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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
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ファイゴーの魅力の巻

 ファイゴー……⑤

『ジャッキーがオードリー族のロックスを倒し、チームリーダーとして意地の勝利!連敗を止めました』


「ジャッキー様!信じてましたよ!」


 敵陣からラームの大きく弾んだ声が聞こえる。私も手を大きく振って応えた。



「………ごめんなさい………」


「フン、どうしてあとたった20秒、我慢ができなかったのか。未熟者め」


 オードリー族たちのほとんどはロックスを冷たく迎えた。ロックスはすでに敗れたスーフォーと並び、端のほうで小さく丸まって座った。

 

「あんな勝利で相手に流れがいったとは思えないが……連敗はできない。次はワタシが行く」


 背が高く赤い髪のオードリー族が立ち上がり、リングへ向かう。薄手の服を着ているから全身鍛えられているのがはっきりわかる。ロックスとは違い正統派の戦いをしてくるだろう。


「このワタシ、『ファイゴー』が華麗に勝ってみせる!」




「態度のでかいやつだ……あの高い鼻をへし折ってやるもよし、敗戦の屈辱で髪だけでなく顔も真っ赤にしてやるもよし……私に任せてもらおう」


 サキーがリングに向かう。サキーとファイゴーなら、私がやるような変な試合にはならないはずだ。さっきの戦いは真剣勝負とは思えない酷い内容だった。


「ワタシたちオードリー族と戦おうなんて、脳がまともに働いているならありえないはずだ。もし死にたいだけならわざわざワタシの手を煩わせないでほしいものだな。ワタシたちは忙しいんだ」


「フン……お前たちと戦って命を落とすような弱い人間は、石に躓いて転ぶか爪を割っただけで死ぬ。お前なんかに負けることはあまりにも難しすぎて、どんな手を使っても負けたいと願う変人でもない限り不可能だ」


 熱い試合になりすぎてどちらかが重傷、最悪の場合死んでしまうこともありえる雰囲気だ。それを考えると、二人とも無傷でリングを下りることができた私たちの試合はよかったのかもしれない。



『スーパー闘技大会中に勇者だと明らかになったサキー!勇者としての初戦は情けない敗北を喫しただけに、真価が問われる一戦となります!』


 私に何度もいたずらを繰り返した末に大逆転負け。特殊な試合形式、仲間同士の勝負だったからサキーの評価はまだそこまで落ちていない。言い訳ができないこの試合が重要だ。 


「勇者?この国は称号を安売りしているようだな」


「ハハハ……嫉妬しているのか?お前に何かを授けようとするやつは世界のどこにもいないだろう」


 互いに毒舌で相手を罵る挑発合戦になった。しかしどちらも余裕がある。格上の敵から事実を指摘されたら黙ってしまうし、同レベルの相手にいろいろ言われたら怒る。


 自分よりも弱い、どうやっても勝てるような相手に挑発されたところで、全く心に響かない。必死に虚勢を張っていると余裕を持って聞き流せるからだ。もしくは実力差がまるでわかっていない愚かさに笑ってしまう。


「フフフ………」 「アハハハ!」


 サキーとファイゴーは自分のほうが強いと疑わない。これから無残に敗れ去る哀れな人間に、せめて好き勝手喋らせてやろうという構えだった。



「お前はオードリー族の偉大さを知らない。かつて世界を裏から支配していたのはオードリー族だった歴史すら学んでいない愚か者だ」


「戦争や王位継承の戦いでお前たちが暗躍していたことなら本で読んだ。だがそれは遠い過去の話で、今はオードリー族の名前すらほとんど誰も知らないほど衰退した。大観衆の反応でそれがわからなかったか?」


 お金をたくさん渡した陣営を必ず勝たせ、自分たちに都合のいい人を王様や領主にする……そんな集団がいたら確かに裏の支配者だと誰もが認める。



「オードリー族は人数が……特にワタシたちのような現役の世代がとても少なくなっている。個々の力が落ちたわけではなく、ラームさえ手に入れば必ずかつての栄光を取り戻す!」

 

 なぜ減ってしまったのか、それはあまり関心がない。どうしてラームがいれば全て解決と彼女たちが口を揃えるのか、そのことが気になる。絶対にうまくいく秘策の鍵がラームである理由が知りたかった。


「そして歴代のオードリー族の中でもこのワタシは特にエリート中のエリート!ワタシ一人でスーパー闘技大会とやらに出ていた雑魚どもを皆殺しにできる!」


「……そうかそうか、それは大したものだ」


「一芸に秀でたやつが多いオードリー族だが、ワタシは全てにおいて優秀!総合力なら七人の中で一番だと教えてやろう!」


 これも別にいらない情報だった。自慢げに語ってはいるけど自己申告に過ぎない。ファイゴーが自信満々に話している間、オードリー族は誰も頷いていないのもこの話を疑わしくさせている。




「試合開始!」


「勇者だろうがワタシの能力の前には無力!さっさと終わらせてやる」


 いきなり能力を発動させるようだ。自分の身体を強化、もしくは形を変えられるオードリー族が何をするのかわかるまでサキーも迂闊に近づけない。


『ファイゴーの全身が光る!七人衆の最強を自負する女の恐ろしい能力はどのようなものなのか………』


「……………」



 数十秒後、ファイゴーの光が消えた。その全身をじっくり観察してみたけど、何も変わっていないように見えた。


「へ……変化なし?」


「……ああ、見た目はな。ワタシが強化できるのはズバリ、フェロモンだ!ただでさえ美しい顔、髪、肌を誇るワタシがそこのサキーの目には何十倍も魅力的なものに映っている!」


「え……?フェロモン?」


 私たちにはわからない。リング内という狭い範囲しか効果がないのかもしれない。



「ジャクリーン様、見てください!サキーさんの様子が……」


「あれっ!?」


 審判におかしな様子はない。サキーだけが剣を地面に置き、吸い寄せられるようにしてファイゴーに近づいていく。


「……………」


「サキー!どうしちゃったの!?」


「呼びかけても無駄だ。ワタシのフェロモンは範囲を指定できる。お前たちのところまで届かせることも可能だが、あえてこいつ一人に絞った。そのぶん強力になり、こうして正気を保てないほどになってしまった。もはやワタシの操り人形だ」

 私はその昔、味噌ラーメンだった

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