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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第二章 スポイラー・トーゴー編
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フェロモン攻撃の巻

「……まさかぼくたちがこんな役割だなんて………」


「まあまあ。今までだったらこんな大事な仕事のメンバーに選ばれることもなかったんだから、進歩してるよ」


 ラームをなだめながら先へ進む。私たち二人は荷物持ちとして最後尾を歩いていた。ハウス・オブ・ホーリーのエーベルさんとシヨウさんを守らなきゃと思っていたら、私が守られる側になってしまった。



「あの……私たちも手伝いましょうか?」


「ありがとうございます。お気持ちだけで大丈夫です」


 エーベルさんは私たちにも気を配ってくれる。こういう人が一人いるだけでチームの空気は爽やかになる。


「見た目だけですけど……エーベルさんは魔法、シヨウさんは体術が得意そうですね」


「その通りです。まだまだ未熟ですが……」


 二人はB級冒険者だ。私たちはA級だからこっちが格上と考えるのは大間違いで、人がいないからSとAしかいない弱小ギルドと普通のギルドを比べることはできない。



「魔物は雑魚ばかり、しかも俺たちの強さを察して逃げていく……以前と全く変わらないぞ」


「違うのは最下層、ボスだけなのか?」


 メンバーたちは警戒を緩めていった。笑いながら世間話を楽しむくらいの余裕を見せている。


「…………」


 そんな中でサキーだけはいつでも剣を抜けるように集中していた。やっぱりこの中ではレベルが上だ。

 


「金になる素材もほとんど落ちていない。荷物持ちは楽でよかったな」


「まあ……そうですね」


 当然私たちは本職じゃない。戦利品が増えたら大変だった。結局道中では何事もなく、ついにダンジョンの主が待つ部屋の扉の前まで到着した。ちなみにマップを持った先導役はサンシーロさんとコーチンさんで、私たちのギルドはサキー以外全員雑用係だった。



「よし、開けるぞ。いつでも戦えるように……」


 皆がもう一度戦闘態勢に入った。そして慎重に扉を開けると、洞窟の最深部だというのに眩しい光が私たちを出迎えた。


「目が………!むっ、あれはリング!」


 ゴキブリとハエの家と同じように、部屋の中心にはリングがあった。魔族もこの戦い方が定着している。




『ようこそ、紳士と淑女の諸君!我々のフェロモンの前にすでに発情しまくっているだろうがまだ我慢だ!』


 闘技大会でも使われていた、声がよく通る魔法だ。観客はいないのに大きなイベントのように振る舞っている。


『これから始まるのはただの試合ではない……互いに絶頂し楽園に旅立つ狂乱の宴!さあ、ショータイムの始まりだ!』


 奥の扉から三人の男たちが出てきた。それぞれ体型は違っても、凄い筋肉なのは全員同じだ。普通の人間に見えたけど、近づいてくると魔物独特のオーラが感じ取れた。


 

『二対二での戦いを申し込む!こちらからはワタシ『ダンディーノ』と、この『セクシー・マシーン』が出る!』 


「そうか……そっちのセクシー・マシーンとやらは筋骨隆々だが頭が悪そうだな。ダンディーノ、お前は筋肉以上に無駄な脂肪が目立つ。楽勝の相手だな」


「お前らごとき、私たちが倒す!」


 サンシーロさんとコーチンさんがリングに上がり、タッグマッチが始まった。この試合は早々に信じられない内容になった。



「ウゲッ!!ウ〜〜〜ン………」


「まだ眠るのは早いぞ!ワタシのフルコースを味わえ!」


 サンシーロさんが唇を奪われダウン。倒れているところを無理やり起こされ、今度はダンディーノの下着に頭がすっぽり入った状態だ。


「ギャ――――――!!」


 リングの下ではコーチンさんが服を脱がされている。まともな攻撃より何倍も厄介な攻めが続いた。



「ああ、素晴らしい!この『ファンタスティック・ドリーマー』がしっかり記録に残しておきます!」


 リングの外にいる変な道具を持った男が興奮している。どうやらあれは目の前の出来事をもう一度見ることができる、魔力の込められた道具だ。どういう原理でそうなっているのか全く分からない。


「素晴らしい光景!美しい男色の世界!」


 謎の魔具よりも三人の男たちの戦法が目立ちすぎている。負傷者続出ということで来てみたけど、これだと精神的ダメージのほうが重そうだ。



「グへッ!」 「うがが………」


「あの二人は完全失神!おい、女ども!次はお前たちが行け!男色家の連中は女には興味がないはず!」


 誰もリングに上がりたくなかった。酷い目に遭うのがわかっているからだ。仕方なく私が行こうとすると、サキーとラームに止められた。


「待て、ジャッキー!あんな下劣なやつらと戦わせるわけにはいかない!」


「汚れちゃいますよ!やめてください!」



 私たちが行かないのを見て闘魂軍の兵士たちが嫌々リングに向かうと、やはり瞬殺だった。ドリーマーの奇襲を受けて無理やりリング内に放り投げられ、あとは猛獣の檻に入れられた餌のようだった。


「うわ〜〜〜っ!」 「やめてくれ!」


「フ―――――――――!!セクシィ!!」


 セクシー・マシーンによる拷問が始まった。サキーとラームが目に毒だと私を強引にリングから遠ざけたから、何が起きたのかは見ていない。ただ、魔物たちの歓喜の声と兵士の悲鳴はその地獄を想像させるのに十分だった。



「ワタシたちはレディの挑戦も大歓迎!でも興味がないから楽しく遊ぶのは無理だね」


「一瞬でダウンさせてやりましょう!首の骨を折り四肢を切断するフルコースでございます!」


 真面目に戦えばとんでもない強敵なのは、ここまでの動きを見ればわかる。私たちには全く魅力を感じないようで、惨殺するというのも嘘ではなさそうだ。



「どうする?サンシーロたちを生贄にして逃げるか?」


「だめでしょ。助けて連れ戻さないと……」


 男色攻撃も正攻法も隙がない相手にどう立ち向かうのか。この戦いの決着は意外な人物がつけた。




「おいおいお前ら!いい加減にしろ!」


「あ?ワタシたちの邪魔をするな!」 


 怒りながら奥から出てきたのは正装の小太りな魔物だった。年齢はお父さんと同じかそれより上に見える。

 

「ふざけんなよ!いつもいつもこんなアホなことしやがって!魔王様も見てるんだぞ、各地のダンジョンでの戦いを!」


 魔族は裏から侵略を進めていた。これから各地で異変が起きるかもしれない。


「これじゃあ呆れて見てくれねーよ!俺の幹部昇進が遠のく一方じゃねーか……がっ!!」


「お前の出世と我々の戦いは関係ない。人のせいにする前に自分で努力すべきでしょうが!」


 なんとダンディーノが彼らの上司と思われる魔物を攻撃。そのまま三人で取り囲んだ。



「な……仲間割れか?」


 ここで入っていっても巻き込まれるだけだ。私たちはリングから離れて様子を見ることにした。

 辛い時はフェロモンズを見ろ!(もう解散してるけど)あれほど完成されたユニットは今後現れるかどうか……。


 ダンディーノ……男色先生

 セクシー・マシーン……飯野君

 ファンタスティック・ドリーマー……夢ちゃん

 小太りの魔物……今林GM

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