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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第五章 アーク地方での冒険編
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会議、開始!の巻

「頼みましたよ!救い主様!」


「あなたたちこそ希望です!」


 街の人たちから大歓声が上がり、私たちへの期待の大きさが伝わってくる。どんな方法でもいいから暮らしを楽にしてほしいという願いだ。



「もし私たちが期待外れだったら……この人たちが全員敵になるってことだね」


「心配いりませんよ。ジャッキー様なら必ずうまくいきます!」


「万が一雲行きが怪しくなっても転移魔法で逃げてしまえばいいだけです。気楽にいきましょう」


 アーク地方の大物たちとの会議の場は、街の中心から少し離れたところにある超高級料理店に決まった。値段が高いだけでなく一日一組限定、完全予約制だから私たちでも本来なら入れなかった店だ。重要な集まりがある時は必ずここが選ばれるらしい。




「いよいよだな!しっかりやってくれよ!」


 ザワが私の肩を叩く。彼女がいなくても総督たちとはいつか話をすることになっていた。ただしもっと時間がかかり、しかも私たちの側から会いに行く必要があっただろう。


「おれはこのオナードという街、そしてアーク地方が大好きなんだ。あんたらが革命を起こし生活が豊かになればおれのママ……いや、母親も喜ぶ!頼んだぞ、全てはアークのために!」


「全てはアークのために!」


 競馬場に行った時に行動を共にしたオワダさんを先頭に、ザワの仲間たちも料理店の外で待機している。何かあればすぐに動ける態勢だ。アークの代表者の一人に、ザワたちのリーダーであるタツ・ヨシがいるからだ。



「シュスイさん……」


「無事に終わってくださいよ。外にうじゃうじゃいる連中が暴れだすような展開だけは避けてもらわないと、私の仕事が増えちまう」


 仕事が増えるだけなら我慢してもらおう。もっと悪いことになるかもしれない。街中で暴動が起これば兵士のシュスイさんは真っ先に命を落とす。きっと私たちも自分の身を守るのに精一杯で、助けられない。


「そうならないように頑張りますよ」


 私たちは全員入ることを許された。むこうも代表者四人に加えて護衛の兵士たちを連れてきている。ザワやシュスイさんに影響が出る前に、中で戦いが始まる可能性もあるということだ。相手がその気だとしても、それだけは避けたい。






「あなたがジャクリーン・ビューティさんですか。そのご活躍、すでに聞いていますよ」


「ナーカ・タリュー総督、お会いできて光栄です」


 互いに頭を下げる。握手などはなく、そのまま椅子に座った。総督はお父さんや王様より少しだけ若いように見える。


「ならず者集団のニュー・セレクションを壊滅させ、金山や川の凶悪な魔物を退治した……人々があなた方を救世主と崇めるのもわかります」


 アーク地方のナンバー2、タマミ・オダワラ大臣も私たちを称える。この女の人は化粧がとても濃くて、年齢はよくわからない。聞かないほうがよさそうだ。



「……総督と大臣がこの場にいるのは当然だ。だがそっちの二人はなぜ同席しているのか……」


「私は商売のためだ。あなたたちを通していい交渉ができると思っている。ここで流行りそうなものを王国の中心からアークに運び、こちらからも名産品や優秀な人材を首都に渡す……互いに金を稼げる」


 ルリさんの兄、ノア・タイガーは商人として大成功しているから、この説明は納得できるものだ。しかし、


「俺?俺はまあ……通訳かな。アークの微妙な訛りのせいで言葉が正確に伝わらないのはまずい。俺なら間違いをすぐに正せるってわけさ」


 嘘をついているのは明らかだ。革命軍のボス、タツ・ヨシがここにいる理由にはならない。総督やタイガーも元々は首都にいたのだから、タツ・ヨシは不要だ。現に彼らの言葉は問題なく聞き取れる。


(私たちに革命軍の仲間になるように言うため……タツ・ヨシの役割はそれしかない)


 総督や大臣もその気だから、タツ・ヨシをこの場に連れてきたのは考えるまでもないことだ。その話をしてきた時がこの会議の本番だ。



「皆様はすでに何日もオナードの街に滞在しておられるようですが、金で殺人を請け負う連中について耳にされましたか?」


「えっと……はい。聞いただけですけどね」


「そんな物騒な者たちがいたら治安はますます乱れる一方!この件は国王にも報告しているのですが、なかなか動いてもらえません。皆様からも連中を捕まえるための兵士たちを派遣してくれるよう伝えていただけますか?」


 私たちもこの正体不明の暗殺者たちを警戒していたけど、最終日まで一度も襲われることはなかった。毎晩交代で見張っていても怪しい気配すらなく、その存在を忘れかけていた。



「やつらは殺しを仕事にしているが、専門の殺し屋ではないという噂です。それぞれ街で働いて生活し、依頼があった時だけ殺人者になるとか……」


「そのへんに潜んでいるってことですか……」


「とはいえ連中の正体はわかっていません。依頼した人間も見つかりませんし、目撃者すらいない。標的にされたら確実に死ぬから被害者の証言もない。だから事実ではない大げさな話もつけ足されているでしょうが……オナードに何人か、凡人に見せかけた凄腕の殺し屋がいるのは確実なのです」


 誰が殺し屋なのかわからないのにどうやって依頼するのか、これが一番の謎だ。普通の仕事との兼業なのに成功率は100パーセント、しかも捕まらないというのも驚かされる。



「まあ……皆様はもうすぐ首都に戻られる。やつらを捕まえてくださいとは言いません。繰り返しになりますが、優秀な兵士たちを遣わすよう国王に伝えていただくだけでいいのです」


「わかりました。王様もきっと賛成してくれます。しかし途中の山道を山賊たちのせいで通れなくしたり、転移魔法を邪魔するようなバリアを張ったりするのはもうやめてください。せっかくの援軍もたどり着けませんからね」


 アーク地方に入れないようにするための仕掛けがいくつもあった。小さな兵団が行方不明になった事件も起きたのだから、山道の安全とバリアの解除は絶対に必要だ。


(ん〜?闘魂軍の兵士を殺しておいて、困ったら兵士を貸してほしいって……勝手すぎるような……)


 賛成してくれますと言ったばかりだけど、さすがに厳しいか。馬鹿にされていると思った王様が怒って、問題が大きくなるかもしれない。



 私がいろいろ考えていると、トゥーツヴァイが私にしか聞こえないような小声で話しかけてきた。


「………彼らの言葉を本気にしないほうがよろしいかと。国王を騙すための罠かもしれません」


「え?罠?」


「正体がわからないとはいえ相手は数人、それなのに大規模な助けを仰ぐのは自分たちを弱く見せようとする工作です。自分の土地の問題すら解決できない者たちが革命を企てているとは予測できませんからね」


 そういうことか。賢いトゥーツヴァイがいてくれてよかった。頭脳戦で私が活躍することは絶対にない。

 最後まで強すぎたオオワダサン。OZAWAが強くなるその日まで、いってらっしゃい!

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