表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
195/273

サリーとシロの出会いの巻

 サリーはとある王国の兵士だった。魔法剣士として数々の戦場で活躍し、順調に出世していった。それでもいつかは自分も誰かに倒され、惨めに死ぬのだと思っていた。その王国は戦争ばかりしていたので、安らかな死などありえない戦いの日々だった。


 そしてその日は来た。激しい戦闘の末に彼女は深手を負い、どうにか静かな岸辺まで逃げてきた。魔法や道具を使って応急処置はしたが、いつ事切れてもおかしくない危険な状態だった。



「……寄るな、雑魚どもが!」


 大型の動物や下等な魔物たちがサリーの血と肉を求めて迫ってきたが、彼女は全て返り討ちにした。起き上がれなくても右腕さえ動けばこのレベルの敵は難なく退けられる力があった。


「……こいつら、私がもうすぐ死ぬと思っているのか。動けない無抵抗な相手しか狙えない愚図どもめ………」


 弱った獲物を狙うのは自然界では当然のことで、人の住む場所に避難しなければ次々と敵が襲ってくる。しかし真っ向勝負を好むサリーはその考えが大嫌いで、意識が続くうちは『死んだ肉しか食べられない弱くて卑怯な連中』を打ち倒し続ける決意でいた。



「……この音は………なんだ、蚊か」


 どんな小さな生物でも殺してやると決めていたはずなのに、なぜかその蚊だけは見逃す気になった。それどころか自ら腕を差し出し、血を飲ませた。


「どうせ大した量じゃないんだ………飲め。私は自分の名前もこの血もここで途絶えることになりそうだが、お前は繋げ。私の血を使って………」


 子孫を残すために必死なのは動物や魔物も同じはずなのに、蚊を助けたのは完全に気まぐれだった。しかしこれがサリーの運命を変える大きな分かれ目になった。




(無事に卵を産めた。もしあの時あの人がいなかったら……絶対に無理だった)


 とても臆病でなかなか動物に近づけず、チャンスが来ても焦ってしまい失敗続きの蚊がいた。しかしサリーが安全にゆっくりと飲ませてくれたおかげで吸血に成功し、生涯最大の仕事を果たすことができた。


(もしできることならあの人にもう一度会って……恩返しがしたい)


 サリーを見つけるだけでも難しいのに、蚊が人間の役に立つというのはその何倍も困難だ。しかしその願いを叶える力を持つ強力な存在が彼女に目をつけた。



「よかろう……余についてこい」


「………!」


「恐れることはない。余は貴様の味方だ。貴様が再会を望む女もまた助けを求めている……さあ、参るぞ!」


 声の主の姿は見えなかったが、眩しい光の中に誘われたので迷わずに飛び込んだ。するとこれまでの自分とは違う、別の何かに生まれ変わったような感覚に満たされた。




「………な、何者だ!?」


 サリーは誰も住んでいない小屋を見つけ、身体を休めていた。ひとまず命の危機は去ったが、左腕がこの先使い物にならないことを知り、自分は戦士として終わったのだと絶望した。すでに時間が経ちすぎて、最上級の治癒魔法でも完全には回復しない重傷だった。


 そんな時、突然の来客が現れた。扉や窓は閉じられたままなのにいつの間にか自分の目の前にいたその者は、これまでサリーが戦った強敵たちよりずっと格上だとすぐにわかった。



「数日前、余は貴様の行いを見た。貴様は自分が救った小さな虫によって救われることになる。そのためには……その左腕を余に差し出せ」


「ど…どういう話だ?全く意味がわからない!」


「余が貴様に新たな力と相棒を授けようと言っている!破壊された腕一本でこれまで以上に強くなれるというのに、何を躊躇うのか!」


 謎の強者の顔は見えなかった。しかしそのそばに一匹の蚊が飛んでいることに気がつき、信じると決めた。あの時の蚊だと直感でわかったからだ。



「う……うああああ――――――っ!!」


 サリーは自分で左腕を斬り落とした。その覚悟をよしとした大物は、サリーに闇の力を分け与えた。取り外しができる新しい腕も与え、その中で蚊が生活できるようにした。


 蚊にも新しい命を授けた。ただの虫ではなく魔族となったその蚊はシロと呼ばれ、サリーの腕の中に入って彼女の血を主食として生きるようになった。



「絆を深め、余を喜ばせよ。そうすればいずれ真の祝福を与えてやろう。そう、作り物ではない腕と、体内で生命を維持する必要のない身体を……」


 シロが外に出て活動できる時間には限界があるが、訓練を続けて少しずつ伸ばしていた。その時の身体の大きさも最初は普通の蚊とほとんど変わらなかったが、今では人間の頭二個分まで成長した。  


「余に仕える精鋭たちの中でも高い地位を勝ち取る素質に満ちている。貴様らが余の右と左に立つ日は遠くないぞ」


 いずれはそれぞれが魔王軍の幹部として自分を支える立場になるだろうと、二人に力を与えた人物……魔王は期待した。そしてサリーとシロもその気になった。






『猛烈な攻撃は続く!サキー大ピンチ!』


「この試合に勝てば魔王様は私にさらなる力をくれると約束してくださいました!もうサリーさんの腕の中で暮らさなくてもよくなるのです!」


「ぐあっ……うあっ!」


 反撃の機会がなく、サキーの敗北が迫っている。こんな展開になるなんて夢にも思わなかった。


「制限がなくなれば……サリーさんとあんなことやこんなことがいくらでもできる!もう待ちきれません!」


 魔王軍での出世とはまた違う願いを持っているようだ。身体は小さくてもその思いはとても強く、攻撃の重さに現れていた。



「ぐ……なるほどな。魔王軍のやつらは洗脳に近い形で魔王の言いなりになっていると聞いていたが……お前らもいいように利用されているな」


「フン……魔王様の奇跡にどんな意図があったとしても、私とシロの絆には全く影響がない。あの方の力を使わせてもらっているのは私たちも同じだ」


 商売の関係と同じだ。互いに納得して利益を得ているなら、相手の思惑は大した問題ではない。



「きっかけよりも大事なのは今です!私たちの幸せな未来のために……勝たせてもらいます!」


「………!」


 シロの踏みつけに力が入り、僅かに動きが遅くなった瞬間をサキーは逃さなかった。シロの足を掴んだ。


「なっ!?」


「やっと捕まえたぞ。害虫退治の始まりだっ!」


 両腕でしっかりと足を取り、捻りを加えて自ら倒れ込んだ。



『強烈な足投げ――――――っ!!回転しながら投げ飛ばし、まるで竜巻のようだ―――っ!!』


 サキーの反撃が始まった。まだまだ試合はここからだ。

 サキーが最後に出した技はドラゴンスクリューです。キン肉マンでは六鎗客編あたりからこの技の頻度が増えた気がします。


 

 いよいよ明日からプロ野球開幕!予想が簡単なパ・リーグとは違い、セ・リーグは大混戦なので難解です………そう、2位から6位が。


 優勝は間違いなく横浜DeNAベイスターズ。人気、実力を兼ね揃える最強チームが他球団を粉砕するでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ