静だった。これなら打ち合わせ通りに動いてくれそうだ。
「それでは両チーム、正々堂々と戦うように!」
『三対三ルールのトーナメントが始まります!誰か一人が敗れた時点でチームも敗退、交代のタイミングが重要になります!』
「………始めっ!!」
審判が開始の合図を出したと同時にシューター王子が突進した。マユを早々に脱落させて私たちを引きずり出すつもりだ。
「キミに用はない!この技で……」
「ふんっ!」
頭を掴もうとしてきた大雑把な攻撃を避けて、マユは相手の両足を狙った。どう仕掛けてきたとしても足から崩すと決めていた。
「なっ……うおっ!」
大技をかわされた直後だから隙だらけだった。王子はあっさり倒れ、両肩がマットについた。
「よしっ!審判っ!」
マユは王子の上に乗り、スライムボディで上半身が動かないように固定した。足を使って逃れようとしても無駄だった。
「ワン!ツー……スリー!」
『き、決まった!?始まってまだ10秒!3カウントが入ってしまいました!』
勝負が決まってもしばらく大闘技場は静かだった。私とサキーもリングに入り、チームとして勝ち名乗りを受けている姿を見てようやく何が起きたか理解したようだ。
「なんだそりゃ、ふざけんな!金返せ!」
「そんな勝ち方ありえねーだろ!客のことを考えろ!」
この大ブーイングは予想できていた。激しい攻防や華麗な技の応酬を楽しみにしていたのに、押さえ込んで即終了では怒られる。しかも人気のシューター王子が負けたのだから暴動寸前だ。
「やり直しだ!これでは誰も納得しない!もう一度やらせろ!」
シューター王子も審判に詰め寄ってノーカウントを主張した。そうだそうだと観客席も騒がしくなり、流れが仕切り直しに傾いていたその時、立会人席にいたあの人が立ち上がった。
『見苦しい真似はおやめなさい、シューター王子!3カウント制でいいとあなたも合意したではありませんか!自分が負けたらなかったことにするのですか?』
「ト、トーゴー!」
『審判がマユ選手の勝利とした、その決定は尊重されなければなりません!リング上の公正と公平が権力や人気で曲げられてしまっては、ジェイピー王国の名が汚されることになります!』
リングでの戦いに身分による優遇はない。権力やお金でやりたい放題できるのなら、闘技大会も無価値なものになる。トーゴーさんの言葉通り、この王国の評判が地に落ちてしまうだろう。
『ですからシューター王子、それに観客の皆さん。この結果を受け入れなさい。そして勝者を称えるのです!』
「くっ………何も言い返せない。ボクの負けだ!」
シューター王子が敗北を認めると、観客席も静かになった。試合の内容や結果が気に入らなければそのたびにやり直し、そんなことをしていたらそれこそ無法地帯になると気がつき、騒いでいた自分たちを恥ずかしく思っているようだった。
(ありがとう、トーゴーさん。やっばりあなたは素敵だな)
大人数が相手でも正しいことを正しいと言う、真の正義と勇気に私も倣いたい。トーゴーさんを疑っていたみんなを、あとでたっぷり叱っておこう。
『スポイラー・トーゴーの巻』の後書きで予想したG1 CLIMAXの答え合わせ、Bブロック編です。新日本プロレスに興味がない方は読まなくていい内容になっています。
予想……竹下と辻は決勝トーナメント進出濃厚、残る一枠を成田、フィンレー、ボルチンで争う。
結果……フィンレー、竹下、辻が進出。予想通り。
個々の選手の予想と結果
①ボルチン……勝敗の予想が難しかった。不戦勝もあるが初出場で8点も取ったのだから、来年は勝ち越しそう。
②ファンタズモ……決勝トーナメントに残るイメージが全くなく、やはり最下位。今後はどうするのだろう。
③後藤……期待通り見せ場たっぷりだったが敗退。またYOSHI-HASHIとのタッグ戦線に逆戻り。
④辻……これだけ推されているのだから決勝トーナメント進出は当たり前。竹下とフィンレーに勝って決勝戦まで進むはず。
⑤コブ……TV王座がマイナスだと書いたが、やっぱり敗退。適当な相手にベルトを渡して、もっと上を狙ってほしい。
⑥HENARE……NEVERが足枷だと書いたが、やっぱり敗退。こちらはこのベルトを守り続けてほしい。
⑦上村……ユニットを裏切るかもと予想したが、そんなことは全くなかった。負傷がなくても最終戦のボルチンには負けていたような気がする。
⑧フィンレー……優勝してもいい立場で、BULLET CLUBから唯一の決勝トーナメント進出。ただし勝ち方がよろしくないので、優勝できるか怪しい。
⑨成田……EVILより好成績で決勝トーナメントに行くかもと期待していた。しかし最終戦で敗れ、拷問の館は二人とも敗退してしまった。
⑩竹下……最低でも決勝トーナメントには進むだろうと思ったが、他団体からの初出場選手をどう扱うのかと冷静に考えて少し不安だった(ジェイクは負け越したし)。
決勝トーナメントの予想
鷹木対オーカーン……鷹木の勝ち
ザック対鷹木……ザックの勝ち
竹下対辻……辻の勝ち
フィンレー対辻……辻の勝ち
ザック対辻……ザックの優勝。そのまま王座戦で世界ヘビー級のベルトを獲る。辻が優勝しても内藤を倒すと思う。
決勝トーナメントの理想
偉大なるKOPW保持者のグレート―O―カーンが優勝、新日本プロレスを支配しプロレス界の頂点に立つ。オーカーン様が優勝したらスポンサーのFGOは英霊として登場させるべきだと言っても過言ではないような気がする。




