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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
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噛みつきの結末の巻

「ハハハ――――――ッ!!」


 ナナチーの顔に噛みつき、大量の血が噴き出す……はずだった。ところが私の悪い予感が当たってしまう。



「ハハ……ハ………」


『なんと!顔面も四角になっている!硬度が増したか、マキシーの歯が突き刺さらない!』


「ナナチーの能力は物理攻撃に対して完全なる防御を誇る!そして今回のように相手を自傷させることも可能……あの外見に油断したようだな」 


 オードリー族が笑っている。四角形の物体になり、腕や足がなくなっていることでマキシーに隙ができた。あの無敵な状態になれば腕も足も使う必要がないだけだった。



「……………!!」


『マキシーの自慢の歯が割れている!最大の攻撃手段を奪われた魔女マキシー、万事休すか!?』


 マキシーにとってナナチーは相性が最悪の相手だった。試合がここまで進んだところでそれに気がついてもすでに遅く………。



「長旅後の運動にはちょうどいい試合だったが、もう終わらせるとしよう」


 四角形のナナチーから太く短い足だけ生えてきた。ロープに向かって走り、勢いをつけて跳ね返る。


『足を使ってロープを蹴った!その先にはマキシー!』


 用が済んだら再び足を収納し、正方形の砲弾となった。速くて重く、回避できない一撃だ。



「ぶぎゃあっ!!」


『吹っ飛んだ――――――っ!!マキシー、リング下に転落!歯が砕け散った口内を晒しながら、舌を出して失神!』


 決まってしまった。審判はカウントを取らず、すぐに試合終了の合図を出した。




『ここで鐘が鳴って第1試合決着!勝ったのはオードリー族のナナチー!全くダメージを受けることなくマキシーを一蹴!その実力を我々の眼前で示しました!』


「フフ………まず一勝」


 これで私たちは残り五人。相手のリードを許した。


「おいおい、こんなやつばかりなのか?私たちが相手にする必要なんかなさそうだが」


「いいえ、そうとも言い切れません。もし私があのマキシーと戦っていたとしたら……私の能力では危なかったでしょう。圧勝に見えても実は運に恵まれた結果ということもあるのですから、彼女たちを見下すのは危険です」


「フン………相変わらずつまんないお利口さんだね、トゥーツヴァイは。僕たちのほうが疲れてくるよ」


 仲間割れとまではいかなくても、互いへの不満を抱えながらの関係か。本物の絆があるかどうかは真に苦しい時に試される。




「ふぁががが………」


「焦らずじっくり攻めたらよかったものを。大事な初戦を落としてしまったな」


 私たちの陣営に戻ってきたマキシーをサキーは手厳しい言葉で迎えた。確かにもう少しうまい戦い方はあった。でも私は感謝の気持ちしかなかった。


「私とラームのために戦ってくれてありがとう、マキシー。そのままじゃいろいろ大変だよね、すぐ治すから」


 残った魔力を振り絞って治癒魔法を唱えた。マキシーがタックルを受けた時の傷と、ほとんど無事な歯がなかった口の中が回復し、完璧に試合前と同じに戻った。


「………!貴重な魔力を私なんかに………」


「マキシーも私の家族の一人だからね。さあ、こっちで少し休もう」


 試合が控えているとしても、目の前のマキシーを放っておくことはできなかった。魔力が足りなければまたその時どうにかしよう。





「敵ながら愛情に満ちた素晴らしい人物ですね、ジャクリーン・ビューティさんは。さて、次は私が行きましょう。ラームが逃げないように、見張り番を代わってください」


 オードリー族の二人目はトゥーツヴァイ。何としても連勝するために強い彼女が出たのか、白星先行で余裕ができたから不安のある彼女なのか。トゥーツヴァイの実力が明らかになるまで相手の意図はわからない。


「………私が行く。五分に戻さないと苦しくなる」


「マ…マーキュリー!よろしく頼むよ!」


 連敗するわけにはいかない私たちは、早くもマーキュリーを出すしかなかった。私たちの中では最強の力を持つ主力のマーキュリーには確実に勝ってきてもらいたい。





『マーキュリー対トゥーツヴァイの試合は静かに始まりました!スーパー闘技大会では準優勝、内容では優勝したジャッキー以上だったマーキュリー、こんなところで負けていられません!』


 トゥーツヴァイがどんな能力を持っているのか確かめておきたいところだけど、マーキュリーなら相手が何かをする前に倒してしまうかもしれない。


「マーキュリー!頑張れっ!」


「……私たちの愛は最強。誰にも負けない」


 頼もしい返事だ。マーキュリーがビューティ家入りしてからまだ一週間しか経っていないけど、とても濃い時間を過ごしている。ずっと昔からいっしょにいたかのようだ。



「そうですか……愛の力で私たちに勝とうというのですね」


「……………」


 トゥーツヴァイは笑っている。私たちを馬鹿にしている笑い方ではなくても、そんなものは無駄だと上から見下ろしているかのようだ。


「お二人の愛の深さはわかりませんが、私の愛には遠く及ばないでしょう。今のうちに教えておきますよ」


 彼女にも愛し合う人がいるのか。マーキュリーは攻撃の手を止め、何を語るのか待った。



「私が愛しているのはオードリー族全員!ここにいる六人だけではなく、これからそうなるラームも。そして………」


「………」


「偉大なる先祖たちも、そしてこれから現れる未来の子どもたちも!まさに全ての仲間を心から愛しています!あなたたちと同じ熱量で、何千倍何万倍……それ以上の数を!」


 大したものだ。ただし私たちの愛とは種類や意味が違うから比べるのは間違っている。それに加えて、自分が生まれる前にこの世を去った人やまだ生まれていない人に対しての愛なんか、完全に片道でしかない。



「そのオードリー族が世界から消えてなくなるかもしれない……そんな危機を指をくわえて見ているわけにはいきません。あなたたちがその邪魔をするのだとしたら、排除するしかないでしょう」


「………ジャクリーンを悲しませる存在を私は許さない。永遠に封印すると決めていた闇の力……再び使うことを許してほしい」


 マーキュリーの闇は相手に致命的なダメージを与える。トゥーツヴァイが死ぬかもしれない禁断の力を使えば私の心が痛まないか、マーキュリーは心配してくれていた。


「ああ、いいよ。どんどん使っちゃって」


「……わかった。全力でこの女を倒す」


 あっさり許可が出たことにマーキュリーは少し驚いていた。手加減して勝てる敵ではなさそうだし、自分の身を守るためにも全力で戦ってほしい。




(闇の力……どれだけ強力だとしても、私の前では意味がない。むしろそれが強ければ強いほど私の勝利が近づくことになる)

 年始のプロレスはOZAWAとゲイブの評価が大きく上がる結果になりましたが、プロレス大賞MVPは違う誰かになるでしょう。新日本以外の選手はほぼノーチャンス、ゲイブも最高峰のベルト奪取やG1を制覇するタイプの選手ではないので、二人の勢いが続いたとしても別の賞になると思います。


 どの競技の表彰でもそうですが、上半期に活躍した選手よりも下半期に活躍した選手のほうが記憶に新しく、印象が強いので有利です。

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