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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
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恐怖の寄生虫の巻

 残る二試合は湖のリングと廃墟のリング。湖ではマキシーがカマキリのショーと戦っていた。島と呼ぶには小さすぎる陸地にリングが置かれていて、激しい攻防があれば水中に落下することもありえる。


 今のところはマキシーもショーも濡れていない。マキシーは幻術使いで、ショーは組んで戦おうとしている。派手な展開にならないおかげで助かっていた。



「ちっ……まただ!こいつ、魔法は効いているはずなのに!」


「………」


 水に落ちないから運があったということでもなかった。マキシーはとても戦いにくそうにしている。


「眠りながら、幻覚に包まれながらも前に出てくる……どうなってんだよ!?」


 ショーの目を見ると、確かに『まともではない』。どこを見ているのか、何を考えているのかわからない。それでもマキシーに向かって鎌のような手を使って攻撃してくる。



「こいつ……元からイカれてるのか?変な植物や洗脳で戦い続けているとか……」


「キシャアッ!!」


 振り下ろされた鋭い右手をマキシーはぎりぎりで避けた。ショーの足はふらふらしていて、足を痛めている可能性もある。でもマキシーの魔法が効いているとすれば、そのせいだと考えたほうがいい。


「ふらついて鈍いおかげで逃げるのは簡単だ。でもこの不気味さのせいで気が休まらねーな」


「………」


 よだれを垂らしながらへらへら笑っているショー。確かにこれは近づきにくい。普通にしていれば美人なのにもったいないと思った。




「ショーはいつもあんな感じなの?」


 最初から狂っているのか、作戦として危ない人を演じているのか、マキシーの魔法のせいなのか……ダイに聞いてみた。


「は…はい。ショーさんは……ほとんど誰とも会話もしません。短い受け答えはできますが……いきなり笑い出したり壁や地面に自分の頭を打ちつけたりで、みんな距離を置いています」


 今回のようにそれぞれ別の場所で戦うならまだいい。しかしチームとして全員で行動する時にショーみたいな存在がいたらとても困る。



「あの緑色の髪の毛に立派な鎌……ちゃんと手入れすればもっときれいに輝くはずです。やってあげたいなと思うんですけど、怖くて言えなくて……だめですね、私って」


「そんなことない。そう思っているだけでダイは偉いよ。仲間のことを気遣える立派な人間だ」


 ダイは魔王軍にいたらもったいない。うまく引き抜いて私たちといっしょにいられないか、真剣に考えよう。


「あ、ありがとうございます……えへへ」


「………」 「………」 「………」


 その場合、サキーたちをどう説得するか。魔王軍と交渉するより厳しいかもしれない。



「マキシーは今のところ互角、マユも頑張ってるね。実力差はないように見える」


 マユは蜘蛛のジュンと一進一退の戦いを繰り広げている。どこかで必ずくるチャンスをものにできれば勝てそうだと考えていたら、ダイが首を傾げた。


「……おかしいですね。ジュンさんならもっと早く終わらせるはずなのに……あっ」


「どうしたの?」


「ジュンさんはまだ本気を出していません。自分より弱い相手に稽古をつけている……私たちとのトレーニングと同じ戦い方です」


 部屋の空気が変わった。ダイがここで嘘をつく理由はない。このままいくとマユは……。




『先に試合が動いたのは湖のリング!マキシーがキックの連打でショーの膝や脛を攻める!』


 弱そうな足から崩そうとしていた。ショーは防御の動きも鈍く、倒れるのは時間の問題に思えた。


「こんなやつに噛みついたら変な病気を移されそうで怖い!こいつはただの雑魚、この鋭い歯も魔法もいらない!」


「キシュッ!キシュッ……」


 打撃だけで仕留めるつもりだ。魔王軍の精鋭相手に自分の得意技を使わずに勝つ、そんな甘い話があればいいけど、どうなるだろう。



「それっ!これでもう立てないだろ……あれ!?」


「……………」


 とどめのつもりで放った強烈な蹴り。ところがそれをショーは難なくキャッチした。やられ放題だったのに、まるで別人だ。


「くそ!さっさと放せ………え」


 マキシーの顔が恐怖に染まった。いきなりどうしたんだろうと不思議に思っていたら、すぐに私たちもその理由を知ることになった。



「お……お前!その口……口から出ているのは!?」


『ショーの口から細長いものが飛び出している――――――っ!!しかもうねうねと動いているぞ!』


 気持ち悪すぎる!我慢できずに目を逸らしてしまった。私の周りでも試合を直視できている人はほとんどいなかった。



「これ以上この身体を攻撃されると困るからね……そろそろ全力でいかせてもらっちゃうよん」


「喋れるのかよ!?お、お前は!?」


「アタシ?まあ教えてあげてもいいか。カマキリのショーの身体と精神を乗っ取った、ハリガネムシの『テンプター』。よろしくねっ……と!」


 どこか小馬鹿にしたような口調での挨拶を終えると、テンプターは再びショーの口の中に戻った。そしてマキシーをリングに叩きつける。


「ぐえっ!なんてパワーだ……」


「アタシもモンスター人間……寄生虫だけどね。こいつを操って好き勝手やらせてもらっちゃってるよぉっ!」



 謎ばかりだったショーの正体はまさかの寄生虫だった……いや、正体という表現は正しくない。異常な見た目や言動の原因と言うべきか。


「聞いたことがあるぞ……繁殖のために他の虫の身体を奪う虫がいると。用が済んだら捨てて、残された虫はすぐに死んでしまうと!」


「普通のハリガネムシならそうかもね〜。でもアタシはもっと長い時間……数年、数十年と同じ宿主に寄生できちゃう!ま、その前に使い物にならなくなるから交換するけど!キャハハ!」


 恐ろしい生物だ。もし人間にも寄生できるとしたらもっと怖い。戦っている最中に何かされないかと考えたら試合にも集中できなくなる。マキシーは想像以上に厄介な相手を目の前にしていた。



「そっちの幻術も全部このショーちゃんが引き受けてくれてるから、アタシには効いてないってわけ。ちょっと変な動きになっちゃうのは仕方ないけどね〜〜〜ん!」


「……相性最悪の敵だな………」 

 EVILが乱入、介入、反則の封印を宣言しました。このままクリーンファイトを続けると本気で信じているファンはいるのか疑問です。そして拷問の館が本当に反則をやめたら新日本は暗黒一直線でしょう。

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