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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
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オードリー族を救う道の巻

 試合を決める技が完璧に決まった。私が離れてもトゥーツヴァイは動かず、戦いを続けられる状態ではなかった。


「み……見事です!ぐっ………」


 審判はすぐに両手を広げ、試合を終わらせる合図を出した。場外で倒れているオードリー族たちのうち数人は意識を取り戻していたものの、誰もこの裁定に異議を唱えなかった。



『試合終了――――――っ!!チーム・ジャッキーの勝利!終わってみれば相手全員を戦闘不能にする圧勝劇でした!』


「お姉ちゃん!」 「ジャッキー!」


 マキとサキーがリングに入り、私に抱きつく。みんなもすぐに次から次へとやってきた。


「さすがジャッキーさん!世界最強を名乗っても誰も文句は言えませんね!」


「そんなやつがいたら実力で黙らせてやればいい!今のこいつに勝てるやつはいない!」


 マキたちのサポートがなかったら危なかった。最初から一対一でトゥーツヴァイと戦っていたら………。



「ぐわっははは!俺のことを散々からかっていたイチワンが穴に落ちただって!?面白い冗談だ!」


「……………」


「チビのイチワンよ、見事にハマっちまったな!俺の怪力じゃなきゃ助けられないな……笑わせてもらった礼だ、出してやる」


 イチワンはスーフォーによって救出された。馬鹿にしていた相手に助けてもらったのは屈辱だろうし、反省するきっかけになるだろう。




「ジャッキー様!ぼくたちがいっしょにいられるのは当たり前のことじゃないって……今日思い知りました」


「ラーム……」


 いつもなら私のそばを求めて争うみんなが、今は空気を読んでラームに譲った。ただしマキだけはそんなことをするわけがないから、私はマキとラームの二人に左右から抱きつかれている。


「でもジャッキー様なら邪魔するもの全てから守ってくれる。誰もぼくたちを引き離すことはできません!」


 ぼーっとしていたら奪われてしまう……私も勉強させてもらった。私よりも強くて立派な人のところに行くのならそのほうがいいと思ったこともあったけど、やっぱり嫌だ。自分の本心がわかったのも収穫だった。



「………私たちの完敗です。このままトマス島に帰りましょう。二度とラームに手を出さない、それも約束します」 


 トゥーツヴァイが撤退を宣言した。オードリー族がラームを連れ去る心配はこれでなくなった。


「最後の力ある七人として一族の復活を成し遂げる……その夢は潰えました。残った純血のオードリー族はすでに衰えているか最低限の力すら持たない者ばかり。私たち全員が死んだ時、終わりを迎えるでしょう」


 オードリー族の寿命は人間の約五倍もあって、若いイチワンやロックスが10歳くらいであることを考えると、私が生きているうちは平気そうだ。


 だから放っておく選択肢もあった。でもラームもオードリー族で、生きているうちにその滅びを見届けることになるかもしれない。あの時自分が犠牲になって助けていれば……ラームがそんな罪悪感に襲われるのは、私が死んだ後の話だとしてもあってはならない事態だ。ラームのためにも救いの手を差し伸べよう。




「……最後の七人と諦めるのはまだ早いのでは?ラームがいなくても自分たちが新たな時代の最初の七人になる、どうしてその考えはないのかな?」


「私たちは全員女です。凡庸な男と子孫を残せば能力の劣化は避けられず、ラームに用意した種馬を使っても問題を先送りにする現状維持に過ぎず、オードリー族以外の血を入れるわけにもいかず……」


 打つ手はないといった様子だ。でも私たちはラームなしでも強いオードリー族が蘇る可能性がある方法を知っている。



「そこでルリさんの研究している魔法が役に立つ!同性でも、血が濃くても健康な子どもができる、とんでもない魔法が!」


「そ、そんな魔法が!?」


「フム……ラームほどの特別な力はなくても優秀な七人同士の子どもなら能力は底上げされるはず。時間はかかるが確実に強い子孫が育つ……か」


 手っ取り早い無法の手段よりも、地道にどっしりと成長するほうが絶対にいい。未来の子どもたちに誇れる歴史になる。



「まあ……いきなり言われても難しいかもしれませんが」


「好きでもない相手と子どもを作って育てろというのも厳しい。そこはお前たちに任せるしかないな」


 目的のためなら何でもやろうとしていたオードリー族たちだ。これしか方法がないならやるだろうけど、仕方ないという態度は子どもにも悪影響だ。どうしても嫌なら無理に勧めたくはなかった。



「それなら……僕とスーフォーはいいかもね。無限の体力と圧倒的なパワーがあれば……」


「肉弾戦なら誰にも負けない戦士の誕生だな!」


 あっさり一組決まっていた。イチワンとスーフォーは仲がいいのか悪いのかよくわからない。いや、親密だからこそ棘のある言葉も言い合えるのかな?



「私たちエリートの遺伝子を受け継いだ子どもなら、優秀に決まっている!」


「戦闘だけでなく、頭脳も容姿も超一流だろう」


 ミサンとファイゴー、この組み合わせはなんとなく納得だ。安定して強い家系になる。



「私の防御にロックスのスピードが加わることで、完璧な守備力を誇る強者が生まれる」


「無傷で連戦連勝だ!」


 ロックスとナナチーの小柄な二人も握手をして、これで三組成立した。どのペアも義務感に動かされて無理やり組んだようには見えず、これなら安心できる。



「しかしそうなるとあなたが余ってしまうが……」


 彼女たちは七人、当然一人は相手ができない。ところがトゥーツヴァイは全く気にしていなかった。


「お構いなく。ラームを連れて帰れない場合、私はトマス島には戻らないと決めていました。仲間たちにもそれは話しています」


「えっ……どうして?」


「ラームがどんな生活をしているか、もし家族や恋人がいるのなら信頼できる者たちなのかを調べるには今日一日では足りません。ジャクリーン・ビューティという人間について、もっと知る必要があります」


 ラームを一族が再び強くなるための鍵としか見ていなかった他の六人とトゥーツヴァイはやはり違う。最初から別の考えを持っていたに違いない。



「トゥーツヴァイ……なぜそこまでラームのことを?」


「………」


 これから私を観察するというのなら、ぜひ答えてもらいたい。秘密だらけの人をそばに置くのは危険で、もし何も言わないなら仲間たちと共にトマス島に帰ってもらうつもりでいた。



「………ラームは姉の娘なのです。姉は夫婦でトマス島を去りましたが、すでに二人は死んでいると風の便りで聞きました。遺された子がどうなったか気になり、世界中を探してようやく見つけた……これが真相です」


「な……何っ!?」 「そうだったのか!?」


 仲間たちも知らなかったようだ。全員驚いている。


「今は亡き姉の一人娘が新たなオードリー族の母となる未来に期待しましたが、どうやらそれ以上に素晴らしいことになりそうです。ラームが大聖女と結ばれ、奇跡の魔法によって誕生する二人の子は……全世界を末永く平和に導く者となるでしょう」

 こ…こんな小説なんぞ応援してたら…ろくなお…大人にならねぇぞ…

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