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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第一章 大聖女マキナ・ビューティ編
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台本破りの乱入者の巻

『決まった――――――っ!竜人テンゲンと阿修羅のハラ、ギルドが誇る名コンビは健在!見事勝利を飾りました!』


 ついに私の出番が来た。流れは一通り覚えた。あとはサキーを怪我させないように気をつけるだけだ。


『次は本日のメインイベント、30分勝負です!我がギルドが誇る最強の冒険者サキーが大聖女の姉であるジャクリーン・ビューティの挑戦を受けます!』


「いけ―――っ!サキーちゃんファイト!」


「華麗な剣技を見せて―――っ!」


 いい試合が見たいのではなくサキーが活躍しているところが見たいという観客がほとんどだ。確かにこれなら実力差がありすぎる私が対戦相手でも問題ない。



(最初は接戦を演じ、途中から私がジャッキーを圧倒する台本だが……)


(この空気ならサキーが一方的に攻めて私が派手にやられたほうが喜ばれそうだよね)


 私たちの判断で台本をある程度変えていいと言われている。どうしようかと考えたけど、やっぱり練習通りやることにした。急に変えると技や魔法の力加減を失敗するかもしれない。


「頑張れジャッキー!私たちの自慢の娘!」


「ジャクリーンさま―――っ!」


 一応私にも応援団がいた。もちろん全員ビューティ家だ。そしてラームとマユはリングの真下にいる。試合後に二人に支えられて私はよたよたと退場、サキーが観客にお礼を言って終わるという流れまでちゃんと台本に書かれている。



『決着はギブアップか審判である私、サンシーロの判断によるストップのみ!両者正々堂々と………』


 サンシーロさんが鐘を鳴らせば試合開始、そのはずだった。ところがリングの外が騒がしく、観客の視線もそっちに奪われた。


「喧嘩か?みんな酒を飲んでいたしな」


「いや……違う!あれを見て!」


 警備をしていたギルドの先輩冒険者や観客たちの静止を振り切ってリングに近づいてくる人型の魔物が二人いた。どちらも大きな体つきだ。


「…………グフフ」


「ヘヘヘ………」


 立派な体格よりも不気味な笑いのほうが怖かった。何をする気なのか全くわからない。



「乱入者だぞ!演出か?」


「違う!そんな連中見たことないぞ!俺のイベントを邪魔すんな……うげっ!?」


 サンシーロさんがリングに上がろうとする魔物たちを止めようとした。ところが、すでにリングのそばにはバリアが張られていてサンシーロさんは弾かれた。


 私とサキー、この乱入者二人、そしてラームとマユ以外はもうリングに近寄れない。私たちは逃げ場と援軍を失った。



「何だお前たちは?ジャッキー、私の後ろに下がれ」


 いつ襲いかかってきてもいいようにサキーは臨戦態勢だ。しかし魔物たちのほうがそれに応じない。


「落ち着け……俺たちは正式な試合でお前と戦いたい。お前を倒せばこの場にいる人間どもは誰に仕えるべきか理解するだろう」


「俺たちがこの地域を支配する。金や銀は俺たちが独占し、作物や家畜も上等な物は全て貢いでもらう」



 最強のサキーを倒せば誰も逆らえないと思っているようだ。もしサキーに勝ったとしても王国が、大聖女のマキがすぐに動くとわかっていないらしい。それにもう一つ、重大な見落としがある。


「ちょっと待った!サキーは強いからいいとして……私に勝っても自慢できないよ!?二対二の戦いに一人場違いがいるんだから」


 正々堂々実力を見せつけて勝ちたいのなら私を試合から外さないと駄目だ。これでサキーを倒したところで相棒がまともだったら勝負はわからなかったと言われる。サキーのためにも選手交代を申し出て、魔物たちの返答を待った。すると………。



「……あっ!?もう一人いたのか!?あまりにオーラがなく弱々しいものだから視界に入らなかった!このバリアは時間で解除されるのでしばらくは出られないぞ!」


「………えっ?」


「二対二でやる気なんかなかった。こいつがそこの剣士と戦い、俺はサポート役のつもりだったのだが……」


 私を馬鹿にして見下している感じはない。私の存在に気がつかなかったという言葉は魔物たちの本心だ。まさか物理的に見落としていたとは……。



「とほほ………じゃあ私もサキーのサポートに回ろう。ラーム、マユ。そこに座るからちょっと詰めて」


「………」


 リングから出ようとロープに手をかけた。するとサキーが私の肩を掴み、中央に連れ戻した。 


「あれ、どうしたの?」


「いや、二対二でやる。あんな連中これくらいでちょうどいい。後々文句を言われて再戦となっても面倒だからな」


 サキーは私を含めた戦いをやる気だ。相手に有利な条件でも完勝してみせることで格の違いを見せつけるつもりか。



「いいのか、そんなのを入れて?こんなやつがいなければ勝てたという言い訳の道具が必要なのか?」

 

「まさか。お前たち二人でも私以下の力しかない。あまりにかわいそうだからチャンスをやっただけだ」


「こ、こいつ――――――っ!」


 魔物の一人が怒って突進してきた。もう一人はリング下に下がり、私も慌てて逃げた。二対二の戦いではあってもリングで戦うのは一人ずつ、そのルールを相手が守る気なら私たちもそうする。



『い、いかん!試合開始だ!』


 サンシーロさんが鐘を叩く。私の出番がないままサキーが魔物をまとめて粉砕するのが理想の展開だ。

 某ジュニアチャンピオンは散々宇和島を否定していたのに『宇和島ピンプス』でいいのでしょうか?

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