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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第二章 スポイラー・トーゴー編
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誘いに乗らない女たちの巻

 荷物や隊列、作戦など最後の確認を終えて洞窟に入ろうとすると、後ろから誰かが私たちに近づいてきた。


「新発見のダンジョンですか……これは面白そうですね」


 この声は覚えている。また会いたいと思っていた人だ。



「トーゴーさん!この間はありがとうございました!」


「こちらこそ……おかげさまで助かりましたよ」


 アンデッドの村で力を合わせて大きな仕事を成功させた、頼れる大人の女性トーゴーさんだ。こんなに早く再会できるなんて嬉しいサプライズだ。



「私たち、これからこのダンジョンに行くんですが……トーゴーさんもいっしょにどうですか?」


 この人ならぜひ仲間になってほしい。私たちに的確な助言をしてくれるはずだ。


「いや、このあと用事があるので……申し訳ありませんが、またの機会にさせてもらいます」


「あっ……そうですか。こちらこそすみません」


 今日中に戻れないかもしれないし、さすがに断られて当然だった。気楽に同行できる場所でもない。



「ジャッキー!そろそろ行くぞ」


 サキーたちは遠くから軽く挨拶するだけで、私とトーゴーさんの話の輪に加わろうとはしなかった。出発を急かしてくるし、何か気に入らないことでもあるのかな?

 

「また今度、ゆっくりお話させてください!」


「もちろん。楽しみにしていますよ」


 トーゴーさんと別れて、いよいよダンジョンに挑戦だ。序盤から大きな山場がありそうだ。



(……大聖女の姉………この厄介なダンジョンをどう攻める?期待を裏切らないでもらおうか)






「………一歩目から注意を怠るなよ」


「魔物よりも罠に気をつけましょう!」


 ゆっくり、慎重に階段を下りる。特に何もなく地下一階に足を踏み入れた。



「あれ?宝箱がある」


「何人もここを通ったはずなのに誰も開けないなんてありえるか?私の魔法で見てみよう」


 階段のすぐそばに宝箱が置いてあった。怪しいものは触れる前に安全かどうか確認する。サキーが使える簡単な魔法でも、中に罠が仕込まれていたり宝箱に化けた魔物だったりしたら危険を知らせてくれる。


「………罠はない。魔物でもない。しかし宝が入っている反応もなかった」


「じゃあ空っぽってことですか?それなら放っておいて先に進みましょう」

 

 私たちはその宝箱に触れなかった。すでに中身は回収されたか、最初から何も入っていなかったと考えた。




「あの道はなんだろう………」


「狭いですね。ぼくたちなら楽に行けますが、ジャッキー様はどうでしょう」


 脇に逸れる狭くて汚れた道を見つけた。気になるところだけど、私の場合は胸やお尻が邪魔して通るのに苦労しそうだ。


「これが正規のルートとは思えませんし、ひとまず無視しますか?」


「そうだね。この先が行き止まりだったらまた戻ってくればいいよ」


 好奇心を煽るような細い道を後回しにした。改めて挑戦する時に調べてみてもいい。ただ、私は行ってみたいとはあまり思わなかった。魅力的なものは何もないように感じたからだ。



「宝箱がたくさん転がっているな。全員これにやられて逃げ帰ってきたようだ」


「また細い道がある。そっちのほうにとんでもない試練が待ち構えているとか?」


 私たちはまっすぐ広い道を進んでいった。お守りのおかげか、魔物は全く現れなかった。対処のしようがない罠もなく、順調すぎて違和感があるほどだ。


「宝箱を調べる魔法は使えない、貴重な宝があるかもと危険な道に入る……それでは脱落して当然ですね」


 最低限の対策もなく欲のままに突っ走るのでは序盤での撤退は避けられない。ここまで失敗した人たちは冒険者とは呼べず、楽してお金を稼ぎたいだけの集まりだったようだ。


 

「階段だ……これでこの階は終わりかな?」


「ついに何もなかったな。どれほど深いのかまだわからないが、今のところ一本道だ」



 迷わずに地下二階へ。ここからが本番だ。最初はすんなり通過できてもここは……と思っていたら、意外すぎる光景が出迎えてきた。


「……リングだ!どうしてこんなところに!?」

 

 私たちが使っているものとほとんど変わらないリングが通路の真ん中に堂々と陣取っている。その先には立派な扉があった。


「リングはひとまず後回しにするとして……あの扉の先、もしかしてこのダンジョンのボスがいるんじゃないのか?」


「だとしたらとても短いダンジョンですね。しかしこの気配……かなりの強敵が待ち構えているのでは?」


 巨大なドラゴンか、荒れ狂う野獣か……力でも速さでも圧倒してくる魔物が挑戦者を待っている。



「開けたらいきなり炎や槍が飛んでくることもありえますからね、気をつけましょう」


「わかってる。ここは慎重に……ん?開かない」


 押しても引いても駄目だった。サキーに代わっても扉は全く動かない。


「どこかに仕掛けがあるのか?解除しないと先に進めない謎が……」


「鍵でもかかっている感じですね」



 中から閉められているようだ。それなら……。


「すいませーん!開けてもらえませんか?」


「………おいっ!開くわけないだろそんなので!」


 普通の家とダンジョンの入り方が同じなわけがない。我ながら間抜けなことをしたなと苦笑いだった。




「………え?お客さん?この家に?」


「どなたですか?名前と用件は?」


 ところがこれが正解で、人の声が二つ返ってきた。



「………確かに家って聞こえましたよ」


「ダンジョンじゃなくて……誰かの家なの?ここ」


 思い描いていた冒険とは全く違う展開続きだ。果たしてどんな結末を迎えるのやら。

 夢をありがとう髙木三四郎 復帰する時は無人島プロレス(対戦相手は当然鈴木みのる)でお願いします

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