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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
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無法の乱入者たちの巻

『ジャッキーとダイが再びリング中央で向き合い……おっと、変な集団がリングに上がってきた!』


 モンスター人間たちが次々とやってくる。ここで私はサキーとフランシーヌがやられたことに気がついた。


『まだロープを越えてはいない!試合に無関係な連中を審判が見過ごすわけがありません!』



「早く下りろ!どういうつもりだ!」


「………こういうつもりだよ、バカが!」


 シデムシのオックが審判に遠慮のない頭突きを食らわせた。うめき声すら出せずに審判は気絶する。


「……………」


「邪魔者は消えたぞ!一気にやっちまえ!」


 ついに全員ロープを跨いだ。私を狙っているのは明らかだったけど、すでに逃げ場はなかった。



「うわっ!いただだだっ!!」


『集団ストンピングだ!リングは無法地帯!』


 あっさりやられて痛めつけられる。反撃なんてとてもできない。


「ジャッキーさん!すぐに助け……うっ!?」


「虫の壁だ!リングが囲まれたぞ!」


 これだけの数を用意されたら、虫が得意、苦手は関係ない。いや、苦手な人は遠くから見ただけでダウンか。



「我々はこの虫どもを無限に召喚できる!お前たちの魔力や根気が尽きるほうが先だ!」


「むむっ………」 「くっ!」


 カササさんやブーンさんと違い、呼び出す虫をただの道具としか考えていないらしい。マユたちが頑張って駆除してもすぐに補充されてしまっては、やる意味がない。



「や…やめてください!私たちは正々堂々の試合をしようと……」


「最強と言われていた蜘蛛のジュンが負けた時点で正攻法は終わり、何をやっても勝てばいいと魔王様は言われた!あのお方がお前なんかに期待しているわけがないだろう」


 魔王軍の方針転換は早かった。同時にそれは魔王がダイの素質に気づいていなかったことを意味している。『未来が完璧にわかる』、『人の潜在能力を全て見抜いている』などといった無敵の能力は持っていないと思ってよさそうだ。


「お前を勝たせてやるんだ。大人しく隅で見ていろ!ただの雑用係が王者になれる……本来なら一生ない機会だぞ?」


 全員で私を戦闘不能にしてからゆっくりと王冠を取り、ダイに渡したところで審判を無理やり起こして決着。悪が勝利を掴もうとしていた。




「……だ、大事な試合なんです!たとえ魔王様でもこの戦いを汚すなら………許しません!」 


 悪者たちに真っ向からぶつかり、正義の炎を燃やすダイ。とても立派だけど、今は危ない。


「なんと不敬な……」 「無礼者め!許さん!」


 私を攻撃していたモンスター人間たちも標的をダイに変えた。私はひとまず解放された。


「こうなったらこいつもやるぞ!こんな試合ぶち壊して、王冠だけ奪って退散だ!それ、いけっ!」 


「ダ、ダイ!」


 止めないといけないのに、ずっとやられていたせいで身体が動かない。このままだとダイが……!



「ぐあっ!手、手がっ!」


「硬すぎる……!まるで効いていない!」


 大人数での猛攻すら難なく凌いでいる。攻撃している側が血を流すほどだ。


「本気の一撃だ!くたばれ……あがっ!!」


 やればやるだけ被害が増えるだけだ。そもそも試合を見ていればダイの鉄壁ぶりはわかるはず。全員揃って頭が悪いとしか言いようがない。



「こうなったら寄生虫だ!ダンゴムシの中身を食ってしまう恐ろしいやつ……こんな時のために待機していたはずだ!」


「へへへ……私はここに。お任せください」


 リングの下から目つきの悪いモンスター人間が出てきた。カマキリに寄生できるテンプターの次は、ダンゴムシを狙う寄生虫の登場か。



「私ならこいつの防御をすり抜けて……ぶげっ!!」


 寄生虫の後頭部に飛び蹴りを入れた。ダイの危機に間に合ってよかった。


『ジャッキーのキックが炸裂!国王様が現役時代に得意としていた『延髄斬り』です!』


『ああ……素晴らしい一撃だった』



 危険な寄生虫はこれでしばらく目を覚まさない。あとはダイに暴れ回ってもらおう。


「ダイ!私はロープの外に出た!今こそあの技を!」


「……はい!アルマジリジウム・ローリング・アタック――――――ッ!!」


 リングは敵でいっぱいだ。何も見ないで転がっても誰かには当たる。人が多すぎて逃げ場もない。


「うぎゃっ!」 「あうっ」


 魔王軍のモンスター人間たちが次々と倒れていく。攻守両方で複数の相手を圧倒できるダイこそ虫組で最強の戦士だ。いや、それ以上の存在になれる。



(だから周りは教えなかったのかも……)


 ダイが自分の実力に気がつかなかったのは仕方ないとして、魔王軍が全員この素質を見逃すというのは考え難い。出世争いで先を越されたくなかったから黙っていたのだとしたら間抜けだけど、人間の世界でもよく聞く話だった。変なところだけ似ているのだから困ったものだ。


「……ダメだ!いったん外に……ぎゃあ!」


「逃がすか!ふんっ!」


 避難しようとする敵は私が倒す。私がサポートすればダイの技の弱点はほとんど補える。


「見事なチームワークだ!ジャッキーはタッグの王者も狙えるんじゃないか!?」


「虫組のお荷物扱いだったダイの力をここまで引き出したんだ。大したものだな」


 私は何も凄くない。優秀なのはダイで、チームを組んだとしても九割はダイに頼って戦うことになるだろう。



『おお!乱入してきた魔王軍をジャッキーとダイの二人で全員撃退しました!チーム・ジャッキーの力を借りることもなく、たった二人で!』


「さすがジャッキー様!隣のやつも……まあそこそこ」


「ただの雑魚ではなかったようですね……」


 みんなもダイを認めるしかなくなった。この強さは本物で、文句のつけようがないと。



 

「さて……邪魔な連中はいなくなったけど………」


「試合再開って空気でも………あっ!?」


 空から黒い一団が迫ってきた。その姿は……またしても虫のモンスター人間たちだった。


「ま…また乱入!」


「アハハハ!私たちはさっきまでのやつらとは違う!その名も『真・虫組』!私たちの中で最も弱い者すら蜘蛛のジュンより数倍は強い!」


「な……なんだって!?」


 とんでもないことになった。魔王軍は私たちが思っていた以上に本気だった。


 

「その試合だけじゃない!城や街もぶち壊してやる!もはやお前らは………」


 真・虫組が急にその場で止まった。これ以上進めないという感じで、空中に留まっている。


「お……お前は………」


 かなり動揺しているようにも見えた。その視線の先には………。




「お姉ちゃん!ただいま!」


「マキ!」 


 私たちにとっては最高の、しかし敵にとっては最悪の乱入者が登場した。

 第四章の更新は明後日で終了となります。『ねこあつめ2』の無課金部門世界大会を目指すための修行に入るので、再開は未定です。

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