表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
189/273

蝉の弱点の巻

『火山の力を使ったボルケーノ・パンチ!氷の壁を簡単に破壊され、マーキュリー絶体絶命!』


「マーキュリー!」


 こんな攻撃を食らったらどろどろに溶けてなくなってしまう。思わず目を閉じた。



「……むっ!この手応えは………」


『パンチが炸裂したのは氷の像!本物のマーキュリーは離れた場所に逃げていた!』


 たった数秒の間に自分そっくりの像を作り、避難まで完了していた。マーキュリーの戦いを見れば見るほど、どうして私が勝てたのかわからなくなる。



「こいつ……!火山弾乱れ撃ち!」


「………!」


 今度は遠距離攻撃だ。腕から危険な岩を次々と飛ばしてきた。


『攻め続けるマヌーの勢いは凄いがマーキュリーも負けていない!全弾回避だ!』


 基礎能力が高いマーキュリーなら、特別な力を使わなくても戦える。守備は国宝級の防具に頼りきりの私とは大違いだ。



「なかなかやるな。しかしお前に休む暇はない!」


「………氷の大盾!」


 次にマヌーが放ってきたのは真っ赤な液体、マグマのようなものだ。広範囲になったぶん威力が弱まったか、マーキュリーの氷でガードできた。


『またしても完璧な防御!受けきってみせた!』


 やはりいざという時は氷魔法で防ぐしかないようだ。これが続くと反撃のための体力と魔力がなくなってしまう。だからマーキュリーも温存しながら戦おうと努力しているけど、マヌーの攻撃が止まらない。



「……マヌーの試合はいつもあんな感じなの?」


「あっ……はい。とにかく速いです。ほとんどの試合が数分で決着します……もちろんマヌーさんの全勝です」


 あの猛攻はそんなに長い時間耐えられない。体力切れを待つよりもカウンターを決めて倒すほうがまだ現実的に思える。




「ん……パワーが切れたか。再補充だ!」


 マヌーの声に反応し、火山が噴火する。使い切ってもすぐに調達できるなら、出し惜しみのない全力攻撃も納得だ。


「いつかはお前も防御に失敗する!何発目で当たって死ぬか、見せてもらおう!」


「………」


 頑張って避け続けても戦況はよくならない。それでもマーキュリーは諦めずに反撃の機会を探している。火山弾を全て寸前でかわし、マヌーの動きを観察していた。



「……なかなか粘るじゃないか………なぜだ?滅亡したも同然のオードリー族ごときに負けたくせに」


 さすがに少し疲れたようだ。マヌーは攻撃の手を止め、マーキュリーの強さの秘密を知ろうとする。回復のための時間稼ぎも兼ねているのだろう。


「あなたは私が弱くなったと言った。ジャクリーンに負けて愛を知ったせいで真の強さを失ったと……」


 マヌーの狙いがわからないマーキュリーではないはず。それなのに会話に乗ったのは、何か理由があるに決まっている。



「私はどうしてもこの試合に勝つ必要がある!ジャクリーンが私を救ってくれたと証明するために!愛の力こそ真の強さをもたらしてくれる、それをあなたに教える!」


「……ふん、何が愛の力だ。それなら私はお前の何倍も強い。魔王軍に入ってからの私はモテモテ、何でも言うことを聞くかわいい子が何人もいるんだよ」


 マヌーが蝉として生きていた時はオスだったのか、それともメスだったのか。寿命を全うしたらしいけど、ちゃんと次世代に血を残せたのか。どんな答えだとしても、今のほうが生きていてずっと楽しいだろう。


「魔王軍にいれば何でも手に入る!だがまだまだ足りない!あの王冠を持ち帰れば更に高い地位を魔王様からいただき、たくさんの金と土地、そして愛人たちを得る!」


「………」


「ジャクリーン・ビューティとの安楽な毎日に逃げたお前と進化や栄光を求めて魔界へ向かった私……人生の濃さがまるで違うのは誰の目にも明らかだ!」


 どちらが正しいか、愛の強さはどちらが上か……。マヌーが勝てば残りの試合は意味がなくなるから、攻防が落ち着いていたいくつかのリングでは動きを止めて、マーキュリーとマヌーの戦いを見ていた。各地の会場にも全試合を同時に観戦できる石の壁があるようだ。




「お前たちのちっぽけな愛ごと溶解してやる!火山よ、私に力を与えよ――――――っ!!」


 三度目の噴火だ。もし本物の噴火なら、リングの二人と観客たちはとっくに死んでいる。噴火から技まで、全てマヌーの能力によるものだ。



「これで決める!最高の一撃を食らわせるために、ボルケーノパワーを……」


「その力は使わせない!トアッ!」


 溶岩がマヌーの右腕目がけて飛んでくる、その時だった。マーキュリーがとても小さな氷の塊を放った。


「そんなちっぽけな氷で止められるか!パワーの差がありすぎる!」


 マーキュリーの氷はとても正確で、見事に命中した。でもマヌーの言う通り、一瞬で溶かされるだけだと皆が思った。



「そう、ただの氷なら………」


「な……なにっ!?」


 その氷はとても黒かった。マーキュリーの闇の力が働いているのは明らかだった。


「私の闇でもあなたと真っ向からぶつかれば負けるかもしれない。一か八かで前に出る選択もあった……しかしこの機会を待っていた」


「す、全て飲み込まれている〜〜〜っ!!」


「これまでの二回、全く同じ軌道であなたの右腕に溶岩が飛んできた。だから狙いを定めるのは簡単だった。そして闇の力を小さな氷に凝縮させれば……」


 溶岩はマヌーの右腕に届く前に消滅した。そしてマヌーがすぐにもう一度噴火を試みないところを見ると、少し間を置かないとパワーの補充はできないということのようだ。



「あなたの前世は蝉だった……それが真実だと実感した。素晴らしい集中力と絶え間ない強烈な攻撃は、短い命を全力で駆け抜け、一瞬も無駄にしたくない気持ちが伝わってきた」


「ぐっ………」


「しかし今のあなたは人間……あまりにも一直線で我慢ができない生き方は災いをもたらす。早く結果が出る近道だけを走り続けたせいで、実は脆く真の強さがない!」


 火山の力に頼り、ひたすら攻めるだけの試合。今回のように能力を封じられた時はどうするつもりだったのだろう。全く何も考えていないわけではないとしても、マーキュリーに通用するほどの対策をしているようには思えなかった。




「時間が大切なのは私も同じ。早く終わらせてジャクリーンのもとに戻る……」


『ついにマーキュリーが前に出た!その背中からは大きな闇の手が出現!この技はスーパー闘技大会の決勝戦で……』


 マーキュリーの確殺技だ。のんびりしていたらまたボルケーノパワーを補充されるから、一撃で決めるしか勝機はなかった。

 2025年のNJCはデビッド・フィンレー選手が日本人離れしたパワーで優勝。おめでとうございます。しかし予想通りバレットクラブの内紛ストーリーはあまり膨らまず、NEVER6人を争う程度でひとまず終了となるのでしょうか。(闇王は狙いを辻に変えてしまったし、フィンレーとゲイブは仲良しのままだし、SANADAやジェイクは正直もうどうでもいいし……)

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ