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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
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毒針の秘密の巻

「フランシーヌさん……穏やかな方だと思っていましたが、とても熱い人なんですね。いや、炎や太陽を魔法で出すからってことではなくて……」


「ははは、ダイの言いたいことはわかってるよ。フランシーヌは私と会う前からとても熱かった。世界を平和にするために大聖女を殺すとか……少し間違った方向に燃えていたけど、もうその心配はない」


 試合中に暴走することはなくなり、マキとも良好な関係でいる。荒々しさが消えたから弱くなったという声もあるけど、私は逆の考えだ。マーキュリーと同じように、愛を知ったフランシーヌは強くなったと信じている。



「みんなに愛されているんですね。いいなぁ……私なんてドジでのろま、しかも不器用だから嫌われ者で……」


「私だって少し前まではそうだった。大聖女になれなかった落ちこぼれ、ただの汚物だって馬鹿にされてたよ。優しくしてくれたのは家族だけだった」


 たまたま恵まれた環境にいただけだ。気がついたらそこにラームやマユが加わり、チーム・ジャッキーの輪が広がっていった。


「私にもそんな人がいつか……」


「ダイならすぐ見つかるよ。もし魔王軍や魔界にいい人がいなかったら、ジェイピー王国はいつでも大歓迎だよ」


「………はいっ!ありがとうございます!」


 いい笑顔だ。やっぱり笑っているほうが素敵だ。



「………」 「………」 「……………」


 マーキュリーが帰ってきたことで、私への冷たい視線が三つに増えた。みんな何かを勘違いしているらしく、ダイも少し怯えているからやめてもらいたい。




『フランシーヌとトメ、共に火は消えた!しかしダメージが大きいのはフランシーヌのほうだ!』


「お前の覚悟……本物のようだな。いざとなれば自分ごと太陽で焼いてしまうつもりか」


「ええ。引き分けなら王座の移動はありませんから。あなたは絶対に勝利が必要ですが、私は両者死亡の痛み分けでも構いません」


「……本気の目だ………素早く倒すしかないな」


 フランシーヌの狂気は失われていなかった。自分の命を犠牲にするのはやめるように言ったはずなのに、リングで燃やし尽くそうとしている。



「あなたを脅して接近戦を回避する方法ならいくらでもあります。しかし私は自分の心の中にあることのみを口にしました。あなたとの違いを示すためです」


「………いきなり何を言っている?何の話だ?」


「ハチのトメ、あなたは嘘をついています。試合を有利に進めるためなのか、見栄を張っているだけなのか……どちらでも構いませんが、よくありませんね」


 フランシーヌが見抜いたトメの『嘘』。勝敗に影響するとても重大なものだった。



「あなたは毒針を使う必要がないと言いました。しかし実は使えないだけ!当然そこに高潔な信念や意志など存在しません」


「………!!」


 トメの反応を見る限り、どうやら正解のようだ。フランシーヌは解説を始めた。


「この大事な戦いで力を温存して戦うなんてありえません。もしそれで負けたら魔王軍に帰ることはできなくなるでしょう。全力を出しての敗北ならまだ許されるかもしれませんが……」


「……………」


「針に毒はほとんど含まれてないか、針そのものに問題がある……どちらにせよ、実戦で役に立つような技ではない。どうです?当たっていますよね?」


 正直に話してしまうと相手は警戒する必要がなくなる。使わないだけと言っておけば、追い詰められたら使うかもしれないと思わせることができる。よく考えられた作戦だった。



「……ならばお前の読みが正しいかどうか!食らって確かめてみろ――――――っ!!」 


『毒針の乱射だ!今度はフランシーヌの強固な炎の守りを突破できるのか!?』


 仮に毒がなかったとしても、針が刺されば当然痛い。ここは魔法で防御するしかない場面だ。


「………」


『なんとフランシーヌ、炎の壁を作らない!風起こしで自分が焼かれるのを恐れたか!?』


 今のフランシーヌは前のめりになっている。被弾覚悟で前に出るのかと思いきや、実は防御しなくていい根拠がフランシーヌにはあった。



『フランシーヌを次々と襲う……おや?』

 

「………」 


「うぐ………!」


 針はフランシーヌの身体に当たったものの、刺さらずに落ちてしまった。そしてこの毒針攻撃は罠で、針の後ろから飛びかかってきていたトメの両腕をフランシーヌがしっかりと掴み、捕獲していた。



「……ぐぐ………読まれていたか!」


「あなたの毒針……先端が丸いですね。これでは刺さるはずもなく、他の攻撃方法を探すしかなかったのも納得です」


 炎の壁で防御していたら、トメの奇襲が見えずに危なかった。毒針は無害だという賭けに勝った。



「さて……終わりにしましょう。この太陽で!」


「まさか!自分もろとも焼く気か!」


 目の前の悲劇を止めたくてもフランシーヌたちはずっと遠くのどこかにいる。私のために命を燃やしてしまうなんて………。


「………いえいえ、こんなところで死にませんよ。焼かれるのはあなた一人です」


「あ……あれ?」


 フランシーヌの雰囲気が変わった。私の王座を守るためなら命も惜しくない、そんな危うさがなくなった。



「ジャクリーンさんに生きることの大切さを教わり、何があっても生き続けると決意しています。命を捨てるような真似はジャクリーンさんへの裏切りです」


「まさか……!嘘をついていたのはお前もか!」


「何をするかわからない危険な人間だと思わせるのが狙いでした。あなたの持ち味を奪うには離れてもらう必要がある……うまくいってよかったです」


 私も完全に騙された。良く言えば頭脳プレー、悪く言えばずる賢い作戦だ。フランシーヌも私といっしょにいるうちに、柔軟な考え方を身に着けたようだ。



『フランシーヌが太陽を出した!かなり遠くにあるような……』


 これではすぐに命を奪うほどの熱気はない。しかしこの位置がちょうどよかった。トメだけを苦しめて自分はダメージを受けないようにするには最高のところに太陽があった。



「熱っ!熱っ!熱いっ!」


 トメが悶絶する。このまま待っていればギブアップするか戦闘不能になるけど、フランシーヌはトメを更に高く上げた。


「溶けて死にそうだ〜〜〜っ」


「安心してください、太陽から遠ざけてあげますよ!ただし少々手荒になってしまいますがね!」


「手荒…はっ!?」


 もうトメはどうすることもできなかった。



「『ブリュレ・ボム』――――――ッ!!」


 自分の頭の上までトメを持ち上げ、一気にマットへ叩きつけた。



「がは―――っ………」


『トメは……動けない!勝負あり!フランシーヌがハチのトメを倒してチーム・ジャッキーの2連勝となりました――――――っ!!』

 SSWQUEST、本日開催!シュン・スカイウォーカーが近いうちにユニットを追放されるという予想を多く見かけますが、今更真人間には戻れないでしょう。まだEVILやOZAWAのほうがベビーターンの見込みがあります。

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