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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
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トメの戦い方の巻

『フランシーヌとハチのトメ、どちらも見た目に反して強烈な打撃!激しい応酬はいつ決着するのか!?』


 フランシーヌは細いし、トメも恵まれた体格とは言えない。それでこのパンチやキックの威力はすごいけど、二人とも得意な戦い方はこれではない。



「そろそろ本気を出すか!フンッ!」


 トメが毒針を二発飛ばした。この太さとスピードだと、命中したら毒に関係なく大ダメージだ。


「こんなもの…私には届きませんね」


『フランシーヌが自慢の炎魔法で針を燃やす!あっという間に溶けて消滅―――っ!』


 さすがの炎だ。マヌーが使っていたボルケーノパワーに全く見劣りしていない。



「ならばこいつはどうかな!」


『おおっとマヌー、なんと指からも毒攻撃を発射!』


 十本の爪が針となってフランシーヌを襲う。全身が危険だとすると、とてつもない強敵だ。


「………」


 しかしフランシーヌならこれも全て炎でガードできる。前の試合のマーキュリーのようになかなか攻撃に移れないとしても、とりあえずノーダメージでいけそうだ。



「あなたの兄…ムサシの毒は身体を痺れさせる麻痺攻撃でした。兄妹ならあなたも同じですか?それとも別の何かだったりしますか?」


「……試しに食らってみればわかる」


「ふふ……やめておきましょう」


 威力や毒の種類を知るためにあえて受けるのは無意味だ。知ったところでそれを活かす機会はなく、そのまま倒されて終わりだ。




「トメの毒の正体……こっそり教えてくれないかな?」


「すいません、私にもわからないんです。訓練の時はあの針を使うことが全くありませんし……いや、試合でも見たことがないですね。今日が初めてです」


 知っていても教えないだろうけど、ダイの様子からするとほんとうに何も知らないようだ。味方にも隠しているほどだから、恐ろしい秘密がありそうで怖い。


「その割には使いまくってますけどね。全部防御されていますが」


「………確かにそうだね」


 とにかく不気味だ。フランシーヌが先に大技を当ててトメを倒し、『いろいろ謎が残ったけど勝ったからもういいや』と笑える展開になってほしい。




「……さすがだな。無傷で防ぐとは……」


「終わりですか?それならこちらから!」


 フランシーヌが両腕を真上に上げると、太陽が出現した。早くも必殺技を出すようで、マーキュリーと同じく一撃で決める構えだ。


「兄妹揃って同じ死に方になりますね。仲が悪かったようですから、お揃いの最期というのは不満かもしれませんが」


「………」


「もしそれが嫌なら棄権してください。太陽の力は加減ができません。あなたが灰になってからでは遅いので……」


 何も残らないほど燃やし尽くされたら、さすがにマキでも回復できないだろう。まさに完全なる死だ。



「ではいきますよ……ヤア!!」


 トメが警告に応じないので、フランシーヌは太陽を放った。これで私たちの2勝目は決まり……ではなかった。


「……ウラァッ!!」


『トメが羽を使って風を起こす!強烈な風で観客や花々も飛ばされそうなほどだ!』



 背中の羽で生み出した強風。あまりに強く、太陽を止めてしまうどころか押し戻した。


『フランシーヌ危ない!自分の太陽が襲いかかる!』


「………!!か、解除っ!」


 消そうと思えばすぐに消すことができる能力で助かった。しかし安心している暇はない。消滅した太陽の奥からトメが距離を詰めてきていた。



『ここで急接近!指の先と下半身の毒針を直接刺す気だ!』


 この距離からだと炎の防御が間に合わない。それでもいつ針が飛んできてもいいようにフランシーヌが身構えていると、トメは予想外の攻撃できた。



「タァ――――――ッ!!」


「うぐっ……!」


 飛び膝蹴りがフランシーヌの胸に決まり、その勢いでフランシーヌは倒れた。動けなくしたところで今度こそ毒針かと思いきや、


「がはっ!」


『その場飛び逆回転!フランシーヌを押し潰す!』


 体重が軽いトメでも勢いやスピードが技の威力を上げている。自分の何倍も重い相手でもこうやって攻め続けたら崩せるという、お手本のような攻撃だった。しかも今回はフランシーヌも軽量級、守備力は高くない。



「どうした!私なら勝てると思ってわざわざこのリングを選んだんじゃなかったのか!」


『容赦ない足攻め!右足は破壊寸前か!?』


 関節技でフランシーヌを痛めつけるトメ。今なら毒針を刺し放題なのに、その気配は一切なかった。


「なぜ……毒を使わずに正攻法の技だけを?」


「使ってほしいのか?残念だがお前相手ならこれで問題なく勝てる!生まれつきの能力に頼らずに圧勝してしまう、それが私の求める強さだ!」


 火山ありきのマヌーとは違う。下劣だった彼女の兄とも全く違う。敵ながら立派だと感心させられた。


「ハチとしての力は使わないが、手加減はしない。この試合に勝てば魔王軍の幹部に昇格できる……人生を左右する大一番だからな!」


「ぐうっ!あぐっ………」


 締め上げがさらに厳しくなり、フランシーヌは苦しい。大事な勝負でなければすでにギブアップしているだろう。



『フランシーヌが敗れた瞬間にジャッキーは王座から陥落、伝統の王冠が魔界に流出する大事件となります!』


(ジャクリーンさんのために、そして世界の平和のために……ここで負けるわけには!)


 フランシーヌの目は死んでいない。逆転の道はまだあると確信していて、闘志の炎が宿っていた。



「そろそろ折らせてもらうか……つっ!?」


「ぐ〜〜〜〜〜〜っ!!」


 勝負を決めにかかったトメが慌てて技を解き、ジャンプして逃げた。フランシーヌの右足が燃え始め、トメにも火が乗り移った。


『な、なんと!フランシーヌ、自らの足を発火させた――――――っ!!』


 強引すぎる脱出方法だ。トメはマットを転がって消火し、フランシーヌも魔法を解除して火は消えた。



「……私をどかすことはできたようだが……ひどい火傷だな。折られるよりはまだマシってことか?」


「そ…その通りです。あなたたちの手に王冠が渡れば世界は必ず災厄で満たされる。人々の笑顔……その中でも特にジャクリーンさんの笑顔は必ず守ってみせる!」


 フランシーヌの気迫がトメを後退させ、この先どうなるのか全くわからなくなった。

 ハチのトメ……ハチのモンスター人間で、フランシーヌに敗れたムサシの妹。凶暴すぎて魔王軍に入れなかった兄と違い、理性的な一面や技術を使った戦いも見せる。名前の元になったのはGSバンド『ザ・ハプニングス・フォー』のトメ北川。音楽の実力者揃いのバンドだった。

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