表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
144/273

大聖女の戦闘服の巻

「愛がどうとか言ってましたけど、あいつは危なすぎます。やはり棄権も考えたほうが……」


「う〜む……どんな試合でも命を落とす可能性はある。しかし今回はその確率がとても高い。あいつがその口で殺し合いをすると宣言したのだからな」


 決戦前夜、私たちは集まって会議を開いていた。用意された部屋に入るまで、みんなと会う時間を与えられたからだ。王様も危険な戦いになるとわかっていて、家族や仲間たちと過ごすことを勧められた。


「ですが四年に一度のスーパー闘技大会、しかも決勝戦で試合前に棄権というのは……」


「だったら試合はやればいい。やつが黒いオーラを見せた瞬間に適当な理由を言ってギブアップだ」



 マーキュリーの実力と殺意は本物だ。私が負けるのは当然として、命を奪われると誰もが恐れている。もちろん私も怖い。逃げられるものなら遠くへ逃げたい。


「エーベルは再起不能でしょうかね?頭と首にあれだけ大ダメージを受けたのですから」


「マーキュリーのあの力のせいでどんな治癒魔法でも完治はしない。脳がやられてしまっては厳しいな」


 明日は本気で殺しにくるのだから、力の温存や手抜きはありえない。その一方で私のことを知りたいと話していたから、開始数秒での瞬殺を狙った攻撃を仕掛けてくることも考えにくい。


 前日になってもマーキュリーのことをほとんどわかっていないのだから、どんな戦い方をしてくるか決めつけるのは無理だ。うまく対応するしかない。



「装備はどうする?あの女の力の正体がわからない以上、私との試合で使った鎧と兜はやめたほうがいい。いくら物理攻撃を完封するとしても全く動けなくなるのは……」


 歩くのも一苦労なほど、とても厚手の鎧と兜。前が見えるように目の部分だけ少し隙間がある。そこから闇が入ってきたら、身動きの取れない私は何もできず負ける。マキシーの言うように、あれはない。


「マーキュリーは身体能力も超一流です。氷や闇に頼らなくても優勝できる強者なのですから、魔法だけを警戒するのは間違っています。あのローブも明日は相手が悪いでしょう」


 実際に戦ったフランシーヌの助言は従うべきだ。魔法の効果を弱めるローブも気休めにしかならないのなら、違うものを選ぶべきだ。


 しかしこの二つを超える防具なんかこの世にあるのだろうか。みんな静かになってしまい、いよいよ打つ手はないかと思いきや……。


「ちょっと待っててね。いいのがあるから」


「……え?あ、うん」


 マキが立ち上がり、どこかへ走っていった。戻ってきたのは20分くらいしてからで、大きな箱を持っていた。



「マキ、それは……?」


「今開けるからね。この鍵を外す魔法は確か……」


 とても大事な何かが保管されている宝箱の鍵をマキはあっさりと開けた。封印が解かれ、金色に輝く眩しい光が放たれた。


「うわっ!なんだこれは!輝きすぎて見えない!」


「だんだん目が慣れてきた………おっ!?」


 箱の中身がようやく確認できるようになった。ただしあまりにも神々しく光るから、誰も自分の手で拾おうとは思わなかった。大人しくマキが動くのを待った。




「お姉ちゃん、明日の試合は……これを着てほしい」


 話の流れから防具であることはわかっていたけど、こんなものをマキはどこから用意したのか。お父さんとお母さんも知らないようだ。


「おおっ!?」 「なんだ………?」


「薄手の鎧?それともドレス?その中間か?見たことがないな、こんなデザインは」


 しかも最高級の素材を使っている。誰がどのくらい手間と費用をかけて製作したのだろう。



「きれいすぎて美術品かと思ったよ。この鎧?を身につけて戦えってことだね。でもこれは………」


「そうだよ。大聖女しか、それも大事な戦いの時しか着れない伝説の防具なんだって。それ以外の人間が着ようとしても拒否されるらしいけど、大聖女の力を秘めているお姉ちゃんならいける」


 大聖女専用の装備品が目の前にある。数百年に一度しか現れない大聖女のために作られたのなら、技術も素材も出し惜しみせずに最高の一品に仕上げるのは当然か。


「わたしもまだ着たことはないから着心地とかはわからないけど……人に合わせて形が変わるらしいから、小さくて入らないって心配はないよ」


「うーん……心配なのはそこじゃないかな。私にも大聖女の力があるとはいってもほんのちょっぴりだし、神様に怒られて罰が当たることが怖いかな……」


 大きさよりも資質の問題だ。拒絶されるだけならまだいい。天から雷が落ちてきて死亡、それも十分にありえる話だと思う。




「恐れるな、ジャッキー」


「お父さん………」


「神や精霊もお前なら喜んで力を貸してくれるはずだ。マーキュリーという闇を光で制するために、聖なる防具は必要不可欠!勇気を出して着るんだ!」



 鎧なのかドレスなのか結局わからない、どんな効果があるのかも誰も知らない『大聖女の戦闘服』。みんなも期待の目で私を見つめていた。この伝説の防具が私を受け入れてくれると信じてくれている。


(疑っているのは私だけ……なんてばかな話だろう)


 二大会連続で決勝進出、しかも前回は第300回の記念大会、今回は四年に一度のスーパー闘技大会だ。もっと自分に自信を持たないといけない。


「そうだぞジャッキー!お前は勇者の力に目覚めた私に勝ったんだ!胸を張れ!」


「……………」


 あの戦いで誇れるものは何一つない。しかし負けていたらこれを着る機会はなかった。私が勝てるルールで戦ってくれたサキーに一応感謝しておこう。



「よし……じゃあいくよ!」


 自在に形が変わるというのは本当で、服の上から着てもぴったりだった。違和感や重さは全くなく、身体の一部のように感じた。とてもよく馴染んでいる。

 

「ど……どうですか。何か変わったことは?」


「今のところは何もないね……」

 

 一方で、特別な力や祝福を得た感触はなかった。私が鈍感なだけなのか、祝福を受けるに値しない者と判断されたのか。戦いになって初めてわかるのかもしれない。



「すてき………お姉ちゃん、かっこいいよ!」


 マキが抱きついてきた。正式な大聖女はマキなのに、天から与えられた贈り物を躊躇いなく渡してくれた。この本物の姉妹愛のおかげで、強い気持ちで明日を迎えられそうだ………。



「んっ………おおおっ!?」


「お姉ちゃん!?」 


 突然鎧が光と熱を放ち、私の中にパワーが入っていく。この力はマキからもらったのか、それとも鎧からもらったのか。その両方に思えた。

 録画しておいた『クイズ脳ベルSHOW(白塗り対決スペシャル)』を見〜ようとお〜もった〜ら〜〜〜氏神一番のXでネタバレされました〜〜〜チクショーーーー!!


 あのメンバーならアツシ(ニューロティカ)の優勝かと予想していましたが、腕骨折中の氏神が勝っちゃいました。わざわざ顔を白く塗ったハチミツ二郎はかなり体調が悪そうで、コウメ太夫はネタが意味不明なだけでなくまともな会話すらほとんどできていませんでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ