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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
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光と闇、命と死の巻

『マーキュリーの氷が砕かれた!しかし彼女の最大の武器は氷ではありません!』


 素晴らしい技のキレ、圧倒的な身体能力の差、そして闇の力。氷魔法がなくなったところでマーキュリーの戦力はほとんど落ちていない。


「……あなたの愛の力、これまでの偽物たちとは明らかに違う。本物だと認める」


「………」


「だから次は……これを相手にしてもらう」


 マーキュリーの全身が闇に覆われた。これから起こることへの恐怖から歓声が消え、超満員の大闘技場が静かになった。



「たくさんの人間や魔物を殺してきた。殺さなかった場合でも、まともに生きられなくなる傷を与えた。あなたが光であり命なら、私は闇であり死だ」


 マキの治癒魔法でも治せないなら、その傷は一生残る。シューター王子は自慢の美しい顔が醜く痛々しいままで、エーベルさんはずっと寝たきりだ。命が助かっただけ幸運と思うしかない。


「最初は家族のために、共に戦う仲間のためにこの力を使っていた。しかし皆は私を恐れ、逆に遠ざかっていった。あなたもおそらくは………」


 あまりにも強大な力は人を遠ざけることがある。恐怖のせいで距離を置こうとしてしまうからだ。



「私はあなたを暗黒に飲み込んで殺す。そして私はこれまで一度も負けたことがない」


「無敗か……すごいね。私は負けてばかりだよ」 


「だからあなたが私に勝つことはありえない。しかし奇跡の逆転があるのだとしたら………私はそれが見たい!さあ、私の攻撃を凌いでみせろ!」


 私が勝つ、それしかハッピーエンドの道はない。マーキュリーのためにも闇の攻撃を止めてみせる。




『闇そのものとなりつつあるマーキュリーが……いや、動いたのはジャクリーン!自分から危険地帯に向かっていく!』


「む……無謀だ!」 「死ぬ気か!?」


 大闘技場は悲鳴の嵐だ。もちろん死ぬつもりはないし、一か八かの捨て身でもない。私なりに考えて前に出た。



(あのオーラに触れるだけなら問題ない。攻撃されなければいいんだ)


 単純なことだ。私が攻めまくればマーキュリーは守備に回る。闇の力で攻撃する隙を与えずに押し切る。


(そんな甘い話はないだろうけど………)


 攻撃を受け止められて至近距離で反撃されたら命はない。心臓を一突き、この試合と私の人生が同時に終了する。それでもこれが最善の選択だと信じている。



「せいっ!せいっ!」


「ムッ……!」


『逆水平チョップの連打!ジャクリーン・ビューティの熱い猛攻を前に、マーキュリーは徐々に後退!』


 私の読みは当たった。生きるか死ぬかの大一番だからか、今日の私は冴えている。大聖女の戦闘服が脳をフル回転できるように助けてくれているのかもしれない。


「シャッ!」


 何もできないままやられるマーキュリーではない。うまいタイミングで腕を伸ばして反撃してくる。


「こんなもの!せりゃっ!」


 ただし防御の合間の攻撃だから本来のスピードには遠く、全く怖くない。私の手を緩めさせることすらできない。私が試合を支配している。



「お姉ちゃんかっこいい――――――っ!」


「ジャッキー様サイコ――――――!!」


 みんなの声援も勢いを増す。勝利は目の前だ。


「いいぞ!頑張れ!ジャッキー!」


「燃えろジャッキー!」


 マーキュリーをロープまで下がらせて手刀の連発。試合の流れも場内の空気も最高に仕上がり、勝負を決めるにはこれ以上ない条件が整った。



「てやっ!」


「グ………!」


 足がふらついていたマーキュリーを倒し、私は柱の上に立つ。キョーエンやカササさんの必殺技と同じ、ダイビング式の体当たりだ。細かいところは違っても、破壊力は二人に劣らない自信がある。



『このスーパー闘技大会もついに決着か!大聖女マキナ様ですら得ていない伝説の証をその姉が手にする瞬間は目前だ!』


 マキが出ていれば文句なしの優勝だったに違いない、私が優勝すればきっと皆がそう口を揃える。マキが自分よりも私の栄光を望んでいるように、私もマキの評価が上がればそれでいいという人間だ。


 ところが私が負けると全く逆、マキでも優勝できなかっただろうという考えが広まる。大聖女の治癒魔法をかき消す力を持つ相手だから、戦ったら大変なことになっていたと思われてしまう。私のせいでマキの名前に傷がつくことは絶対に避けたい。


 


「ゆけゆけ!それゆけ!ジャッキー!」


「ジャッキー!フレー!フレーフレーフレーッ!!」


 大歓声に後押しされて飛んだ。特別な技術やスキルは一切使わない、それでも勝利への執念を込めたダイブだ。


「ジャッキー!ジャッキー!ジャッキー!」


「飛び出せジャクリーン・ビューティ!」


 決勝戦でも3カウント制は適用されている。数秒だけでも動きを封じることができれば勝ちだ。どちらかの死による完全決着を求めるマーキュリーと違って私はこの勝ち方でいい。



「うおおおお―――――――――っ!!」


「……………」


 マーキュリーにカウンターの気配はない。避けようとする動きもない。しかしその目は生きている。



(渾身の一撃!彼女の武器である愛の力が伝わってくる!)


 腕を伸ばしてきた。膝を立てて私の技を失敗させることもできるはずなのに、あえて腕を使って受け止めようとしてきた。どちらが上なのかはっきりさせる気だ。


(これでわかる!私を深い闇から救い出してくれる力の持ち主なのかどうか………!)

 

 

『決まったか―――――――――っ!?』

 藤波辰爾、紅白歌合戦落選!息子とのタッグでベルトを奪取し、22日には高橋ヒロムとのシングルも控える70歳、この勢いならマッチョドラゴンで紅白出場もありえると思ったのですが………。

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