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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第一章 大聖女マキナ・ビューティ編
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補欠選手の巻

「クソみたいな試合だったな……しかし勝ちは勝ちだ」


「こりゃあ準決勝が楽しみになってきたぞ」


 試合中は罵声だらけだった観客席が、今は意外と落ち着いていた。私たちがリングを下りると拍手が起こったほどだ。



「どうだジャッキー!私たちが用意した完全防御の鎧と兜、素晴らしかっただろう!」


「……全然動けなくなることを除けばね」


「ジャッキー様!おめでとうございます!何より無傷で戻ってきてくれて……よかったです!」


 飛びついてきたラームを抱きとめた。余程心配だったのか、小さく震えていた。



「……ジャクリーン様……」


「ルリさん!応援ありがとう……おっと」


 ルリさんも私に抱きついて、顔を埋めた。直前に人が死ぬ試合を見せられているのだから不安になるのも当然だった。


「まだ……戦うのですか?次は………」


「なんとかなるよ。今みたいにね」


 ここまで来たらこの謎の強運を信じよう。



「………」 


 一応互いに勝ち残っているライバルということもあって、サキーはこの歓喜の輪に入らない。それでも遠くからおめでとうと言ってくれている気がした。


(マキは………どこを見てるのかな)


 私が劣勢になったり観客からひどいことを言われたりしたらマキが怒って乱入しないか、それが心配だった。でも昨日から感情のコントロールがうまくいっているようで、大人しくしていた。この大舞台で大聖女としての自覚が芽生えているのかもしれない。




「次は準決勝……あれ?王様だ。しかも……」


 司会役ではなく王様がリングに上がった。その後ろに20人近くが続き、全員昨日の一次予選で敗退した選手たちだった。


『一回戦は激しい試合ばかりだった。準決勝でも事故が起きる可能性を否定できない!そこで今から補欠を決める大乱闘を行う!』


 最終予選が中止になったせいで今年はやらなかった大乱闘。派手で荒々しい人気の戦いだけに残念がる声が多かったことへのサービスのようだ。



「毎年あれが楽しみだったんだよ、嬉しいな」


「しかしもう準決勝なのに補欠選手を決めるのか?」


 準決勝を勝っても決勝で戦えないほどのダメージがあれば補欠の出番だ。でもそれだと一次予選で落ちた選手が一回勝っただけで優勝なんてこともありえるのが問題だ。


(……まあマキなら楽勝だろうけどね)


 くじ引きに失敗するような選手にマキが負けるはずがない。だから心配はしていない。無意識にマキと決めつけたけど、サキーが決勝に進出することも……いや、難しいか。


 

『一次予選で運悪く敗退した者たちによる大乱闘は最後の一人になるまで行われる!ギブアップ、戦闘不能に加え一番上のロープを越えてリング下に落ちても失格!では全員リングに上がれ!』


 これから始まるというところで、警備の兵士たちが私のところへやってきた。


「すぐには終わらないでしょうから準決勝を戦う選手の方々は裏の控室で休んでいただきます。案内いたしますのでどうぞ」


「えっ?は…はい。わかりました」


 私とラームは控室に連れていかれた。どうせ大乱闘にはあまり興味がなかったから観戦できなくてもよかった。


 

「あれ?ジャッキーはどこに行ったんだ」


「お姉ちゃんがいなくなった?」


 実は私以外の三人は声をかけられず、私だけが裏に呼ばれた。これは陰謀だった。






「そこまで!勝者、マッチョ・アントニオ!」


『最後は闘魂軍の強者たちを一人で粉砕!第一王子のマッチョ様が見事に大乱闘を勝ち抜きました!』


 補欠選手は王子様に決まった。ところがこの戦いには裏があった。


(見事な演技だったぞ、お前たち)


(ありがとうございます。これで昇進させてもらえるんですね?)


 最初から王子様が勝つことが決まっている試合だった。闘技大会で八百長は厳禁のはずなのに、本戦ではないからいいのか、王族なら何でもありなのか……しかもこれは大きな仕掛けの序章に過ぎなかった。



『ここで発表です!大会運営側の都合で準決勝の第1試合をフランシーヌ対ジャクリーン、第2試合をマキナ様対サキーとすることになりました!当初の予定と試合順を入れ替える形ですが……フランシーヌ選手、よろしいですか?』


 盛り上がる試合を最後に残しておきたいのだろうと皆が思った。今日は準決勝までで終わりだから、大聖女が一日を締めるのが理想の形だ。


「はい、私は構いませんが……」


『ではジャクリーン選手は……おや?ジャクリーン選手がいない!ついさっきまでそこに座っていたはずなのに……姿を消してしまいました!』


 ここまで王家の筋書き通りだ。再び王様が観客たちに語りかけた。



『彼女は恐ろしくなって逃げてしまったのだ!無理もない、敗れたら死んでしまうかもしれない戦いだ!一回戦こそ頑張ったものの、準決勝と決勝はさらなる強敵が待っている。最初から彼女では無理だった』


 そして王子様を隣に立たせ、皆に推薦する。


『しかし代わりならここにいる!たった今大乱闘を制した我が息子、マッチョ・アントニオが!臆病な愚か者よりも勇気ある英雄こそ戦いの場に立つべきだと私は思う!』


 力強い言葉に大きな歓声が沸き起こったという。皆が選手交代を待ち望んでいた。


(……な?昨日焦って敗者復活戦をやらずによかっただろう?ここが最善だった!)


(さすが父上!これで私の優勝は確実!準決勝の炎使い対策は王家の防具で万全、決勝まで進めば婚約者同士……あとは流れで勝てる)




 そのころ、私とラームは……。


「いや〜〜〜っ、気が利いてるね。私たちの好きなお菓子ばかり置いてあって……いいね!」


「そのうち誰か呼びに来るでしょう。ぼくが起こしますから寝ててもいいですよ」


「あはは!さっきたくさん寝たばかりだよ」


 外の騒ぎなど知らずに、のんびりくつろいでいた。

 私が生きているうちにDeNAベイスターズの優勝とグレート−O−カーンのIWGP世界ヘビー王座が見たいのじゃ

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