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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第一章 大聖女マキナ・ビューティ編
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闘技大会開幕の巻

「国王、無事この日を迎えることができましたね」


「ああ。大会を成功させるため我々も力を尽くそう」


「……はい、すでに準備は整っております」






 お城のすぐそばにある大闘技場。兵士たちの訓練、闘技者による決闘、犯罪者を魔獣と戦わせて処刑するなど多くの目的で使われる。いっぱいに詰めたら観客は5万人以上入る。


「……参加者が去年より多いね」


「記念大会だからな。注目されてるし、結果を出せば人生が変わる」


 私も去年は観客席から開会式と予選を見た。その時はそこそこ空席も見えたのに今日はぎっしり、そしてフィールドに立つ選手は500人。いつもの倍はいる。



「あっ、いた!おーい、サキー様!ギルドの代表として……げっ!!」


 サンシーロさんの声が聞こえた。サキーの応援に来たようだ。ちなみにサキーは私の隣にいる。


「あいつは無能馬鹿!おい、戻ってこい!サキー様が活躍してもお前がいたらパーだ!誰があんなのを推薦したんだ!あいつ以上の大馬鹿か!?」


 大聖女が推薦したと知ったらサンシーロさんはどうするつもりだろう。怖くなって遠い地へ逃げ出すかもしれない。



「ジャッキー!」 「ジャクリーン様!」


「みんな!おーい!」


 ビューティ家総出で応援に来てくれた。私はおまけでマキが目当てなのはわかってるけど、『チーム・ジャッキー』の集大成としていいところを見せよう。チームの活動は毎日のように食べて飲んで遊んだだけなのはもう忘れた。




「お、おお!国王様だ!」


「ついに始まるぞ!今年も闘技大会が!」


 私たち選手は横に20人、縦に25人ずつ並ばされていた。24人の列もあって、ここにはいないマキたちを含めてちょうど500人だ。


「国王の隣には大聖女様、そして大聖女様の婚約者であり次期国王、第一王子の『マッチョ・アントニオ』様がいるぞ!」


 マキとマッチョ様も出場者なのに特別扱いだ。でも私たちから離れた場所にいてくれるおかげで暗殺者に襲われる心配がないのはいいことだ。これだけ密集していると怪しい人間を探すのが難しい。



「……強そうな人しかいないね。どこを見ても」


「当たり前だ。例えばあれは倒した魔物を徹底的に破壊する『ハッシー』、その前にいる顔をペイントしているのは『ムター』だ。二人とも昔は闘魂軍にいたが今はそれぞれ大手のギルドでS級冒険者になっている」


 自信に満ちた目、のし上がろうという気迫……実力もやる気も私が500人中500位なのは間違いない。強敵たちの野心と殺気に圧倒されていると、サキーが優しく私の手を握った。


「だが心配するな。お前が危なくなったらどんな手を使っても助ける。私を信じろ」


「………ありがとう」


 自分で選んだ道だ。気持ちだけは負けずに強敵たちに立ち向かおう。サキーが私に勇気をくれた。



「………ふーん」


「ど、どうなされましたか?大聖女様………」


 私とサキーがいるのは列のかなり後ろのほうだ。それでも私たちが手を繋いでいるのがマキにははっきり見えていて、前にいる人たちは一瞬ではあるものの凍てつくような冷気に身震いしたという。





『ようこそお集まりいただいた、私の愛する国民たち!我がジェイピー王国は今後も栄華を誇り続けるだろう!』


「ゲンキ!ゲンキ!」 「ゲンキ!ゲンキ!」


 ゲンキ・アントニオ王の登場で大闘技場はいきなり大歓声だ。皆に嫌われていたという以前の王家を一掃した英雄の人気と支持率は上がり続けている。



『ゲンキがいれば何でもできる!このようにな!』


 マキと王子、司会や護衛の兵士たちが王様から離れると、巨大な怪物がゆっくりと歩いてきた。目が一つしかないサイクロプスと呼ばれる魔物で、この間私とサキが戦った双子よりも大きかった。


「魔物が入ってきた!どうして!?」


「よく見ろ。護衛たちやお前の妹はまるで動揺していない。まるで最初からこのタイミングで入ってくるのがわかっているようだ」


 サキーは冷静だった。そうか、これはパフォーマンスだ。自分の強さを見せつけようとしているんだ。



「ゲンキ!ボンバイエ!ゲンキ!ボンバイエ!」


 観客たちはわかっていないのか、わかっていて乗っているのか、ボンバイエ(ぶっ殺せという意味)と絶叫している。


「ぬんっ!!」


「ガガガ………」


 その期待に応えて王様の強烈なキックが炸裂した。相手の真横から後頭部に蹴りを入れると、サイクロプスはそのまま沈んだ。まさに一撃必殺だった。



『おおっ!さすがはゲンキ・アントニオ王!サイクロプスをたった一度のキックで倒してしまいました!この方がいる限り王国は不滅です!』


「ゲンキ!ゲンキ!」 「王様万歳!」


 これで主役は完全に王様だ。目立ちたがりなんだろう。


「あれ?あのサイクロプス、意外と平気そう……」


「言うな。聞かれたら面倒なことになる」


 魔物とも事前にちゃんと打ち合わせていたようだ。とても上手いお芝居だった。




「ゲンキ王最強!」 「ゲンキ様―――っ!」


『フフフ…この程度朝飯前だ。しかし私がいつまでも最前線にいては王国に未来はない。この第300回記念大会で新たな希望の星たちが誕生することを願っている!』


 ゲンキ王が言葉を発するたびに歓声と拍手が沸き起こる。注目を浴びることに快感を覚える王様の長い演説が始まるかと思いきや、箱を持った兵士がやってきた。



「だが……500人は多すぎるな。早速だが一次予選を開始する!その種目は『くじ引き』!」


「く……くじ引き!?」


『単純でわかりやすくていいだろう?この先に進む資格があるのは誰なのか……天が決めてくれる!』

 新日本を出たら地獄、残っても地獄だったあの頃

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