表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第二章 スポイラー・トーゴー編
74/273

囲まれたジャッキーの巻

 ダブジェ島に着いた私たちはさっそく名物の温泉巡りに向かった。男女で分けられているところばかりで、唯一の男性であるお父さんが一人になってしまう。だから夫婦なら混浴できる場所を調べて、お母さんがお父さんといっしょに行動することになった。


 二人がいなくなっても私たちはかなりの大人数だ。マキとルリさん、ラームにマユ、そしてサキーが私といっしょにいる。


「まずは……あそこなんかよさそうですね」


「ええ。早速向かいましょう」


 たくさん温泉があるから、良質なところでもたまたまお客さんがいない時間がある。私たちはちょうどそれを見つけることができて、いいスタートだ。




「え――――――っと………」


「遠慮しないでください!」 「さあさあさあ!」


 のんびりリラックスするはずが、早速私は困っていた。まずは身体を洗おうとしたら、みんなが私に迫ってきた。


「お疲れでしょう。わたくしたちに身を委ねてください。丁寧にお流ししますので」


「そうだよ、安心して!」


 全員で私の身体と髪を洗うつもりのようで、すでに囲まれて逃げ場はない。



「……そんなに汚い?臭くないと思うんだけど」


「い……いや、そうではない!いつも頑張っているお前を労いたいだけだ!そ…それ以外の考えは何もないぞ」


 サキーはなぜか鼻血を出していた。外で休むように勧めても、ここに残ると譲らない。



「……じゃあお願いしようかな」


 嫌な予感はしていたけど、みんなの好意に甘えることにした。結果から言えば、それが大失敗だった。






「いや〜〜〜!素晴らしいですね、温泉って!」


「疲れが取れて、力が湧いてきました!」


 みんなとてもつやつやして、元気たっぷりだ。


「……………」


 私だけいろんなものを吸い取られたようになっていた。何があったのか………詳しいことは秘密にする。



「ちょっとやりすぎちゃったかもしれませんね……はい、ミルクでも飲んでください」


「………おいしい」


 さっぱりした気分にさせてくれた。まだふわふわしてるけど、ようやくいろいろ落ち着いてきた。


「じゃあそろそろ次、行ってみますか。またお湯に入る前にはしっかり身体を洗って……」 


「もういいよ!」




 

 この温泉街ではほとんどの人が癒やされ、緩んだ顔になっている。ここにいる間は日々の悩みなんて忘れてしまう証だ。


「………はぁ…………」


 だからこんなに苦しそうにしている人は目立つ。体調が悪いのではなく、難しい問題を抱えて潰されそうになっている様子だ。


「こんにちは。だいぶきつそうですけど……」


「あ……どうも。ご心配おかけしてすいません」


 お湯に入らなくても熱気や蒸気で汗を流せる場所がある。この人の隣になったから話しかけてみた。



「気分転換のつもりで来たのですがつい………あれ?あ、あなたはジャクリーン・ビューティさん!?闘技大会で準優勝の実力派!」


「実力派だなんて……照れますねぇ、へへへ」


「私は『リアス・マシガナ』。仕事のことで気持ちが沈んでいましたが、あなたのような方にこんなところで会えるなんて……元気が出てきました!」


 私と同い年くらいに見えるのにここまで追い詰められているなんて、かなり厳しい仕事を任されているようだ。逆に私はもっと悩んだほうがいいかもしれない。



「……おいジャッキー!誰だ、その女は?」


「お姉ちゃん……なにしてるの?」


 離れた場所にいたはずのサキーとマキが目の前にいた。紹介しようと思っていたからちょうどよかった。


「ああっ!大聖女マキナ様に剣の達人サキーさんまで!こ、腰が抜けちゃいそうです!み、み、皆さん!握手してもらってもよろしいでしょうか!?」


「え?か、構わないが」 「それくらいなら……」


 なぜか不機嫌そうだった二人もマシガナさんの勢いに押されていた。最初はとても沈んでいたけど、明るい笑顔になってくれてよかった。




「超大物たちと出会うことができて、これで運気も変わるはずです!ありがとうございます!」


 ラームたちも合流して、マシガナさんを中心に全員で足だけお湯に浸かっている。


「仕事のことで悩んでいるとお聞きしましたが」


「はい。私はこの島で冒険者ギルドを運営しています。ですが苦しい赤字経営が続き、浮上のきっかけすら……」



 まさかの経営者だった。しかも冒険者ギルド。苦境の原因はもしかすると、お父さんの知り合いが新たに開業した『ザ・グレーテスト』か。


「仕事を取られたんだろ?新しい強豪ギルドに」


 サキーがはっきりと言う。それに対しマシガナさんは自嘲的な笑いを見せた。



「新しい強豪……ザ・グレーテストのことですか?」


「はい。優秀な冒険者を揃えた資金力のあるギルドだと聞いています」


「………私がザ・グレーテストの経営者ですよ」



 まさかの事実に私たち全員が驚いた。ダブジェ島のど真ん中を突き進んでいるはずのギルドのトップがあんなに曇っていたなんて、いったい何が起きているのか。


「お父さんは昔からの知り合いがやっているって言ってたけど……」


「それは私の父です。最初は父が経営していたのですが、あまりに厳しい毎日でとうとう倒れてしまい……私が二代目となりました」


 すでに地獄のど真ん中にいるようだ。詳しく話を聞いてみよう。

 ジャッキーがどこまで、どれくらいやられたのかは想像にお任せします。


 マシガナを逆に読むと……?(ゴマシオ)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ