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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第一章 大聖女マキナ・ビューティ編
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愛の大きさの巻

「そんな魔法が……うーむ。にわかには信じがたいが、もし自在に使えるとしたら素晴らしくもあり恐ろしい。適切に管理しておくべきだ」


「この世の中の発展に役立てるか、それとも封印するか……ひとまずはこの場にいる私たちだけの秘密にするべきです」


 お父さんとお母さんはルリさんをビューティ家に迎え入れることに賛成だった。私との結婚はもちろん保留だけど、どんな相手とも子どもを授かれる魔法の存在を無視することはできなかった。


「タイガー家なんかに彼女を置いておくことは考えられない。その力を利用しようとするも別の誰かに利用されるか、扱いきれずに自滅するかだ」


「それにこの子はジャッキーの内面を見て結婚したいと言ってくれた……素晴らしいと思うわ。ジャッキー、部屋を案内してあげなさい」


 ラームにマユに、短い間に三人目だというのに快く家族にする、来るもの拒まずのスタイル。これがビューティ家のいいところだ。私はルリさんを連れて部屋に向かった。



「ふふ……あの子は私たち家族以外には嫌われ罵られる、だから私たちが溢れるほどに愛を注がなければと思っていたが……」


「過保護に溺愛する必要はもうないのかもしれませんね。大事な仲間が、そして生涯を共にする候補が四人もいる。ジャッキーが自分の力で手に入れた友情と愛ですよ」




 ルリさんに与えられた部屋に向かう途中、周りに誰もいないのを確認してから例の魔法について気になることを聞いてみた。


「あの魔法、どこまで試したの?成功率は?」


「……実はまだ人間での実験はしていません。動物、それに低級の魔物で試しただけです。しかし必ず成功しています。メス同士での妊娠と出産も確認しました」


 人間で試すのは難しい。万が一失敗した場合の被害が大きすぎる。動物や魔物で試したことすら私は抵抗がある。


「『愛し合っている二人』が『共に子どもがほしいと願う時』のみ発動するのは確かです。真の愛がなければ効果がない、これも実験で明らかになりました」


「そうじゃなかったらこんな魔法は永遠に封じるべきだよ。世界の発展どころか滅亡一直線だ」


 性別、種族、近親の壁を越えるのだから、善用の方法も悪用の方法も切りがないほど挙げられる。想像以上に危険な人を抱えることになった。



「そもそもどうしてこういう魔法を?絶滅しそうな民族や動物を救おうとして?」


 どんな魔法やスキルにも必ず始まりがある。ルリさんも何らかの必要があって研究と実験を重ねた。もちろん相当の魔力が必要なはずで、理論だけわかっていても私には使えない魔法だと思う。


「………その理由は………とても単純です」


「え?」


「あなたの妻となりたいから………それだけです」


 その思いだけであんな魔法を完成させたのだとしたら私への愛情の大きさは………。



「この魔法を最初に人間で試すとしたら、わたくしでありたいと願っています。もちろんあなたの子を授かるために」


「ふ、ふへへ………」


 思わず気持ち悪い笑いが出た。これで愛想を尽かされなければいいけど………いや、私の駄目ぶりを見てそのうちいなくなるだろうから同じか。今の私を見たらあっという間に冷めてしまう。


(………あっ、明日は………)


 早速その機会が訪れた。まあルリさんのためにも早いなら早いほうがいいか。


「ルリさん、実は明日………」






 ルリさんが来た次の日、私たちのギルドは全員が同じ任務に出ていた。強制依頼と呼ばれることもある、断れない仕事だ。


「じゃあみんなで的に攻撃しましょう、せーの!」


 魔物の群れを倒しに行くとかダンジョンを攻略するとかそんな大層なことはしない。近隣の人たちを集めてギルドの紹介をしたり魔物退治の講習をしたり、地元との交流を楽しむ場だ。


 普段から周辺の住民と仲良くしておけば、いざという時に協力を得られやすいとサンシーロさんは言う。いっしょにお酒を飲んで話を聞くだけでいいそうだ。



「皆さんこの木を狙って……うわ―――っ!」


「ジャッキー様!しっかり!」


 大きな木を持ったらバランスを崩して転んだ。下敷きになったところを何人かに助けてもらって、本来とは違う一致団結の練習になっていた。


「ああ…ジャッキー!あなた!」


「ううむ……やはり厳しいのか」


 大聖女の仕事があったマキはいないけど、お父さんたちが見に来ているのに失敗続きだ。この調子だと最後のイベントも危ないな。


「ジャクリーン様……」




「ではもう一度打ち合わせをしておく。試合開始の合図と同時にジャッキーが魔法で攻撃、それをサキー様が剣でかき消す……」


 実際に戦っているところを見せて、冒険者になりたい、このギルドに入りたいと観客たちに思ってもらうための試合だ。私たちのギルドに闘技場はなく、ロープで囲まれた小さな正方形のフィールドがある。『リング』と呼ばれ、異世界人が持ち込んだものと伝えられている。


 私とサキーの模擬戦もリングで行われる。真剣勝負じゃないから審判は外からサンシーロさんがやる。


「最後は寸止めでジャッキーがギブアップ、勝者はサキー様!ここまでの流れを一つでも飛ばすと不自然になるから気をつけるように」


 実は審判もいらなかったりする。この試合、最初から展開も勝敗も決まっている。お互いの動きを事前に決めておかないと事故が起きるかもしれないから、観客を楽しませるのが目的の試合ならこれでいい。



「でもサンシーロさん、私とサキーじゃ台本抜きでも勝ち負けは明らかで、見ている人たちもつまらないんじゃないですか?S級の誰かにお願いしたほうが盛り上がったような気が……」


「あの爺ども、全員プライドだけはいまだに一流なんだよ。負け役なんか誰も引き受けやしない」


「ああ、なるほど………」


 ただ負けるだけなら簡単だ。でも今は魅せる負け方が求められている。頭の中で段取りを何度も復習して本番の時を待った。

 今年のソフトバンク強すぎですね。ですがこれくらい強くないとDeNAとの日本シリーズが盛り上がりません。セ・リーグの貧弱な雑魚どもなんか適当にやっても圧倒できるので、今から最終決戦に向けての準備を始めるべきでしょう。三浦監督が横浜の空に81回舞うと予告します。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ルリちゃんの想いに思わずニヤけるジャッキー! あなたの子供が欲しいと言われて満更でもないのかな? ジャッキーちゃんの百合ハーレムの今後にますます期待!!
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