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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第一章 大聖女マキナ・ビューティ編
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少女ラームの巻

 私が王国最強になれると力強く叫んだ小さな女の子。屋敷の中、食卓にまで入ってきたのにどうやら誰もこの子を知らないようだ。


「……君は誰だね?そもそもどうやって侵入した?」


 正体はもちろん、厳重な警備をどう突破したのかも気になる。敵ではなさそうだけど、いつ何をしてきてもいいように私たち家族は身構える。お父さんが私を、お母さんがマキを守るようにして女の子がどう出るかを待った。



「自己紹介が遅れました、ぼくの名前は『ラーム』。家も親もない孤独の身です」


「ラームちゃん……なぜ私たちの家に入ってきたの?ジャッキーのことを知っているようだけど、まずは入り方から教えてくれるかしら」


 ラームはお母さんの質問に頷くと、左手の親指を噛んだ。するとその瞬間、ラームは私たちの目の前からいなくなった。


「消えた!?」 「何をしたんだ?透明になる魔法か!」



 私たちは席を立ってラームを探そうとした。すると何もないところから突然彼女が出てきた。今度は右手の親指を噛んでいた。


「ふ〜っ、危ないところでした。踏みつけられたら終わり、慌てて元の大きさに戻りました」


「戻る……つまり君は自在に身体を操れるのか!」


「いや、小さくなるだけです。限界まで小さくなればまるで消えたかのように見えますし、狭い隙間も突破できます」


 確かにこの能力があればどんな場所にも入れる。弱点は本人が言うように小さくなりすぎると危険なことか。



「で……ジャッキーが強くなれるというのは?」


「はい!そこが本題です!ぼくは見たんです、このお方が街を襲う魔物を瞬殺したところを!あの邪道はS級冒険者チームを全滅させるほどの力がありましたが、ジャッキー様にとっては敵ではない!格が違いすぎました!」


 誰もいないはずだったけど、どこかで隠れて見ていたようだ。気配を消すのも得意らしい。


「ぜひジャッキー様のすぐそばでお仕えして伝説が創られるのをこの目で見たい!そしてぼくも強くなりたい!だからこっそり馬車に乗って同行させていただきました!」


(ぜ〜んぜん気がつかなかった………)


 外で戦っていたときはいいとして、狭い馬車のなかで違和感すらなかったのはどうしようもない。こんな私が創る伝説なんてたかが知れている。プダンさんは見張りのために馬車の外にいたから、駄目なのは私だけだ。



「ジャッキーが倒した?本当か?」


「……まあ、たまたま運がよかったというか……」


 ラームを嘘の証人にしないためにも、正直に話すしかなかった。危ない真似をしたけど、私もそこそこ強いとわかってもらえれば今後のためにもなる。私たちの言葉を信じたお父さんはしばらく黙り、考えた末に結論を出した。



「そうか………ジャッキーはガラスの器やダイヤモンドのように大事に扱わねばならないと思っていたが……強くなるための訓練、許可を出してやってもよさそうだ」


「………やった!」


「ジャッキーの自尊心のためにもいいことだわ。ちょうどここに助け手になれる新しい奴隷もいる」


「………あ、ありがとうございます!」


 私の挑戦を認めるだけでなく、ラームを雇うことも決めてくれた。家族も住む家もないと話したラームはかなり痩せている。私たちが大切に育てよう。



「え―――っ?お姉ちゃん、だいじょうぶかなぁ?わたしがいるからお姉ちゃんが頑張る必要なんてないのに……」


「そうはいかないよ!マキはこれから大聖女としてますます忙しくなる。だからこの家は私が守れるようになる!」


 マキは私が傷つくのを心配している。私がしっかりすればマキも大聖女としての仕事にもっと打ち込める。私の頑張りがビューティ家だけでなく王国のためにもなるのだから、責任は重大だ。


「よし!さっそく特訓だ!ラーム、庭に出よう!」


「はいっ、ジャッキー様!」


 聖女の力や特別なスキルがなくても努力を重ねていけば大聖女の姉に恥じない人間になれるはずだ。まずはラームと二人で少しずつ信頼を勝ち取ろうとしたところで、いきなり事件が起こった。




「しつこいやつだな!そんなやつ知らないと何度言ったらわかるんだ!見たことも聞いたこともないぞ!」


「お前らが匿ってるのは確かなんだ!早く出せ!」


 門番たちと大柄の男の人が言い争いをしていた。その光景を見たラームは家の中に戻ろうとし始めた。


「あれ、どうしたの?」


「………とてもまずいことになりました。まさか………」


 がたがたと震えている。ラームは置いて、私だけで門に向かって揉め事の様子を見に行った。



「我々を含め、ビューティ家の奴隷は全員王国から遣わされた選ばれし者たちだ。お前のような人さらいの奴隷商人から買うことも、奪うこともありえない。それに大聖女様がいるのだから、たとえ幼いとしても素性のわからない人間をこの敷地内に入れるなど考えられないことだ!」


「いや、絶対にガキが一人いる!この俺『グレン』は自分の商品を追跡できる能力がある。正式に売買が成立するまではどこに逃げても連れ戻せるんだ!早く出さないとお前らを殺して中に入らせてもらうぞ!」


 

 だいたいの事情はわかった。あのグレンは悪いやり方、誘拐や拉致といった手段で無理やり人を奴隷にして売っている。人間として論外な男の取引相手もきっとどうしようもない連中ばかりで、それを恐れたラームが逃げ出したといったところか。


(……私の新しい家族を守る!)


 まずは確認だ。もしラームがお金を貰ったのに逃げたのなら引き渡さないといけない。とはいえグレンが人さらいと言われても否定しなかったことを考えれば私の勘違いではないはずだ。話し合いで帰ってもらうか、実力行使で追い払うことになるだろう。

 ラームはミ◯トくん枠になる予定です。

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