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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第一章 大聖女マキナ・ビューティ編
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決勝トーナメントの巻

『残ったのは8人!この中に私の息子や闘魂軍がいないのは残念だが……早速決勝トーナメントの組み合わせ抽選を始める!』


 敗者復活も最終予選もなし、こんな大会は記憶にない。とはいえ奇跡的に8人の中に入れた。



「……私もお前のように素晴らしい姉であればゴウテンを救えたのか?見殺しにするようなことは……」


「サキーのせいじゃないよ。あそこで声をかけても防げなかったと思う」


 危ないからやめろと言ってもゴウテンが棄権するはずがない。誰がどんな攻撃をしているかわからないのに的確な助言をしてあげるのは無理だ。



「トーナメントを勝ち進むことが何よりの薬になるんじゃないかな」


「………ああ。後悔している暇はない」



 一次予選で使われた箱が再び登場し、マキも私たちと並んで立つ。8人が横一列だ。


「頑張ろうね、お姉ちゃん!わたしとお姉ちゃんで決勝なら最高なんだけどな〜〜〜っ」


「そうだね。でも勝ち負けよりも無事に帰ることを忘れないようにしないと。お父さんたちのためにもね。大会は来年もあるけど命は一つしかないんだから」


 私の事を悪く言われるとマキは熱くなって無理をするかもしれない。平常心で戦えばマキが負ける相手なんかいない。


 


『さあ、組み合わせが決まりました!一回戦第1試合にいきなり大聖女マキナ・ビューティ様が登場します!その相手は邪道な魔物から街を救った英雄、エンスケ!大会後は闘魂軍入りが決まっています』


 私の代わりにオニタを倒したことになっている剣士エンスケ。ここまで勝ち上がったのだから実力もある。マキの有利は確実でも、体格差が少しだけ不安だ。

 


『第2試合は女剣士サキーと武闘家『ヤブサ』!共にS級の冒険者として活躍!剣を武器とする者と己の肉体を武器とする者、勝つのはどちらでしょうか!?』


 決勝トーナメントでは死亡事故を防ぐために魔法の威力は半減以下になり、剣は殺傷力の低いものを渡される。しかし体術だけはそのままだからサキーは攻撃を受けずに戦わないと苦しい。



『第3試合は翻訳家『フランシーヌ』とハチのモンスター人間『ムサシ』の一戦!見た目だけならムサシのほうが圧倒的に強そうですが、フランシーヌもゲンキ像を持ち上げています!』


 いかにも攻撃的で身体能力の高そうなハチ男ムサシと戦うのは、弱々しさすら感じさせる痩せた女の人フランシーヌ。私でも勝てそうだけど、どんな能力を持っているかわかるまでは侮ったらいけない。



『そして最後の第4試合は魔術師『マキシー』とビューティ家の恥部ジャクリーン!やる前から勝敗は決まっているのでジャクリーンは試合放棄したほうが身のためかもしれません』


「コラ―――!ジャッキーだけ紹介がおかしいだろ!」


 私の相手はローブで顔まで覆っている魔女、マキシー。聖女や賢者が光の魔法を得意とするなら魔女は闇だ。呪いや異常、汚染といった不気味な魔法を中心に戦う。身長は私と同じくらい、それ以外何もわからない。



『そして第1試合の勝者と第2試合の勝者が、同じように第3試合と第4試合の勝者が準決勝を戦います!一回戦と準決勝はどちらも明日行われますので選手の皆さんは頑張ってください!』


 休憩時間が入るとしても連闘になる。一回戦で体力と魔力を消耗し過ぎると準決勝を戦う力が残らない。とはいえ私は常に全力でやらないとあっさり負ける身だ。先のことまで考えられない。



「……じゃあ順当に勝ち進めばマキとサキーが準決勝でぶつかることに……」


「いつかはこうなる。なあ、大聖女様」


「遅かったほうだよ。もっと早く戦ってお姉ちゃんにまとわりつく害虫を駆除したかったんだから」


 試合は明日なのに今すぐにでも始まりそうだ。もちろん二人の対戦相手も黙っていない。


「大聖女様!あなたに敬意は払いますが手加減はしませんよ。俺は勝つ!ヴァ―――ッ!」


「そっちの姉ちゃんも準決勝に進めると思うなよ。俺が世の中の厳しさ、教えてやるよ」


 ベテランと呼べる年齢のエンスケとヤブサ。男として、人生の先輩として負けるわけにはいかないと燃えていた。



「フフフフ………」


「フンッ!脆いな……」


(………うわあ………)


 マキたちのグループが熱く盛り上がっているのに対し、私を囲む三人はとにかく不気味だ。フランシーヌは常に静かに笑っていて、ムサシは小さな虫を捕まえては指や歯で粉々にしていた。 



「マキシーさん、明日はよろしくお願いします。妹と名前がそっくりだから安心というか他人に思えないというか……いい試合をしましょうね!」


「…………」


「……それにしても今日の二次予選、急にみんな失敗し続けてどうしちゃったんでしょうね?そのおかげで最終予選の大乱闘がなくなってよかったんですが……」


「……最終予選が面倒だったのは私も同じ」


 私が一方的に喋るだけで、顔すら見せない魔女は沈黙のままかと思っていた。だからここで返事があったのは驚きで、続く言葉はもっと衝撃的だった。



「だから合格者が8人になったところでそれ以降の選手には退場してもらった。私の魔法で意識を奪い国王像の下敷きにした」


「………え?あなたがあれを?」


「それとあなたの妹……あれも決勝でいなくなる。この私の手によって。名前が紛らわしいのも明後日までだから安心していい」



 たくさんの負傷者を出して大会を混乱させ、マキの命まで狙っている……王家に逆らう危険人物なのは確かだ。

 マキシー、フランシーヌ、ムサシはプロレスラーの名前が元ネタではありません。

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