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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
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愛の力で強くなる鎧の巻

「マキ……い、いま私に力を分けた?」


「え?何もしてないよ。お姉ちゃんがかっこよかったから抱きついただけだよ」


 マキではなく鎧が私を強くしたようだ。しかしそれにしてはタイミングが抜群すぎた。どういうことなのかと私が頭を働かせていると、サキーが立ち上がった。



「なるほど!歴史の書で読んだことを思い出したぞ!大聖女とは愛の力で世界に平和をもたらす存在だが、大聖女も人々から愛されることで神々からの加護の力を強くすると!」


 互いに支え合わないと真の平和は実現できない。それがわかりやすく目に見える形になっているのがこの鎧だ。


「先代大聖女エーベルの記録からも、その愛は見せかけのものでは駄目だという。心からの思いが大聖女に力を与えるそうだ……そう、こんな感じにな」


 サキーは私を抱きしめた。試合の時とは違い、密着することで安心感と心の温かさが得られた。



「私はお前のためなら何でもできる。世界よりもお前を救う勇者になりたい」


「あ……改めて言われると照れるね………」


 私の顔は熱くなった。それと同時に身体全体も熱くなり、魔力の限界が上がったような気がした。



「まただ……これが伝説の鎧の力!」


「愛の種類はどんなものでもいい。純粋で正しいものであれば。さあ、みんなでジャッキーを愛そう!」


「特別なことをする必要はない!ジャッキーへの思いを言葉と行動に表すだけで!」



 みんなが私に近づいてくる。でも私には気になることがあって、それがすっきりしないとみんなの愛を素直に受けられなかった。


「ちょ、ちょっと待って!」


「どうしましたか?」 「照れることはありませんよ」


「いや……よく考えたら、これってずるいんじゃないかなって思ったんだ。マーキュリーは一人で戦うのに、私はみんなの力で戦うんだから……」


 正々堂々の勝負を誓ったのに借り物の力を使うのはマーキュリーを騙しているも同然で、これで勝っても良心が痛んで喜べないと思った。ところがみんなの考えは違った。

 


「いいんじゃないか?あいつは「愛を知りたい」と言っていた。だったら教えてあげたらいい」


「確かに言ってたけど……」


「普通にやれば自分が勝つとマーキュリーは考えています。しかし愛の力は圧倒的に思える実力差を覆す可能性がある……その答えを知りたいのでマーキュリーはジャッキーさんに興味を持ったのでは?」


 私が本来の実力だけでリングに立てば秒殺決着、マーキュリーにとってもつまらない試合になる。それならみんなの力をもらって戦ったほうがマーキュリーのためになるというわけか。



「ジャッキーが皆の愛に応えようと頑張るのは今に始まったことでもない。私たち家族しかジャッキーを愛する人間がいなかった時は、密かに特訓しながら冒険者になったじゃないか」


「空回りすることも多かったですが、その思いだけで自慢の娘でした。あなたの大聖女精神は必ずマーキュリーにも届くことでしょう」


 お父さんとお母さんから励ましの言葉をもらった。優しい両親二人の愛情が、また私を強くした。



「さて、親の愛を伝えるのはこのへんでいいだろう。あとは若い者たちに任せよう」


「………へ?二人とも、どこへ?」


 二人は席を立った。このままいなくなってしまうようだ。


「私たちがいては遠慮してしまうだろう。さあ、皆の愛をジャッキーに伝えてあげなさい。熱く、激しく、甘く……」


「はい!」 「喜んで!」 「ふふふ………」


 みんなが再び私に迫る。これは危険だ。



「え!?お、親としてそれでいいの!?」


 私の叫びに二人はノーコメントで去っていった。猛獣の群れの中に娘を放置していくなんて、とんでもない親だ。


「明日は大事な試合……そこまでのことはしませんよ」


「そのへんはわかっていますって」


 それなら怖がらなくてもいい……か?その代わり明日の夜は大変なことになりそうだけど、生きて帰らなければ夜は来ない。まずは試合の心配からだ。






 私たちが大騒ぎしていたころ、マーキュリーは自分の部屋で一人、決戦に備えて意識を集中させていた。しかし試合展開や私の技への対策など一切考えず、己の過去を振り返っていたのだという。


(私に近づく者たちは全員見せかけの愛しかなかった。私の力、財産、身体が欲しいだけだった。だから除き去った……そして人々はますます私を恐れ、近づかなくなった)


 マーキュリーを騙そうとした欲深い人間たちは何も得られず、命を失った。闇を操る彼女は悪に敏感だった。


(いや……私が人殺しだったのはもっと昔からか。まだ『マーキュリー』を名乗る前、あの家にいた時から……)


 マキのおかげで大きくなったビューティ家と違い、マーキュリーが生まれ育った家は長年安定して栄華を誇っていた。お金と名声に満たされていれば当然敵も多く、屋敷の中に奴隷として入り込まれたこともあった。



「……!!これは………」


「ママ……この人、みんなの飲み物に毒を入れてた。だから殺しちゃったよ。氷の刃で突き刺したら動かなくなった」


 家族のために躊躇いなく人を殺した時、マーキュリーはまだ10歳にもなっていなかった。母親や他の家族はきっと笑顔で褒めてくれると思っていたのに、皆は恐怖と嫌悪で凍りついていたという。


「………そ、そう………」


「……………」


 簡単に人の命を奪える力、殺人の直後でも平然としている心。家族や周りの人間は怯えてしまい、マーキュリーも自分が忌むべき存在として扱われていると知った。


 大人になったらこの罪のことで裁かれると思った彼女は家を出た。そしてダンジョンに潜ったり傭兵として戦いに参加したりしながらお金を稼いだ。



(一時的に『仲間』になった人たちはたくさんいた。しかし真の友情と信頼を築くことは一度もなかった。当然愛などあるはずもない)


 圧倒的な戦闘力と才能が逆に人を遠ざけた。マーキュリー自身も内気なところがあり、なかなか前に出られなかった。


(……満たされない苦しみの日々が明日終わるのか、これからも続くのか……ジャクリーン・ビューティ………)

 来週から開幕するワールドタッグリーグ2024の予想をします。長いので興味がない方は飛ばしてください。


 Aブロック


①後藤YOSHI-HASHI タッグ歴は断トツだが、さすがに4連覇はないはず。この二人を東京ドームの本戦に出したいならここで優勝させるしかないが、若返りを急速に進める今の新日本がマンネリを許すのかどうか、注目。


②海野本間 ただでさえ東京ドームのメインが決まっている海野が優勝することはありえない上に、急造タッグでは勝ち越しすら厳しい。海野は休ませて真壁本間で参戦させたらよかったのにと思う。


③ゼインX Xが誰でも面白い試合を見せてくれそうだが、リーグ1位突破は厳しいと思う。デスペラードかDDTのMAOを連れてくると予想しているが、特にストーリーもなく適当な外人選手かもしれない。


④鷹木辻 人気&実力は申し分ないし、リーグ後もアメリカでペリー竹下組と戦うので、その場限りのタッグで終わらないのは大きい。しかしこの二人はやはりシングルでこそ輝くような気がする。


⑤ザック大岩 何も考えずに予想するなら決勝進出できる実力がある……のだが、②と同じ理由で優勝はないと言い切れる。決勝に残ると結果がほぼわかってしまうので、恐らく最終戦で⑥に負けると思う。


⑥コブニューマン パワーはコブ、スピードはニューマンとバランスが取れている。コブが東京ドームでテレビ王座戦を控えているが、現在の王者は同門のオーカーンたちなので、対決を回避するシナリオは作れる。


⑦ゲイブSANADA コグリン、ジェイクとゲイブの相棒候補が次々に離脱し、直前にWD入りしたSANADAとのタッグとなった。激しいゲイブと静かなSANADA、どう考えても合わない。仲間割れもありえる。


⑧KENTAチェーズ 今年二度もタッグ王者になったコンビなのに、優勝候補にほとんど名前が挙がらない。今回のリーグ戦でバレットクラブ系のチームが優勝することはなさそうだが、そろそろ内部抗争を始めてほしい。


 予想……決勝進出できそうなのは①、④、⑤、⑥。ただしBで内藤組が勝ち進むと④は消え、オーカーン組が勝ち進むと⑥は消える。同じユニット同士の決勝もたまには見てみたいが、そうなると他のユニットのファンが楽しめないので組まないのだろう。



 Bブロック


①棚橋邪道 このタッグが好成績を残すと本気で予想しているファンはほとんどいないと思う。お世辞にも動きがいいとは言えないベテラン二人が組んでしまったので、いろんな意味で苦しい試合が続きそう。


②矢野ボルチン 本隊とCHAOSはそろそろ合体していいと思う。こうして普通に組んでいるし、そもそも最近のNEVER6王者は本隊CHAOSの混合チームだ。しかしNEVER6、ほとんど動きがなくなってしまった。


③内藤ヒロム 注目のタッグチームで、決勝進出を最終戦まで争うのは確実。二人とも怪我が多いのでそろそろシングルプレイヤーとはしては厳しいのだろうか?今後もコンビ継続なら、タッグ戦線を盛り上げる役になる。


④タイチTAKA ③と同じヘビーとジュニアの混合タッグではあるが期待値の差は歴然で、①に勝てないと全敗もあると思う。タイチが頑張って100キロ以下に落としジュニアに戻ってジュニアタッグならまだ光はあった。


⑤マイキーシェイン しばらくは二冠王だったタッグ屋。無冠になったからこそ、優勝して東京ドームの王座戦に挑める。今年はTMDKの年と言えるほどユニットに勢いがあり、年末にもう一度輝く可能性は高い。


⑥オーカーンHENARE 現王者組。タッグとしての活動期間、実績、合体技の精度などは断トツ。ぜひ初優勝を決めてモンスターレイジポーズを見せてほしい。HENAREのパワーとオーカーン様のテクニックがあれば無敵だ余。


⑦フィリップ兄弟 バッドラック・ファレが送り込むROGUE ARMYのメンバー。勝ち負けよりも試合内容で日本のファンにいいところを見せてもらいたい。しかしバレットクラブの派生ユニットはどこまで増えるのだろう?


⑧EVIL成田 どうせ東郷と裕二郎が乱入する。何ならSHOと金丸と入ってくる。EVIL社長はオーカーンと相性が悪いので、他に取りこぼしはしたくないところ。偽ゴング、武器、暗闇、パイプカットなど全てを駆使したい。


 予想……東京ドームのことを考えたら、③一択。リーグ戦最終戦で⑥を倒して決勝進出、そのまま優勝すれば文句なく王座戦が組める。現王者が優勝することはまずないので⑥は厳しいが、ジュニアタッグが無茶苦茶な展開で4WAYになったりしたので優勝しちゃってもどうにでもなる。

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