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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第五章 アーク地方での冒険編
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革命軍狩りの巻

「ジャッキー様!」 「ジャクリーン様!」


「どっちだ!?どっちが勝った!?」


 私の両腕から放たれた光のせいで、何が起きたのか外からは見えなかった。観客たちがこの眩しさに慣れた時、結末が明らかになった。



「そ……そんな………!」


「ジャクリーン・ビューティが……ザワを止めた!」


 腕だけでなく全身が痺れるほどの一撃。反応がほんの少しでも遅れていたら、粉々にされていた。


「おれの最高の技が………」


 ザワにはまだまだ伸び代がある。真面目に訓練をしていけば、そのうち私が勝てる相手ではなくなる。それだけの素質の持ち主だ。


「でも今は私のほうが上!てりゃ――――――っ!!」



 掴んでいたザワの身体を空中に放り投げ、私も飛んだ。そして天井ぎりぎりで止まり、後ろから抱きかかえる形になった。


「これは……お前の必殺技!」


「知ってたんだね。それなら覚悟はできた?」


 ザワの動きは完全に封じた。マーキュリーやトゥーツヴァイと同じレベルの強敵だと認めるからこそ、最後はこの技で決めるしかない。



「くそ―――っ……アークを救うんだ………」


「革命の手助けはできないし、王様にもならない。でもそれ以外の方法でいくらでも力を貸すつもりだよ。私の気持ち、受け取ってほしい!」


 私の思いがこの技を通して伝わってきたとマーキュリーたちは言った。ザワもわかってくれるはずだ。そう信じてマットに落ちていこうとした、まさにその時だった。



「大変だ!アーク兵たちが革命軍を襲っているぞ!」


「えっ!?」 「なんだと!」


「火をつけられた!そのうちここにも……」


 血だらけの人たちが道場に駆け込んできた。背中に矢が刺さっていたり、片腕を失っていたりと重傷だ。私はすぐに技を解き、ザワと共にリングを下りた。


「総督たちが連れてきた兵士が?おい、やつらはお前らの仲間じゃないのか?」


「ああ……おい!何が起きているんだ!?」



 試合が止まったことで道場が静かになると、外から叫び声や悲鳴が聞こえてくるようになった。緊急事態になっているとわかった瞬間、私たちも飲み込まれた。


「革命軍の集会所だな!観念しろ、反逆者ども!」


 道場の扉が巨大なハンマーで破壊され、兵士たちが押し入ってきた。観客たちを奥に避難させて、私たちが前に出た。


「王国に混乱と血をもたらす者たちは生かしておけん!その場で殺すようにと総督は仰った!」


「若い女と金持ちは助けてやらんこともない……大人しくしていれば、だがな」


 兵士たちの武器にはすでに血がついていた。



「ちょっと待ってください。革命軍はそっちの数人だけで、私たちは違う……」


「言い訳するな!お前から殺すぞ!」


 この様子だと無関係の人たちも見境なく襲っている。早くしないと街が滅びてしまう。


「……転移魔法で逃げられないようにバリアまで張ってあるね。それもかなり広い範囲に……」


「逃げるわけにもいかないけどね。マキ、遠慮はいらないよ。あいつらを急いで蹴散らそう」


「わかった!手加減しなくていいんだね」


 マキが本気で戦うと宣言し、すでに聖なる力に満たされている。兵士たちに勝ち目はなかった。




「お……おお………」


「戦いにすらならなかったな……」


 瞬きをしている間に一掃してくれた。大聖女の真の強さにザワも言葉を失っていて、私たち……というよりマキを敵に回したらどんな計画も成功しないことを思い知っただろう。


 これまでにジェイピー王国を襲った敵たちも、マキの圧倒的な力を目にして心が折れた。私が相手なら弱そうだから勝てるかもと皆が希望を膨らませる。しかしマキが現れてその力を見ると、絶望して野心を捨てる。


「こいつらから情報を得たいところだが……死んでるかもしれないな。街を救うのが先だ!」


「急ぎましょう!」


 この兵士たちは強くない。ザワの仲間を何人か残しておけばまた道場が襲われても返り討ちにできる。観客たちにもしばらくはここから出ないように指示した。




「荒らされているな。燃えている家もある」


「片っ端から無差別にってわけでもなさそうですね。無傷の人もたくさんいます」


 怪我をしている人を治癒魔法で助け、無事な人には話を聞く。すると少しずつ真相が明らかになり、革命軍と僅かでも関わりがあると酷い目に遭うことがわかった。



「徹底的に革命の芽を摘みたいようですね。ザワ、あなたはアーク地方の支配者たちも自分たちと同じ考えだと語っていましたが……これは一体どういうことですか?」


「おれが知りたいよ!どうしてあの方々がおれたちを攻撃するのか、この街をめちゃくちゃにしたのか……」


 私たちよりもザワが混乱していた。しかし彼女に原因を考える時間はなかった。


「………はっ!!」


 突然どこかへ走り出した。今のザワを一人にするわけにはいかず、私たちもその後を追った。


「急にどこへ!?」

 

「おれの家だ!革命軍に関わりがある人間が攻撃対象なら……家族なんか一番に狙われる!ママ……いや、おれの母親が危ない!」



 古くて小さな木造の家がたくさん並んでいる通りに出た。ちょうど真ん中あたりがザワの家だった。


「このあたりは無事なのかな?」


「燃やされたり荒らされたりしている様子はありませんが………」


 これから兵士たちが来るかもしれない。それでも全員でここを守っていたら他の場所を助けられないから、何組かに分かれる相談をしようとしたその時だった。



「―――――――――っ!!」


 耳が破壊されると思ったほどの叫び声が響いた。先に自分の家に入っていたザワが発した声だ。


「おい、どうした!?」


 私たちも中に入った。すると……。


「ママ!ママ――――――っ!!」


 壁や床には血が飛んでいた。倒れている女性はザワの母親で、どうやら剣で斬られたようだ。



「ママ……!今すぐ治して……」


「わ、私は………もう長くない。でも……かわいいあなたに会えてよかった………」


「そんな!ママ……死なないで!」


 多少強引で荒っぽい方法ではあったけど、ザワが革命を起こそうとした理由の一つは『親孝行』だった。母親の生活を楽にしてあげるために社会全体を変えようとしたのだから、すごい行動力だ。



(普通なら助からない。でも大聖女の力なら!悪役を演じる正義の卵……アークの英雄になれる女の子の願いを叶えるために!)


 マキに頼めばすぐに治してくれたのに、どうしても助けたいという気持ちが強すぎて、そんな簡単なことすら頭の中から抜け落ちていた。気がつけば私の身体は再び光に満たされていた。


「ジャッキー様!」 「だ…大聖女の……!」


 ありったけの魔力を使う奇跡の魔法だ。この先の戦いはみんなに任せて、目の前の人を救うことだけに意識を集中させた。

 蝦名達夫、こうなったら引退まで応援歌なしで通してほしい。

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