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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第五章 アーク地方での冒険編
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旅の始まりの巻

 私たちの出発の日が来た。魔族のスパイや今回の調査対象であるアーク地方の人間に知られるとまずいことになる可能性があるから、派手な見送りはない。密かに、静かに旅が始まった。


「じゃあ……また後で」 


 まずは私とマキ、そしてラームが家を出る。荷物は昨日のうちに運んでもらっている。


「わかった。ゆっくり追いかける」


 そしてサキー、マユ、マーキュリー。こちらもほぼ手ぶらで出かけ、しかも私たちとは反対の道を通って目的地に向かう。そのぶん時間はかかるから、私たちはしばらく待つことになる。



「よし、じゃあ私たちも出るか。気をつけろよ」


「ええ。あなたこそ用心してください。どこに敵が潜んでいるかわからないのですから」


 私たちと同じ道をマキシーがしばらく経ってから歩き始め、尾行や伏兵がいないか確認しながら後を追う。サキーたちのほうはフランシーヌが向かい、怪しい人影を探す。



「ジャクリーン様……無事に到着できればよいのですが」


「敵が襲ってきたとしても負けることはありえませんが、生け捕りにするぶん時間がかかるでしょうね」


 ルリさんとトゥーツヴァイは先に集合場所で待機していた。私たちが敵に襲われたら、捕まえていろいろ喋らせると決めていた。


 お城の中にスパイがいて任務の情報が漏れていたのか、それとは関係なくビューティ家の屋敷を以前から監視していたのか……それを知ることができれば今後のためにもなる。魔族もしくは革命を起こそうとする集団の計画を逆に私たちが聞き出すチャンスだ。


「魔族だったら怖いです。何をしてくるか……」


「……あなたも魔族の一人なのでは?しかも魔王軍を正式に抜けたわけでもないというのに………」


 ダイもこの旅のメンバーだ。総勢11人という旅の人数が多すぎたか、それとも足りなかったか……全てが終わった時にわかるだろう。





「……おっ、みんな揃っているな。この様子だと……」


 マキシーが到着した。敵の襲撃や罠は一度もなく、私たちの動きは知られていないようだ。


「警戒しすぎましたか?」


「いや、用心に越したことはない。私たちだけでなく王国の滅びに繋がることを考えたら……」


 王家と闘魂軍では国を守れない、その考えで私たち全員の考えは一致している。期限のない旅とはいえ、あまりのんびりできない。



「では行きましょう。そちらのルリ・タイガー様がアーク地方の中心街を訪れたと聞いています。その時の思い出を強く思い浮かべていただければ、私の魔法ですぐに移動できます」


「ありがとうございます。よろしくお願いします」


 私たち以外にも一人、闘魂軍に所属する聖女がいた。この人は転移魔法で私たちをアーク地方に送るとすぐに帰る。役割はそれだけだ。


「帰りはどうしますか?」


「この魔法ならわたしも使えるから平気だよ。じゃあやってもらおうかな」



 オードリー族が来た時にキヨさんの転移魔法で帰ってきたマキは、魔法を唱えている姿を見ただけでこれをマスターしてしまった。


 しかも進化させることまで短い期間で成し遂げた。一人しか飛ばせなかったところを少人数の集団に、限られた人しか使えなかったのを闘魂軍の魔法使いほどの魔力があれば使えるようにした。ほんとうに自慢の妹だ。


「まだまだ改良しないとね。魔法を単純にしたのに性能を上げたから、魔力をたくさん消費しちゃうんだよ。一回使うだけでとても疲れちゃうし」


 そのために私たちを運ぶだけの人が必要だった。この人も仕事を終えたら二日間休むことになっている。それだけ負担がかかる魔法だけど、そのうちマキがもっと使いやすくしてくれるはずだ。



「あの………そんなに大変なら……私がやりますよ?」


「え?ダイが?無理でしょ」


 魔法の才能は私と同じかそれ以下のダイではさすがにできない。たくさん練習しても使えるようにはならないだろう。


「あっ!すいません、言葉が悪かったですね。正確には……私が持っているこれでやります」


 ダイは袋から小瓶を取り出した。中には牛乳のような真っ白な液体が入っている。


「これを使えば、転移魔法と同じことができます。この瓶一つで……全員が往復できる量です」


「えっ!?」 「は!?」


「魔界では珍しくない品物で、安いから誰でも買えます。何本も持ってますから遠慮せずに……」


 レベルの違いを思い知らされた。このままでは魔界の頂点にいる魔王には絶対に勝てない。修行をしたところで、ほんの少し差を詰めるのがやっとではないかと疑問に思ってしまった。



「……どうしますか?帰ります?」


「皆さんの到着を見届けてから戻るように上の者から言われていますので……」


 やることがなくなった闘魂軍の聖女もとりあえずいっしょに行くことになった。一人増えたところで影響はないようで、ダイが小瓶の中身を出した。


「これを一滴ずつ皆さんの頭にかけます。そしてルリさんがかつて訪れたアーク地方の街を思い描けば、次の瞬間には到着です!」


「ではもう始めましょうか。敵に気づかれてしまう前に」


 ルリさんの判断は早かった。私たちの視界が一瞬で変わった。






「よし!着いた!」


「ここがアークの中心街……あれ?」


 目の前に広がるのは山道だった。これを越えないと人の住む地には行けない、しかし最近は山賊や魔物がたくさん出没しているという危険な道だ。


「おいおい、どうしてこうなった?」


「わたくしは確かにアークで最も栄えている場所、それも目的地の一つである道場を思い描いたのですが……」


「じゃあこいつの持ってきた小瓶のせいですね!転移魔法をやり直しましょう!」


 みんなで大騒ぎだ。しかしその中でもマキは静かで、何もないはずのところに手を伸ばして、指先で触れる素振りを繰り返していた。



「………これ、結界が張ってあるね」


「け…結界!?」


「魔法とか道具ではこの先に行けない……誰の転移魔法でも同じだよ、わたしでもね」


 隠したい何かがあるから入れないようにしている、そう考えるべきだろう。不穏な噂の信憑性が一気に増してきた。

 シュン・スカイウォーカーは退団しないような気がしてきました。You Tubeチャンネル『天空の導き』も始まったことですし、しばらくはドラゲーに残りそうです。


 万が一退団するとしたらやはり新日移籍でしょうか。欠場する後藤の代わりか、何なら棚橋か成田あたりを襲撃して、今からでもG1に出てもらいたいところです。

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