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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第一章 大聖女マキナ・ビューティ編
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大荒れの二次予選の巻

『銅像を軽々と持ち上げ、台座まで運ぶスピードも速かった!ジャクリーン・ビューティ、我々の想像以上の人物なのか――――――っ!?』


「ジャクリーン様っ!」 「ジャッキー!」


 最終予選に進めるのは成績上位の24人とはいえ、こんなに軽い像で競技に挑むのは私しかいない。これでマキといっしょに次へ進める。



「やりましたね、ジャッキー様!しかしよくあんなもの持ち上げられましたね……まさかマユが何か?」


「いや……確かにあれを運んできたのはマユだけど、私を助けてくれたのは……」


 私が王様のほうを見ても、ラームたちはよくわかっていない様子だ。一方、インチキ像を仕込んだ王様と予定通り事が進めばその恩恵にあずかるはずだった王子様は、歯ぎしりしながら私を睨みつけていた。



「しまった〜〜〜っ!お前が消えた時点であれを処分するように言うべきだった!まさかゴミクズを助けることになるとは………ぐぐぐぐぐ」


「不正行為で失格にしましょう!正規の銅像でやり直させるのもありです」


 もしやり直しなら私にチャンスはない。それでも王様には私を見逃すしかない理由があった。


「愚か者が。あの像は大会のスタッフがあいつに渡した、つまり我々の落ち度だ。騒ぎが大きくなって、なぜこんなものがあるのか、誰のために用意されたのかと言われた時に口を漏らすやつがいたらどうする?」


「王家の評判は地に落ちる………」


「それに像を軽くすることは禁じていない。形を変えたり傷つけたりしなければ問題ないのだ。そういう魔法を使ったとやつが主張すればそれまでだ」


 憎きビューティ家に勝利を奪われるという屈辱を味わうことで王様たちは思い知ったはずだ。ずるい方法で勝とうとしたら罰が当たると。



「しかしまだ手はある。二次予選が終わった後に敗者復活戦を設ける。24人もいるのだから何人か追加しても観客たちは怒らないだろう。そこでお前をねじ込む」

 

 ところが諦めの悪い王様たちは次から次へと作戦を思いつく。全く懲りていなかった。


「最終予選は残り8人になるまで続ける大乱闘でしたね。皆で協力して無能女を真っ先に脱落させますよ!」


 一時的に手を組んで標的を潰す、大乱闘ではよくある光景だ。自然な形で私を除き去ろうと計画していた。


「楽しみだ……このまま終わると思うなよ」






 二人続けて楽にクリアするのを見た選手たちは、実はゲンキ像はそこまで重くないと考えるようになった。


「うっ………もう駄目だ!」


『まだ30秒も上げていないぞ、軟弱者が!失格!』



「……くそっ!あんなところまで運べない………」


『ゲンキ王の像を落とすとは何事だ!失格!』


 ゴールするだけで至難の業で、24位までが二次予選通過ではあるけど、24人も完走できるのか怪しくなった。



「はぁ―――っ、はぁ――――――っ………」


『記録、2分10秒!255番サキー、現在5位!』


 サキーも苦戦しながらどうにかやりきった。この時点で完走は8人、最終予選行きはほぼ安泰だ。


「怪力のお前には遠く及ばなかったな。これからギルドの仕事でチームを組む時は荷物を全部持ってもらおうかな?この像に比べたら軽いだろう」


「いやいや、これは………」


 これはサキーの冗談だ。私の好成績は運がよかっただけなのはサキーもわかっている。



「しかし私はお前がここで脱落してくれたらよかったと思う。危険な最終予選に進むこともなかった」


「最終予選の大乱闘……これは毎年変わらないよね」


「ああ。おそらくこれから闘魂軍が何人も二次予選を通過する。お前が注意している大聖女殺しを企む連中もいる。死人が出るかもしれないな」


 いつも重大な事故が起こるのは決勝トーナメントよりも大乱闘のほうだ。やりすぎて重傷、どさくさに紛れて殺してしまう……マキが狙われるとしたらここだ。


「お前は大聖女を死なせないように動けばいい。私はお前を守れる位置にいる」


「……サキーの弟は………」


「あいつは剣聖なんだ、自分でどうにかするはずだ」


 高まる最終予選への不安。しかしこのあと、誰も予想できなかった展開が待っていた。




「うわ―――っ!下敷きになったぞ!」


「すぐに治癒魔法を!だがいきなりどうしたんだ!?255番以降の選手は全員失敗とは!」


 まさに悪夢だ。連敗地獄に加え、失敗の内容も妙だった。軽々と持ち上げたのに突然操り人形の糸が切れたかのように力を失い崩れ落ちる。次々に重傷者が出た。


『闘魂軍の精鋭が全滅!残る挑戦者は最初に当たりくじを引いた剣聖のゴウテン・エラプションだけ!この負の連鎖を止められるか!?』


 この異常事態の原因もわからないままサキーの弟が競技に臨む。不安だらけだ。



「ゴウテン………あっ!?」


『やはり駄目だ――――――っ!!力尽きて倒れた!これは首の骨が折れたか……大惨事です!』


 最後まで悲劇は続いた。王様もお父さんも何かがおかしいと怪しい人間を探している。ただの不運な事故ではなく何者かによるものであることは観客たちも気がついていた。


「この程度なら簡単に持ち上げられるはずじゃないか!なぜだ……ゴウテン!」


 治癒魔法でひとまず命は助かったとはいえ、弟が意識を失い運ばれていく。妹を守るために参加した身として、サキーの苦しみは痛いほどわかる。




『に、二次予選終了ですが……合格者はたったの8名!国王様、どうしましょう……』


『………ちょうど8人か。ならば最終予選は中止、このまま決勝トーナメントに突入だっ!』


 危険な大乱闘がなくなったのは嬉しいけど、不気味な力の主は見つからないままだ。いつ何が起きてもいいように集中力を高めよう。

 今年のプロ野球交流戦、優勝するのは横浜DeNAベイスターズだと予想します。パ・リーグのチームはどうせ勝てないのですから、大人しく棄権して白星を献上するのが賢明です。

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