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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
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厚い脂肪の巻

『オードリー族の特殊能力により超肥満体となったミサンの前にエーベルは手が出ません!いや、手を出してはいますが……』


 エーベルさんの攻撃力でも、とても重いミサンを動かすことはできない。ところが、思わぬ形で脱出のチャンスがやってきた。



「ブフ―――ッ………」


『おや?鉄柱に押し込んでいるだけで何もしていないはずのミサンが疲れているように見えます。汗も大量にかいています!』


 明らかに攻め疲れていた。あまりにも体力がなさすぎる。


「そうか……あんなに太っていては自分の身体を支えるだけでひと苦労なんだ!汗をかきやすいのも太ったせいか!」



 手強い能力だと思っていたけど、無敵ではないようだ。エーベルさんもこの隙を見逃さず、


「……とうっ!」


 汗で滑りやすくなったのを利用して、ミサンの股の下から逃げた。立ち上がるとすぐにリングの端まで走った。


「ぐ……ま、待てっ!」


『今のミサンでは当然捕まえられません!攻撃力と防御力を大幅にアップさせたミサンでしたが、スピードは言うまでもなく落ちています!』


 ミサンが能力を使っている時は、近寄らなければ大きな被害を受けることはなさそうだ。接近戦でないと得意技を出せないのはエーベルさんも同じだけど、安全に戦うにはそうするしかない。



「……能力解除!そう簡単には決まらないか……」


『ミサンが一瞬で元に戻った!互いに体力を少し消耗し、条件は五分か?』


 自在に身体の肉の質と量を変えられるようだけど、本来の姿よりも痩せることはできないらしい。理想的な体型だし、これ以上痩せる必要もなさそうだ。



「くらえっ………うっ!」


『今がチャンスとパンチを放ったエーベルでしたが、頬がぶよぶよになって吸収されてしまいました!右手が隠れて見えないほどで、抜けない模様!』


 今度は顔だけ太った。マユのスライムボディにも劣らないほどの柔らかさに見える。


「ぬぅ〜ん!」


「ぐっ………」


『そのまま投げた!顔の肉だけを使って人を投げるなんて前代未聞!オードリー族ならではの技!』


 もちろんこれで終わりではない。ミサンの恐怖はここからだ。



「潰してやる。文字通りな!」


『おおっ!また全身が脂肪の塊になった!何をする気だ!?』


 太ってからのミサンはほとんど技なんか使わない。必要ないからだろう。


「ぬんっ!」


 その場で軽く飛んでのしかかる。巨体に覆われたエーベルさんの全身は肉に埋もれて見えなくなってしまった。



『声すら聞こえない!今度こそ窒息死か!?』


 なんとか腕だけ出てきたけど、少しずつ力が抜けていくのがわかる。今のエーベルさんはギブアップすらできない状況だから、あの腕が完全に動かなくなる前に私たちが試合を止めるしかない。でもそれはまだ早そうだ。

 

「ジャッキーさんに抱かれて死ねるなら、最高の死に方じゃないですか?」


「そうだな。私の場合は鼻血を出しすぎて失血死、それもありえるな。その前に興奮して脳がやられる危険も排除できないから、結婚する前に耐性をつけておかないと。練習が必要だな……今からやるか!」


 敵にやる気と集中力を奪われる魔法でも使われたんじゃないかと疑うほど、チーム・ジャッキーは乱れていた。みんながどんどん私との距離を詰めてきて、密集しているせいで私も暑くなってきた。




「下敷きになって2分は過ぎた!もう限界だ!」


「……………」

 

『エーベルの抵抗が弱々しくなっていく!どちらかが完全に戦闘不能になるかギブアップするしか決着はないこの試合はエーベルの死で終わるのか!』 

 


 ここからの逆転は無理だ。エーベルさんを助けるためにはもう棄権するしかない……そう思ってリングに向かうと、私より先に審判に近づいている人間がいた。


「おい!そいつ反則しているぞ!攻撃をやめさせろ!」


「いや、反則はない。大人しく下がりなさい」


 ロープを跨いでリングに入ろうとしているところを制止されている。それはもちろんスポイラー・トーゴー、エーベルさんが無法に走る時は必ず隣にいる悪役だ。


「くそっ!この審判、オードリー族に買収されてんのか!?だったら私が!」


『乱入者が言いがかりをつけている!トーゴーだ!エーベルと組んでいたトーゴーがいきなり現れ、今にもリングへ!』


 トーゴー愛用の武器、相手を打つのではなく首を絞めるために使う鞭を持っている。反則負けを宣告されてもおかしくない状況だった。



「なんだそいつはぁ!早くつまみ出せ!」


 なかなかトーゴーが引き下がらず、審判もリングに入らないよう止めているだけという状況に、ミサンは少し苛立っていた。しかし数秒でも意識が外に向いてしまったことで、エーベルさんに反撃の機会を与えた。


「こうなったら私自ら排除してやるか……んっ!?」


「ハァ…ハァ……ぎりぎり息が持ちました」


 押さえつけが緩んだ一瞬の隙を突いて脱出、そして人差し指と中指でミサンの両目を軽く突いた。


「ぎゃあっ!!痛ぁっ!!」


 目が潰れるほどのものではない。しかし脂肪で守れない数少ない弱点を攻撃され、ミサンは悶絶した。審判が見ていないのをいいことに急所攻撃とは、エーベルさんは相変わらず黒い一面がある。敵にしたくないタイプだ。



『トーゴーは罠だった!窮地を脱したエーベル、リングを下りて立て直しを狙う!』


「汚い手を使うやつめ〜〜〜っ!!」


『怒ったミサンがその後を追う!どっしり待っていればいいような気もしますが、必勝パターンを邪魔されては冷静ではいられません!』


 能力を解き、猛スピードで走るミサン。あんなくだらない仕掛けで勝利を逃せば、エーベルさんだけでなく自分への怒りもあるはずだ。


「………」


(あれ?そんなに怒っているようには見えない……妙だな)

 なぜかオラ、ワケもなく評価ポイントが好きなんだ!1000ポイント食うぞー!ウララーッ!!

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