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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
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ボスの正体の巻

 最初にリングに降りたのはサキーだった。場所はどこかの競技場で、観客が全員魔物であることを考えればここは魔界だ。完全に敵地での試合になる。


「むっ……チャンピオンではないのか」


「蚊のサリー……だったか。お前程度、ジャッキーが出るまでもない」


 相手もサキーと同じく目つきが鋭く、剣を持っている。性格も戦いのスタイルも似た者同士の勝負になるかもしれない。




 次はマーキュリーだ。戦いの舞台はなんと火山のそばで、観客はみんな薄着か裸だ。


「……お前は確かマーキュリー。ジャクリーン・ビューティと出会うまでは冷血な殺し屋だったとか……私と同じだ」


「蝉のマヌー………ジャクリーンのために倒す。あの時より今のほうが愛を知ったぶん、私は強くなった」


 ダブジェ島のような温泉で栄えているところのようだ。人も魔族も同じくらいいるようで、ここは人間界と魔界のちょうど真ん中あたりか。




「フランシーヌ……もしチャンピオン以外がここに来るとしたらお前しかいないと思っていた」


「フフフ、当然です。対戦相手を選ばせてくれたのはあなたたちのほうですよ、ハチのトメ」


 フランシーヌの相手は毒針が恐ろしいハチのモンスター人間だ。どこかで見たことがあるような………。


(あっ………)


 闘技大会でフランシーヌが命を奪ったのもハチのモンスター人間、ムサシだ。何か意図があるはずだ。




 マキシーの相手はカマキリのショー。マキシーが目の前に立っても何も話さないどころか視線すら合わせない。


「……………」


「不気味なやつだな……さっさと倒して帰ろう」


 リングはきれいな湖の中央にある小さな陸地にある。この湖の色はエメラルドグリーンというらしい。




「蜘蛛のジュン!私が相手だ!」


「……お前はジャクリーン・ビューティの従者か。名前なんかどうでもいいから聞かないが……スライム族だな?」


 ストイチさんを瞬殺したジュンと戦うのは、最後に出発したマユだ。たった数秒の試合ではジュンの実力も特殊な能力もわからず、何の参考にもならない。


「下等なスライム族とはいえ魔王様の配下。なぜ私たちの敵という立場を選んだ?」


「魔王よりも素晴らしい人に仕えているからだ!ジャッキーさんが世界の支配者になれば誰もが幸せになれる!魔族も人間も!」


「無理だな……ここでお前は私に敗れ、そのせいでジャクリーン・ビューティは住む家も帰る国も失う。世界の支配者どころか底辺の屑に成り下がる」


 戦いの舞台は瓦礫が転がる廃墟で、観客は誰もいない。ジュンが六本の腕を広げても歓声はなかった。



「虫組最強の私と戦う不運、崇めるべき王を間違えた愚かさを呪って死ぬがいい!」


 ジュンが先に仕掛けた。それと同時に他のリングも鐘が鳴り、一斉に試合が始まった。




『五試合同時に始まりました!全て時間無制限一本勝負、完全決着ルールにて行われます!』


 まずはどこも静かなスタートだ。唯一動きがあった廃墟のリングもジュンの先制攻撃をマユが避けると、互いに距離をとって動きが止まった。


「……あれ?蜘蛛のジュン、虫組最強は自分とか言ってましたね。ここにいるそいつじゃないんですか?」


 ラームが首を傾げる。唯一こっちに残った大物よりも上ということは考えにくいからだ。


「オードリー族たちだって自分が最強だと豪語していたのが何人もいた。珍しい話じゃないよ。でも本当に一番強いのはあなたでしょう?」


 返事はないかもしれないけど、一応聞いてみた。すると、虫組のボスは身体をびくんと震わせ、呼吸が荒くなった。



「そ、そ…そりぇ、それは………」


「………ん?」


 とても小さくて細い声だ。まさかとは思うけど、とても不安で緊張している……そんな感じがした。


「えっと……何か飲みますか?」


「ひっ……その………お、お気遣いなく………」


 明らかに様子がおかしい。もしかしたらこれは私たちの勘違いだったのかもしれない。『こいつが虫組のボスだ』とこっちが勝手に決めつけただけで、相手は誰も彼女について触れていなかった。



「ジャクリーン様!その方、実は六人の中で最も弱いのでは?勝ち目がないのでリングに上がらず待機していると考えることもできます」


「……ルリさんもそう思った?」


 私はあえて黙っていたのにルリさんが口にしてしまった。かわいそうに、がちがちと歯の音が聞こえるほどに震えている。


「荷物持ちなどの雑用係に過ぎず、どうでもいい存在なのでたった一人敵地に置いていかれた……」


「あっ……あっ………あうあう」


 彼女を格が違う大物だと思っていた私の見る目のなさも悲しい。他の五人とはレベルが違う、そこは合っていたけど方向が真逆だった。



「……とりあえずこいつを倒して王冠を取り返しますか?もう試合は始まっちゃいましたけど、いざという時の持ち逃げは避けられますよ」


「ひ…ひっ!やめて……やめてくだひゃい」


 ラームがじりじりと迫る。小さいラーム相手に怯えているのだから、どれだけ弱いのだろう。


「その王冠……もらった!」


「や…やめ………ぎゃっ!」


 ラームから逃げようと慌てて席を立ったのがまずかった。マントを足で踏んでしまい、その場に顔から倒れた。



「いたた………ああっ!!」


 転んだ勢いでマントが脱げてしまい、顔も全身も露わになった。気弱そうで幼い顔に似合わず、身体はしっかり成長していた。特に胸の膨らみはなかなかのものをお持ちだ。


「背中に………鎧?」


「は…恥ずかしい……マント、返してください………」


 彼女もモンスター人間だとするなら、これは虫の身体の一部だ。この形、色は………。



「ひょっとして……ダンゴムシ?」


「は……はい………私はダンゴムシの『ダイ』といいます。醜い顔と姿をたくさんの人に見られて……ううう」



 虫組のボスではなくただの下っ端だったダイは泣き始めた。無害そうだし、私がなんとかしよう。


「醜い?いやいや、つまらない冗談だよ。こんなにかわいい人、なかなか見ないよ」


「えっ………ほんとうですか?」


「もちろん。それにその背中も黒く光っていて宝石みたいにきれいだ。隠す必要なんか全くない」


 元気づけるための言葉ではあるけど、全て本心から出ている。庭とかで見るダンゴムシとは違って美しさを感じた。



「あ……ありがとうございます。えへへ………」


「さあ、いっしょに観戦しよう。おいしい飲み物とお菓子を持ってきてもらおう」


 転がった椅子を直して、二人で並んで壁の前に座る。ダイの緊張が少しほぐれているのがわかった。


「………」 「………」


 ラームとルリさんは不満顔だ。ダイが変な動きをしないか目を光らせている。そんな心配はないから試合に集中してもらいたい。

 WWEのジョン・シナがヒールターンしましたが、新日本でもそろそろビックリするような闇堕ちが見たいです。最後のIWGP挑戦を終えた永田さんなんかどうでしょうか?いつでも誰に対しても「黙れち○ぽ野郎!!」と怒鳴る斬新なキャラクターで………いや、厳しいですね。

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