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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第四章 強敵たちの襲来編
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ナナチーの能力の巻

 ナナチー……⑦

『では、これよりジャッキー軍対オードリー族の対抗戦を始める!両チームの先鋒、リングに上がるように!』


 相手の情報は何もない。相性もわからないのだから、全て運任せだ。



「まずは私が行こう。誇り高きオードリー族の一人、『ナナチー』が!」


 ナナチーと名乗る敵の背は低く、髪の色も着ている服も茶色だ。オードリー族は私たちのことをほんの少しとはいえ知っているはずなのに先に出たのだから、相当自信があるようだ。


「我々は全員が超一流の戦士だ。お前たちの誰が出てきても結果は同じなのだから早くしろ!」 

 

 スーフォーの敗戦を目にしても自分と仲間の勝利を疑っていない。最低でもスーフォーと同等程度の実力はあると考えたほうがよさそうだ。



「オードリー族は自分の身体を強化したり形を変えたりできるのは言うまでもないが、基礎能力も高い!」


「わかってる。あんまり体格差がある相手はきつい。だからあのチビの相手は私がやる!」 

 

 私たちの先鋒はマキシーだ。得意の幻術が決まればどんな強敵でも無力化できる。


「よし、任せたよ!マキシー!」


「私が勝ってあいつが無事に戻ってきたらたっぷり報酬を貰うから、そのつもりでな!」


 お金が目的で私のそばにいるとマキシーはよく口にする。その言葉の真偽はひとまず置いておくとして、こうして私のために戦ってくれるのだからありがたい。



「あんたやオードリー族のことは全く知らないし、これから知る気もない。金のために勝たせてもらう、それだけだ」


「それが正解だ。どうせお前ごときには理解できない………戦いに集中しろ」


 睨み合いが起こり、審判が二人を引き離した。あの距離ならいつ始まってもおかしくなかった。


「言われなくても鐘が鳴るまでは動かないって。試合前の奇襲なんて、こいつらみたいな卑怯者しかやらない。堂々と人を攫うような恥知らずの連中だもん」


「……我々を愚弄するか。本物の死にたがりなのか?」


「お前みたいな弱そうなのが相手じゃどうかな。死にたくても死ねないだろ」


 怒りでパワーアップするのはオードリー族ではなくスーフォー個人の力で、他の六人は空回りすることもありえる。しかもマキシーは敵を眠らせたり幻を見せたりするのが得意なのだから、冷静さを奪っておけばますます魔法が冴える。マキシーの挑発がうまくいくことを願おう。





「試合開始っ!」


『ジャッキーの従者、ラームを賭けた戦いが始まりました!マキシー対ナナチー、小兵同士の試合です!』


 見た目で決めつけるのは危険だけど、ナナチーがスーフォー以上の力自慢とは思えない。マキシーも魔法や技術を警戒しているだろう。



「自分たちの目的のためなら幸せに暮らす子どもを家族から引き離そうとする野蛮な連中の一人……慎重に攻めないとね」


 マキシーはまだ煽る。しかしこれは事実で、ナナチーは反論できないはずだ。少しでも罪の意識があるのなら気持ちが揺らいで魔法にかかりやすくなる。


「……………」


(ナナチーは……全く変化なし!)


 悪いことをしているという自覚がないようだ。これでは心に隙は生まれない。



「家族から引き離す?それは違う。ラームがこれまで共にいたのは仮の家族であり、私たちこそが本物だ!」


「………こいつ!ぐっ………」


「実は私も彼女と同じだった。自分が何者なのかも知らず、トマス島ではない地で生きてきた……しかし真の仲間が私を見つけてくれた!これは救出なのだ!」



 開始直後のぶつかり合いはナナチーの勢いが勝った。低い体勢からのタックルでマキシーを後退させる。


『まずはナナチー先制!そして追撃へ!』


 ナナチーは一気に勝負を決めようとする。揺さぶりは失敗しても、攻撃一辺倒になっている今はむしろチャンスだ。マキシーが試合の流れを掴むためにはここしかない。

 

「このまま愚か者を瞬殺し………むっ」


「どうした?私はこっちだ!」


 すでに幻術は発動していた。ナナチーの攻撃は空振りを繰り返し、少しも当たらない。こうなればマキシーが攻勢だ。



「そうか……お前は魔女か。私を幻で包んで的外れな攻撃をさせるとは……思ったよりはやるようだ。しかしこの程度で慌てるほど軟な生き方はしていない!」


 ナナチーにはまだ余裕がある。マキシーは豊富な魔力を持っているとはいえ、どこかで魔法の効果が切れる。


「あっそ……そりゃすごいね……っと!」


 幻が残っているうちにマキシーは動いた。どこから襲ってくるかわからないのだから、相手は防御が遅れる。



『マキシーが大きく口を開けた!最大の武器、噛みつき攻撃で仕留めにいったっ!』

 

「………っ!」


 ピラニアのような鋭い歯を持つモンスター人間のマキシー。狙いはナナチーの首、大量出血で戦闘不能に追い込む。


「これで終わりだ!死ね――――――っ!!」


 マキシーはわざと叫んだ。幻を見ている敵は耳しか頼れない。怪しいと思いつつも声が聞こえてくる方向からの攻撃に備えてしまう。


『ナナチーを襲う!決まったか!?』




「どこから現れてどこを攻撃しようが……無駄だ」


「あ!?」


 首に噛みつこうとしたその時だった。ナナチーの身体が突然変形していき、攻撃が外れた。


「こ、こいつ!箱みたいになった!」


『な、なんと!一瞬のうちに全身が四角形になった!骨や関節はどうなっているんだ!?』


 人間がこんな形になったら普通は死ぬ。丸まって箱のようになっているのではなく、完全に四角の物体になっていた。足や腕もその中に収納されたようで、顔だけが中心にある。



「まさかこれが!あいつのオードリー族としての能力か!」


「そうだ!ナナチーは四角になれる!今みたいに全身を変形させることも、身体の一部だけを四角にするのも自由自在!」


 オードリー族たちはナナチーの能力を私たちに聞かせるように大声で解説する。隠す気はないようだ。



「………び、びっくりさせやがって。だが今のお前はまさにそのへんに転がっている木箱!手も足も出ないんだから楽な戦いだ!」


 元に戻らないと動けないのなら、一方的に攻撃できる。だけどそんなおいしい話があるだろうか。しかもナナチーは自らあの状態になった。わざわざ不利になるようなことをするとは思えない。



「じゃあ唯一無防備なその顔……グチャグチャにしてやるか!」


「ま……待った!マキシー!絶対何かある………」


 私の叫びもむなしく、マキシーは大きく口を開いてナナチーの顔に噛みついた。

 ブロッケンJrのキャラソン、「殺人鬼」だの「反則技」だの、親父のブロッケンマンの歌にしか聞こえません。台詞パートを聞けばJrの歌だとわかるのですが、『キン肉マンというのは不思議な超人だ やつと戦っていると反則技を使うのが嫌になってくる』……あんた、キン肉マンと戦ったことありましたっけ?(スパーリングは抜きで)

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