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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
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闇に灯された光の巻

「やった――――――っ!ジャッキー様が世界一だ!」


「最強であり最高のチャンピオンが誕生した!」


 審判や王様を押しのけて、私の応援団がリングに上がってきた。そして胴上げが始まる。


「ウォー!ウォーウォー!ジャッキー!」


「王者のジャ・ク・リーン!」


 大闘技場全体が私を祝福してくれた。この最高の光景はあまりにも現実離れしているから、夢に見ることもないほどだった。



「おめでとう……ジャクリーン・ビューティ」


「……マーキュリー!」


 倒れたままのマーキュリーが小さな声で私の勝利を称える。歓喜の輪から抜けてマーキュリーのすぐそばに座った。


「あなたの愛はとても美しく、豊かで、爽やかだった。私の闇よりも強く、大きい」

 

 マーキュリーの手を取った。試合が終わって闇の力が消えたというのもあるけど、やっぱり間近でじっくりと見ると美人だ。ルリさんやフランシーヌとはまた違う美しさがある。


「これからは……私もあなたの愛の中に………」


「もちろん!最初からそのつもりだよ」


 愛を教えるのに一度きりでは全く足りない。共に歩み、愛し合おう。



「しかし私の確殺技から抜け出すために鎧を脱ぐなんて……防具よりも自分の力を信じた大胆な行動だった」


「どうだろう。あれも誘導されていたような気がするんだよね。タイミングも偶然締めつけが緩くなった時に……出来すぎだと思わない?やっぱりあれのおかげで勝てたようなものだよ」


 大聖女の戦闘服なしで戦っていたらおそらく死んでいた。持ってきてくれたマキと歴代の大聖女たちには頭が上がらない。



 私とマーキュリーが話をしている裏で、完璧なサポートで私を勝利に導いた大聖女たちも雑談を楽しんでいた。


『何度も危ない場面を迎えながら薄氷の勝利……この戦闘服を着た人間が戦いに敗れ死亡したら……』


『我々は完全にこの世から消滅する。いよいよこの時が来たかと思ったが、お前のおかげであいつも我々も助かったよ。500年前の大聖女……しかしこの中では一番の若手、エーベルよ!』


 転生したエーベルさんは本来戦闘服の中にはいないはずだ。気配は一切感じなかったし声も聞こえなかったけど、隅っこのほうにいたらしい。


『あの人が真の力を発揮するにはどうするべきか、私が一番わかっていますから。それに今の私は死んだも同然、ここに来ることは簡単でした。これからお世話になります』


『そうですか………しかしそうはならないようですよ。ご覧なさい、マーキュリーの闇の力はジャクリーン・ビューティによって消滅しました』



 

 リングでの大騒ぎはまだ続いている。マキも飛び跳ねたり私に抱きついたりしながらはしゃいでいた。それが突然静かになって、私の顔の傷をじっと見つめ始めた。


「やっぱり痛々しいかな?明日から覆面でも被って……」


「………もしかしたら……いけるかもしれない」


 マキは私の傷に手を置くと、ゆっくりと治癒魔法を唱えた。奴隷商人のグレンを全身バラバラの肉片から元通りに戻した時よりもレベルの高い、最上級の魔法だ。


 それなら顔の傷ぐらい楽勝だろうと言えないのがマーキュリーの闇の力だ。この力によって傷つけられるとどんな魔法も聖水も効果がない。シューター王子とエーベルさんの傷も治らなかった。



「………うん!塞がったよ」

  

 一度治ったように見えても、すぐに元の形に戻ってしまう。シューター王子の顔面は癒やされて数秒後には再度爆発し、破壊されたままだ。これもきっと……。


「あれ?血が止まってる………まさか」


「お姉ちゃんの美しすぎる光がそいつの闇を打ち破ったってことだよ!薄い傷跡一つ残ってない、完璧だね!」


 傷がずっと残るという見た目の話はどうでもいい。いつまでも皮膚が裂けたままだと血が止まらないし、傷口は病気の原因にもなる。冷静に考えれば、傷はそのままでいいなんてことはありえなかった。



 マーキュリーの闇を制したのなら、治せるのは私の傷だけではないはずだ。リングの下で車輪つきの椅子に座っているエーベルさんの前に立った。隣にはトーゴーもいる。


「………エーベルも治せるのか?お前の軽いケガと違い、脳や身体の軸がやられちまっているが………いや、お前は試合前から奇跡を見せてくれていたな。きっとうまくいく」


「試合前……?何の話?まあとにかく、私とマキの二人でやればできるはず。マキ、お願い」


 私の頼みならマキも喜んで協力してくれる。気持ちと呼吸を合わせて同時に魔法を唱えれば………。



「あれ?失敗か?」


 闇の力に阻まれているというよりは、私たちが失敗しているだけ……いや、私たちではなくマキだ。


「おかしいなぁ。どうも一つになれない。お姉ちゃん、とりあえずハグしよっか。身も心も密着すれば成功間違いなしだから!」


「………わかった」


 これが狙いか。わざと不調のふりをして、大観衆の目の前で私といちゃいちゃしたかっただけだ。まあ私も嫌じゃないからよしとしよう。姉妹愛を堪能できるのも無事生還できたからだと思えば、いつもとやっていることは同じでも特別に感じる。


 

「いいね、いいね!あとは熱いキスがあれば……」


 マキのおねだりは止まらなかった。しかし愛する妹のわがままをどこまでも聞いてしまうのが私だから、それ以外の誰かが動く必要がある。ここでそうしたのは意外な人物だった。


「……うっ!内なる闇の力に飲まれてしまいそう……」


「マ、マーキュリー!?」


「ジャクリーン・ビューティ……あなたが優しく抱きしめてくれたら闇は消え、エーベルは助かる………さあ、早く!」


 マーキュリーもマキと同じく強引な手に出た。すぐにマキを引き剥がさないと大変なことになると思わせる気だ。


「……クズは冗談も面白くないね。黙ってなよ」


「姉妹でもこれほどまで愛の質が違うのか………」


 互いに凍てつくような視線、いきなりこれか。この二人が仲良くなれるのか不安になってきた。



「ジャクリーン様、わたくしも!」


「こっちもお願いします!」


 遅れを取るわけにはいかないと、みんなが迫ってきた。正当化する理由を挙げることもなく一斉に殺到してきて、パニックになりそうだった。



「………そろそろいいか?いつまでやってんだ」


「あっ……はい、すみません」

  

 トーゴーに怒られて解散、ようやく最初の状態に戻った。続きはまた夜にやろうと言ったらマキもこの場は折れてくれて、エーベルさんの回復に全力を費やした。




「………う〜ん………」


「おおっ!エーベルが目覚めたぞ!」


 マキが本気になって、闇の力の妨害ももうない。エーベルさんの復活は必然で、スーパー闘技大会は文句なしの大団円となった。

 Teo Torriatte (Let Us Cling Together)



 NOAHにまさかの『暴露系プロレスラー』爆誕。団体のエース清宮の悪事を明らかにしています。これもプロレスと言えばそれまでなのですが、真に受けて失望しているファンもいるようです。同じ女遊びに興じている写真でも、清宮とオーカーン様では皆の反応も全く違いますね。

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