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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第五章 アーク地方での冒険編
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ニュー・セレクションの巻

「よう!いい仕事、入ってる?」


「あら、ザワじゃないの。久しぶりね」


 何でも屋に入ると、女の人が一人で受付に座っていた。この人が何でも屋の主人だ。一人しかいないのに壁にはたくさんの依頼が貼りつけられていて、私たちのギルドが大きくなる前の光景を思い出した。ギルドマスターのサンシーロさんが全ての事務作業をこなしていた時期があった。


「珍しいな。仕事が溜まってるぞ」


「ここ数日、人が少ないのよ。子連れの男も猫を連れた剣士もよその街に行ってるみたい。あいつらみたいな強いやつに任せたい仕事があるのに……」


 私たちもどんな依頼があるのか見てみた。商人の護衛、野良犬を追い払う、留守番……何でも屋の名の通り、集まる依頼の種類も豊富だ。



「……ジャッキー様、これなんかどうです?」


「えっと……」


 ラームが渡してきたのは、料理店からの依頼だった。迷惑な客を懲らしめてほしいという内容だ。


「人助けになるし、いい仕事だね。これにしようか」


「報酬も高いですよ。少し高すぎる気もしますが……」


 アーク地方の市民たちはお金がなくて苦しんでいると聞いたばかりだ。このお店にかなりの余裕がなければこんな額は出せない。



「あら……それね。ちょっと厄介な依頼よ。その報酬が適正な値段と言えるほどにはね」


 何でも屋の女主人が顔をしかめる。初対面の私たちに任せるのを躊躇うほどの仕事らしい。


「騒いで店の物を壊す、代金を払わないこともある……最初は我慢していたらしいけど、とうとう目に余るようになった。不景気で我慢する余裕もなくなっちゃった、それも理由の一つかしら」


「なるほど……しかしそれなら兵士に捕まえてもらえばよいのでは?立派な犯罪ですよ」


「兵士……あいつらは手が出せないのよ。その困った客は一人じゃない。何十人もいて、しかも権力者たちの下にいる組織……ニュー・セレクションなんだもの」


 私たちを襲ってくるかもしれないとザワが警告した集団、ニュー・セレクションの名前がここで出てきた。地位と力を利用して好き勝手に振る舞っているようだ。



「依頼者はこの店だけど、周りの店も困ってる。だからお金は協力して出すって言っていたわ」


「皆で出し合えばどうにかなる金額か。ニュー・セレクションを追放できるならむしろ安いくらいだ」


 みんなもこの依頼をやる気になっていた。敵が何人いるかわからない上に強さも未知数、全員で戦う以外の選択はない。


「いずれぶつかる相手だ。早めに潰しておいたほうがいいな」


「たくさんのお店を助けたとなれば、ジャクリーンさんの名前もすぐに広がるでしょう」


 自信満々なみんなの態度を見て、これは期待できると何でも屋もゴーサインを出した。ニュー・セレクションがどのお店に現れるかはだいたい予想がついているとのことで、私たちは魚の料理店に向かった。




「生の魚も揚げた魚もおいしいですね。私たちの住む地域やお城のそばでも食べられるようになりませんか?」


「あのへんの魚は生で食べるのは難しそうだ。アークの魚を運ぶしかないが、すぐに届けないと腐るぞ。やはり焼くか干物にするしかない」


 この土地ならではのお楽しみか。ただし転移魔法と同じ効果の道具が誰でも簡単に買える魔界の技術が私たちに伝われば、話は現実的になってくる。


「本気で目指そうかな。人間界と魔界が自由に交流できる世界を。互いの平和と発展のために」


「……動機がどうであれ、信念は立派だからいいんじゃねーの?そのためにもあんたが国王に………」


 ザワの表情が変わった。そして私たちに静かにするようにと手で合図した。


「来た……あいつらがニュー・セレクションだ」


 私たちは目立たないように、隅っこや奥にいる。いきなり実力行使で追い出す気はなく、まずは言葉で解決しようと決めている。そこで決裂して相手が襲いかかってきたら、戦いが始まる。



「ハハハ……おい、いつものと酒!」


「俺も!」 「早く持ってこいよ!」


 相手は五人か。しばらく様子を見よう。


「おい聞いたか!大聖女やその仲間どもがこの街にいるらしいぞ!俺たちの敵になりそうだから、見つけたら捕まえろと言われているが……できるのか?」


「相手も人間だ。俺たちが得意な騙し討ちや奇襲ならどうにかなるだろ。そんな大物なら姿を見るまでもなく気配でわかる……死角からの攻撃ができるってことだ」


 マキがすぐそこにいるのに全く気がついていない。気配でわかるというのは大嘘だった。



「あの……そろそろ代金を支払っていただかないと我々も苦しくて……これまでの分はもういいので、今日からはお願いします」


 店長さんが腰を低くして五人組に近づいた。これが最終確認だ。もしここでまたしても支払いを拒むようなら私たちの出番が来る。


「……ああ?俺たちが誰なのか忘れたのか?」

 

「泣く子も黙る天下のニュー・セレクションだぞ!俺たちが役に立たない兵士どもの代わりにこの街の治安を守ってやってるのに飯代を払えだと!?」


 今にも暴れだしそうだ。私たちは席を立った。



「こんな店燃やしちまおう!そっちの客は巻き込まれたくなけりゃさっさと出るんだな……」


「そうはいかない。まだ食事の途中だからね」


 私が睨みつけると、ニュー・セレクションの五人は剣に手を添えた。いつでも抜けるようにするためだ。


「せっかくおいしい料理を楽しんでいたのに臭い動物が何匹も入ってきちゃった……早く外に出さないと」


「………!!」 「こ、このクソガキ〜〜〜っ!!」


 マキが笑いながら煽ると、彼らは剣を抜いた。お店の中で私たちを斬るつもりのようで、手段や場所を選ばないというザワの言葉は正しかった。



「俺たちを知らないよそ者だろうが容赦しないぜ。清く美しい社会のために……消えてもらう!」


 五人同時に襲いかかってきた。私たちの方が人数は多く、余裕を持って待ち構えることができた。

 ニュー・セレクション……アーク地方の一部の権力者と繋がっている厄介者たち。様々な創作物に登場する『新撰組』だが、作者が一番に思い浮かべるのは当然『大甲子園』のラスボスチーム。


 

 伝説の倉本前ヒットから数年……悲劇は繰り返される!

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