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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第五章 アーク地方での冒険編
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闇への耐性の巻

 マーキュリーが突然私に抱きついてきた。しかも全身が闇のオーラに包まれている。


「マーキュリー!これは……」


「あなたが魔王に勝つために、私ができることは……」


 

 顔がどんどん近づいてくる。そして、


「んむっ!」


「……………」


 いきなり激しいキスだ。マーキュリーの速攻に私はなすすべなく、されるがままになっていた。



「むぐっ………!」


 マーキュリーの舌が深いところまで入ってきた。ところがこれはマキが好むような舌を絡めるキスがしたかったわけではなく、別の狙いがあった。


(……!この感じは………!)


 昨日の夜にダイから鎧をもらっていなければ、もっとびっくりさせられていただろう。マーキュリーの力が口から入り、身体の内部に満たされていった。




「ぷはぁっ!マーキュリー………これは?」


「私の闇を……ほんの少しだけあなたに分けた。この程度では私のように闇を使いこなすことはできない。しかしこれには大きな意味がある」


 あまりたくさん送り込まれると弱い私では耐えられなかった。マーキュリーの言うようにうっすらとしか感じない闇の力にどんな効果があるのか、すぐに説明してくれた。



「ジャクリーンの光は私の闇を制した。しかし魔王の闇は私の比ではないはず……勝ち負け以前にまともに戦わせてもらえない、その危険がある」


 単に強いだけではなく、魔王が持つ特別な力を警戒する必要がある。そんな当たり前のことを私はあまり考えていなかった。


「これで心配はなくなった。闇への耐性ができたことで、真っ向勝負の舞台に立てる」


 正式な大聖女のマキでは闇の力を受け取れなかったかもしれない。大聖女の神聖さが闇を拒否するか、消滅させてしまうだろう。



「光に満たされたジャクリーンだから必要だった。あの大聖女ならおそらく問題ない。時折見せる自分勝手な振る舞いや暴虐性を考えれば……」


「こらっ!マキの悪口は許さないよ」


「………すまない。彼女はあなたの妹、やがて私の義理の妹となる存在……あなたのように彼女も愛さなければならなかった」


 マーキュリーは軽く頭を下げると、再び私との距離を詰めた。すぐに唇が触れてしまう近さだ。


「さっきのは私の力を分けるため。今度は……」


「いいよ。しよう」

 

 氷の女と呼ばれるマーキュリーでも、今はとても熱かった。私も負けないくらい熱く、愛の炎がますます激しく燃え盛る……はずだった。




「はい、そこまでです。遅いから様子を見に来てみたら……」


「んむっ!?」 「むうっ!!」


「十分慰めてもらっただろう。終わり終わり」


 私たちがなかなか合流しないから、みんなが来てしまった。二人きりになってしばらく来ないとなれば、こういうことになっているという予感があったのだろう。



「くっ……まさかこんなに早く……」


「結構待ったぞ。二人でどこかに行っちゃったのかと思ったし、人の目もあるからせめて宿屋とかでやってもらわないと困るな」


 ザワにまともなことを言われると特に負けた気持ちになり、反省の思いが強くなる。


「そうだぞ、昨晩のコイツみたいにな」


「えっ!?み、見てたんですか!?」


 マーキュリーだけでなくダイも攻撃の的になった。しかしみんなが本気で怒っていないのは、自分も『その機会』を虎視眈々と狙っているからだった。


(こいつらがキスなら私はもっとすごいことになるだろう。い…今から興奮してきたな)


(上から塗り替えてあげますよ、情熱の記憶を)


 みんなの熱い視線を感じる。これから数日間、刺激的な展開が続くことを覚悟しよう。






「あんたたち!活躍は聞いたよ、あの乱暴者どもを退治してくれたみたいだね!これが報酬のお金だよ、受け取って!」


 何でも屋で任務を終えたことを報告した。すでに話は広がっていて、そばにいた人たちからも拍手で迎えられた。


「あいつらも最初は皆のために働いてた。でも最近はそれ以上に悪いほうが目立つようになって……見過ごすわけにはいかなくなったのさ」


「治安の維持が役目とか言っていたが、もうニュー・セレクションは必要ない。この人が王になれば悪いやつらはほとんどいなくなるだろうからな!」


 私を国王にしようとする動きが大きくなっている。こうなったらもう放っておいて、お城に戻ってから王様に詳しく説明したほうが早く話が終わりそうだ。私は王座を狙う気なんか全くない、それをわかってもらえればいい。 




「ニュー・セレクションを倒せるのなら、あの依頼もきっとクリアできる。明日の朝、また来てちょうだい。壁に貼ってない特別な仕事を紹介するわ」


「……はい。よろしくお願いします」


 どんな内容だとしても、チーム・ジャッキーなら難なく解決できるはずだ。私も少しは力になりたいけど、また後方で待機したまま終わりそうな気がする。


「私を王様にしたいんだったら私が活躍しないとだめなんじゃないの?」


「そんなことはありませんよ。王が最前線に立つのは稀なことで、王に仕える者たちが強いほうが民は安心します。ですからジャクリーンさんのそばにいる私たちの実力をアピールするのも大切なんです」


 私を戦わせない理由の一つはそれか。足を引っ張るくらいならみんなの好きにさせておこう。こっちもはっきり言い聞かせるのは最後でいいか。




「大仕事をしたんだ。今日はもう休もう」


「宿に行くには時間がまだ早い。おれが面白い遊び場に案内してやるよ」


 ちょっとだけ遊ぶのは私も賛成だ。ただし賭け事の場所には行かないようにと注意するのを忘れなかった。昨日のみんなの負けっぷりを考えれば、もらったばかりの報酬が全て消し飛ぶ。


「わかってる。健全な遊びにするよ。魚釣りだ」


「釣りかぁ……面白そうだね、行こう!」


 激しい戦いの後はのんびり過ごすのもいい。釣りを楽しめる川へ向かった。

 SHUN SKYWALKER

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