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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第五章 アーク地方での冒険編
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オナード剣術大会の巻

 街の人たちを帰してからも練習は続いた。練習内容の中心は、私が防御では無敵になったのかを試すことだ。


「それ!これなら……おおっ!」


「防いでいる……やはり完璧か!?」


 サキーの剣やマーキュリーの氷の刃を止め、マキが使う催眠や混乱を誘う魔法にもかからない。もしものことがあるといけないから全力ではないとはいえ、それに近い勢いで攻撃してもらっている。



「こういうのも試してみるか?せやっ!」


「ならば私も!フンッ!」


 マキシーが前から噛みつきの構え、それと同時にトゥーツヴァイが背後から襲ってくる。


(噛みつきはスライムボディで防いでトゥーツヴァイの攻撃は鎧……いや逆かな?)


 どう対処するか、少し迷ってしまった。能力を使わずに回避することも含めると選択肢はさらに増え、判断を遅らせた。



「あがっ!!」


「……えっ!?」 「ジャッキー様!」


 トゥーツヴァイのドロップキックを背中に食らってダウン。受け身を取るのも失敗した。


「ジャクリーン様!しっかり!」


「同時の発動は厳しいのか?多方向から攻撃されると苦しいな……」


 私が鈍かっただけだ。どんなに素晴らしい能力を持っていても、使い手が弱かったら持ち腐れだ。



「まあ……しょせんは貰い物だ。あまり過信はできないな」


 これでよかったかもしれない。地道な努力を重ねて強くなる、その当たり前のことを続けていこう。






「こっちですこっち!もっと持ってきて!」


「お酒がもうありませんよ!」


 夜になれば恒例となった宴会だ。毎日野宿かもと言われた旅だったのに、いつも以上に贅沢な食事を楽しんでいる。


「アークに来てから太ったかもしれません……」


 全員で太るのも当然の結果だ。昼間の運動量を増やして対策しないと体重は増える一方だろう。普段はサポートに専念しているラームとルリさんも練習に参加してもらったほうが本人のためになる。



「あれ?サキーは?」 


 サキーの姿が見えない。すでに食器もなかった。


「今日はもう休むそうです。ほら、明日は……」


「ああ……そうだったね」


 明日は街の中心で剣術大会がある。この数日の活躍で有名人になった私たちが参加すれば盛り上がるから、ぜひ出てほしいと招待された。


 そして剣ならサキー以外いない。闘技大会に出てこないアーク地方の強豪剣士たちとどんな戦いをしてくれるのか楽しみだ。



「私たちは遠慮しなくていいのかな?」


「出場するのはサキーさんだけですから。サキーさんのぶんまで食べて飲んじゃいましょう」


 観戦中に寝てサキーを怒らせることにならなければ問題ないか。大会が始まるのは昼からだし、多少の寝坊は許される。


「………そうだね!」


 いっぱい食べてもそれ以上に動けばいい。剣技大会が終わってからまた道場で汗を流そう。辛いことは明日の私に任せて、今の私は欲望に逆らわない。とても楽しい時間を過ごした。






『今年も『オナード剣術大会』の日がやってきました!選ばれし八人の剣士たちによる素晴らしい戦いを楽しみましょう!』


 この大会は闘技大会の本戦と同じく、トーナメントで行われる。三回勝てば優勝だ。


『まずは組み合わせの抽選を行います!剣士の皆様、こちらへどうぞ!』


「……!あの人は!」 「あれは!」


 サキー以外は初めて見る人だらけだろうと思っていたから驚いた。顔を知っている剣士が二人いた。



「シュスイさんだ!シュスイさんも出るのか……」


「魔王軍虫組……蚊のサリー!?なぜここに……」


 シュスイさんとサリーも参加者だった。剣士としては大したことのないサリーだけど、こんな場所にいる理由はとても気になる。


 そしてシュスイさんだ。サキーよりも上だとマキが断言していて、とんでもない強敵の登場だ。普段はやる気のない兵士、しかし内に秘めた実力はいまだ未知数。こういう相手が一番怖い。




「おい!魔王軍のお前がどうしてこんな場所にいる?魔王の命令か?」


 くじを引こうとするサリーをサキーが呼び止めた。もし魔王が関わっていたら、大会でぶつかる前に戦う必要がある。失格になっても構わない。


「そういえばあいつ……お前の相棒シロは元気か?」


「ああ。私の腕の中にいるよ。そして私たちは任務に失敗したあの日、魔王軍を追放された。だからもう魔王との繋がりはない……」


 穏やかな笑顔で語るサリー。確かに虫組の一人として襲ってきた時の殺気や敵意、邪気は感じない。


「そうか。それならここで再会したのもただの偶然か………珍しいこともあるものだな」


 嘘をついている可能性もある。サキーもとりあえず信じたふりをして話を続けた。二人とも会話をしながらくじを引き、係の人に手渡した。



「こんな土地になぜ来た?不便で不景気、自然は豊かだが静かというわけでもない。お前たち二人にとっていい場所とは思えないが?」


「もっと山奥へ行けば、私たち以外は誰もいない静かな場所なんかいくらでもある。魔界から遠く、人間界の中心からも離れている……とてもいいところだ」


 ダイもいまだに魔王の制裁を恐れている。追い出した時には何もせず、しばらくしてから裏切り者や期待外れの元配下を消すことは珍しくないらしい。


「魔王もここまでは追ってこない……確かにな」


「それに加え、私とシロの二人きりの空間を邪魔するやつがいない環境だ。いつか夢を叶えてみせるさ」


 サリーの腕の中にいる、蚊のモンスター人間シロ。二人の絆が強まるほどシロの身体は大きくなり、やがては普通の人間のように生活できるという。



「……魔王の力ならすぐにその夢も叶ったそうだが……私がそれを邪魔してしまったな。恨んでないのか?」


「ハハハ……全くと言えば嘘になるが、私たちも急ぎすぎていた。あの試合に勝ったらもっと危険な戦場に送り込まれた未来もあったのだから、あれでよかったと思っている」


「正直でいいな。その僅かな恨みの気持ち、対戦することになったら全力でぶつけてこいよ」

 


 真剣勝負をした二人はいい友だちになれたようだ。今度は純粋に互いの力を競う戦いを楽しみたいところだろう。しかし、


「サキーの対戦相手は『リョーマ』って人だ!」


「サリーさんは……シュスイさんと!?」


 隠れた優勝候補、シュスイさんと戦うことになってしまったサリーの準決勝進出は厳しい。二人の再戦は幻に終わりそうだ。

 横浜DeNAベイスターズが21安打14得点の圧勝で後半戦初勝利!運がなかっただけで、これがこのチームの真の実力です!

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