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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
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奪われた王冠の巻

「生きたまま食べる……なんと恐ろしい!」


「ジャッキーさんがおいしいものをたくさん食べさせてくれるから最近はゴキブリなんか食べない……でも食べろって言われたらいつでもいける――――――っ!」


 魔物なんだから虫を食べるのは驚くことでもなかった。私もそれをすっかり忘れていた。



「ふんっ!」


「ぐああっ……!」


 マユは休まず、立ったまま関節技だ。リングの中央で完全に極まり、逃げ場はない。


「今助けに……ううっ」


「こっちも固めたよ!」


 ブーンさんが入ってきたからカットした。そして教わったばかりのクロスフェイスロックで動きを封じた。



「ゴキブリだけじゃなくてハエも食べられるんですけどね……でも今一番味わいたいのは勝利の味!勝負を決めましょう!」


 これ以上我慢したら全身が破壊される。大事な家族が待っているカササさんは決断するしかなかった。


「ま……参りました!」


「よし!やった!私たちの勝ちですよ、ジャッキーさん!」


 私は最後に少しサポートしただけで、ほとんど何もしていない。マユだけで強豪の二人を倒した。



「いやいや……お強いですね。これでは王座に挑んでも結果は見えています。またの機会にしますよ」


「そうですか?私と直接勝敗がついたわけではないですけど……」


「マユさんに敗れているようでは、それより上にいる方に勝てるはずがありません。鍛え直してきます」


 私とマユが本気で戦ったらどうなるかわからない。必殺技が効かないかもしれないし、優秀な防具抜きでは一方的な展開で敗れることも覚悟している。



「今後の参考になったな。ジャッキーと戦いたいというやつが現れたら、まずは私たちの誰かがやる。そこで勝てばジャッキーに挑戦できることにしよう」


「誰も私のところまでたどり着けないような気がするね。確かにずっとチャンピオンでいられるけど……」


 防衛戦の回数や頻度に決まりはない。毎日戦ってもいいし、事情があればずっと試合をしなくてもいい。ただしずっと逃げ回っていたらさすがに怒られるだろう。頼もしい仲間たちに守ってもらって自分では戦わない、史上最低の王者だ。


「魔法で治せないほどの重傷を負ってしまった、魔族との戦いのため長い旅に出ることが決まった……そういう場合は王冠を返上するようですね」


「それはよく聞く話だ。バーバ・ビューティも勝ち続けたまま王者ではなくなった。あとはとんでもないこと……例えば犯罪者にでもなったら王座は剥奪、王冠は没収だな」


 いつまでも防衛戦が行われなければ、王冠を返すように言われるはずだ。剥奪されてビューティ家の名前に泥を塗るよりは、自分から返上したほうがずっといい。適当な理由をいくつか考えておこう。



「じゃあ今日はこんなものにしておこうか。おいしい料理とお酒が待っているよ!」   


 練習よりも食事会が本番……なんて口にしたら怒られそうだ。まあ私みたいな緩い王者というのもたまにはいいのかもしれない。どうせすぐに降りるだろうから。




「…あれ?誰かが走ってくる……」


「ビューティ家の奴隷じゃないか。外で見張りをしているうちの一人だな。しかし走り方が変だな……見ろ!全身ボロボロだ!」


 怪我だらけで、足も痛めているようだ。それでも私たちのところに急ごうとしていた。


「その傷……何があったんですか!?」


「お…お嬢様!起きてはならないことが!」


 聞きたくないけど聞くしかない。突然のことに覚悟を決める時間すらなかった。



「屋敷が襲撃されて王冠が……ジャッキーお嬢様の王冠が奪われました!」


「えっ!?お父さんとお母さんは!?」


「ご主人様たちにお怪我はありません。負傷したのは我々一部の人間だけで、他に被害はほとんどありません。で…ですがスーパー闘技大会を制した王者の証が……!」



 死者はいない、そして王冠以外は無事。最悪の事態は免れたようで、ひとまず安心だ。


「まずは帰って家がどうなってるかを見たいな」


「壊されたのは王冠を保管していた部屋の扉だけです。犯人は数人いましたが、どうやって侵入したのか……全くわかりません。扉が壊れたのもあの連中が逃げる時に急いでいたせいで……」


 他の人からも話を聞こう。そのうち自ら手放すとしても、盗まれて戻ってこないのはだめだ。強盗犯たちの特徴を集めて王冠を取り返す必要がある。家へ急いだ。




「ジャッキー!すでに話は聞いたようだな」


「お父さんたちが無事でよかったよ。命さえあればお金や物はまた手に入るからね」


「そうね………奴隷たちを治療する時に聞いた話では、王冠以外の宝には一切手をつけなかったらしいわ。ほんとうに王冠だけが目的だったようね」


 金貨の一枚も減っていないのだから、お金のために王冠を奪ったわけでもなさそうだ。


「あの王冠そのものに特別な力はないし、盗んで自分のものにしたところで名声も得られないはずだけど……」 


 私たちがいろいろ考えたところで無意味だ。犯人を見つけ出して動機を吐かせない限り、真相にはたどり着けそうにない。


 

「犯人探しの参考になるかはわからないが……今日はやたら虫が多かったと報告があった。庭の一部や王冠があった部屋だけだと言っていたが」


「虫……?まさか!」


 みんなでカササさんとブーンさんのほうを見る。二人はすぐに首を横に振って否定した。


「違います!私たちではありません!」


「その虫たちの中にハエもゴキブリもいないはずです!」

 

 カササさんは正式な試合で私から王者の地位と王冠を獲ろうとした。まず犯人ではない。



「お前たちは違うとしても、心当たりはないのか?虫の力を持つモンスター人間に知り合いは?」


 モンスター人間は普通の魔物よりも強いと言われている。ただし全員ではない。


「……何人かいますが、こんな大胆な悪事をする力も理由もない者たちばかりです」


「しかし魔王軍の中心的存在や人間界でも高い立場にいる、私たちよりもずっと上の存在ならば……」


 カササさんたち以上の敵なら、私を倒して堂々と新チャンピオンになれた。わざわざ無理やり盗まなくてもいいはずなのに。



「どうします?王様に報告しますか?」


「犯人どもを探し出すためには王国の協力がほしい。しかしゲンキ王たちの仕業かもしれない。ジャクリーンの名誉を傷つけるためにモンスター人間たちを雇ったとしたら……」


 どちらにせよ、お城には行かないといけない。またしてもマキがいない時に事件が起きてしまった。

 25年間で18人しかデビューできず、しかもそのうち半分が離脱したNOAH道場の闇!八つ当たりやいじめで若手を破壊し、ブックマークと星5つを強要するそうです。OZAWAはトラウマを克服できるのでしょうか?


 オオワダサンはそのうち裏切りそうな気がします。OZAWAがやったように背後から襲撃し、リングネームもそのタイミングで元に戻すでしょう。

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