謎の七人の巻
新シリーズです。よろしくお願いします。
「……あの娘で間違いないのか。我ら一族を救う鍵となる力を持つ者は………」
「うん。ようやく見つけたよ。善は急げと言うし、早く連れていこうよ」
怪しい影が七つ。その狙いはある少女だった。
「しかし彼女は今の生活が気に入っているように見える。説得しても私たちとは来ないのでは?」
「その時は無理やり言うことを聞かせるまでだ。もし邪魔するやつがいるとしたら、全員殺してでも排除だ」
『先攻のマーキュリーはこの回8点、つまりジャッキーは15点以上取らなければ負けてしまいます!』
『15……全部倒さないと駄目じゃないか。厳しいな』
スーパー闘技大会が終わって一週間、再び私たちは大闘技場に集まっていた。しかし試合のためではなく、遊びが中心のお祭りに呼ばれていたからだった。
「ジャッキー様なら奇跡を起こせます!闘技大会の魔玉投げで55点を記録したじゃありませんか!」
「あの時はマキがいたし……」
今回はただの重い玉を使い、しかも転がして的を倒す。それなら私のまぐれ勝ちもあるように思えるけど、まっすぐ転がすにはかなりのパワーが求められる。逆転は難しい。
「ぼくが妹様の代わりに力をあげます!」
「いやいや、それは……むっ!」
助走をつけて飛んできたラームは、そのまま私の唇を奪った。一瞬の出来事だったけど、こうなりそうという予感はあった。最近のラームは積極的で、人前だろうがお構いなしだ。
「………くそ!私たちが邪魔できない場所にいるのをいいことに………」
サキーが歯ぎしりしながら怒っている。この場にいたら一番激しく憤るであろうマキは不在なのが救いだった。
近頃魔族の動きが活発になっている。まずは調査をするために、マキやユミさんたちは遠征に出ていた。もう少ししたらサキーや大勢の実力者たちも向かうことになっている。
「さあ、ジャッキー様!」
「よ…よし!てや――――――っ!」
ラームから力をもらって運命の一投、これまでよりはいい手応えだった。しかし逆転には届かず、マーキュリーの逃げ切り勝ちとなった。負けても構わないお遊びだし、別に悔しくも……。
『勝ったのはマーキュリー!賞品として最高級の牛肉で作られた串焼きが贈られます!』
「……く、串焼きか。食べたかったな………」
私の大好物が………。そうだとわかっていればもっと頑張ればよかった。
「………?」
落ち込んでいると、マーキュリーが貰った牛串を全て私の目の前に差し出した。
「私の物は全てあなたの物。さあ」
「ありがとう!でもまあ……みんなで食べようか」
一本分けてくれるというのなら喜んでもらったけど、さすがに全部は受け取れない。マーキュリーの愛の重さもこの一週間でしっかり味わっている。
『これじゃゲームの意味が……もう次に行きましょう!今度は観客の皆さんに選手たちの使っている品物がプレゼントされるチャンス!』
この場にいる皆が楽しめるお祭りで、平和な世の中でなければこんなことはできない。魔族との問題もマキたちがきっとうまくやってくれるはず。
「はい!わたくし!わたくしですっ!」
『ジャッキーの手袋を手に入れたのは……ってまた身内じゃないか!しかしルールは守っているし……ルリ・タイガー様、どうぞ!』
「あっはっは!」 「次はこっちにくれ!」
おいしい料理やお酒にも囲まれ、素晴らしい一日になるはずだった。あの『七人組』が来るまでは。
「あれ?急に空が暗く……雲一つなかったのに」
「まだ昼間だぞ。不穏な気配がするな」
前触れもなく、突然のことだった。何が起きたのかと話す僅かな時間すら与えてもらえなかった。
「うわっ!真っ暗になった!」
「気をつけろ!全員そこから動くな………ん?明るくなったぞ!元通りだ………」
何も見えないほど暗くなったのは一瞬で、それが終わると何事もなかったかのように快晴の空に戻っていた。
「な、なんだったんだ!いまのは………あっ!?」
驚かされてばかりの私たちは、まだ落ち着かせてもらえない。フィールドの中心に見知らぬ集団が立っていて、まるで自分たちが主役と言わんばかりに堂々としている。
「見ろっ!あいつらは……何者だ!?」
「さっきまであんな連中いなかったぞ!」
乱入者は七人だ。背の高さや髪の色は様々で、全員女性。服も統一感のないものに見えたけど、この人たちが仲間であることを示す証があった。
(紋章……なのかな?全員どこかに………)
ピアス、ネックレス、ベルト……それぞれが身につけている装飾品に、必ずその紋章が刻まれている。ジェイピー王国ではない、よその国から来たのかもしれない。
「お前たちは誰だ!何が目的だ!」
まずは兵士たちが警戒しながら近づいていく。相手は武器を持っていないし、すぐに攻撃してくる雰囲気でもない。大勢の前で派手なことをして名前を売りたいだけということもありえた。
「私たちの目的……か」
「一言で言うなら………そいつだな」
七人が揃って私を見た。警告されていた通り、私が持つ世界一の座を奪おうとする挑戦者が早速現れたか。
「お前たちはスーパー闘技大会の予選にすら出ていなかった。そんなやつらがいきなりジャッキーに挑めるわけがないだろう」
私が狙われているとわかると、サキーは私の前に立った。マーキュリーやエーベルさんも私のそばに近づき、いつでも動けるように構えた。
「安心していい。魔法や弓矢で奇襲されてもあなたのもとには届かない」
「ありがとう。あっという間に大変なことになっちゃったね……」
緊張が走る、ぴりぴりとした空気……のはずなのに、突然七人の乱入者たちは笑みを浮かべ始めた。中にはこらえきれなくなって、声を出して大笑いする者もいた。
「あはっ!それは大きな勘違いだよ!そこのジャクリーン・ビューティなんかどうでもいいんだ」
「………は?」
「ああ。低レベルなメンバー、しかもまぐれで優勝したようなやつに興味はない!私たちは………」
よく見たら私のほうを見てはいたものの、微妙に視線がずれていた。彼女たちが狙っていたのは………。
「そこにいる少女………ラームに用がある!」
「ええっ!?ぼ、ぼく!?」
まさかの名前が出たことに、誰もが驚いた。
なんだと?高評価やブックマークをどれだけ集めているか教えろだと?ふざけるな!我らがボス、ネプチューンマンは言われた!評価点などというのは弱い者のシンボル、我ら完璧超人にそんなくだらんものはいらんとな!
評価点はいらんが、たい焼き1万個食ってやる!




