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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
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サキーの宣言の巻

 横浜日本一

「滑っちゃったなら仕方ないね。気をつけてよ。あれ、対戦相手に気をつけてって言うのは変かな?」


「ははは!いやいや、ジャッキーらしい」


 ようやく試合が動いたと思ったらこれだ。この緩い空気を変えなきゃと気合いを入れ直そうとした、まさにその時だった。



「ひゃんっ!!」


「あっ……またやってしまった」


 私の胸の上から手をどかそうとしたはずのサキーが、今度は服の中に手を入れてきた。つまり、直に触られている状態だ。


「ちょ、ちょっと!」


「ここに何か罠があるのか?手が離れないぞ」


「……………」


 わざとらしい顔に声。こうなるとみんなの言うことを信じるしかないか。サキーを信じていたのに、裏切られた気分だ。



『両者の動きが止まってしまいました!どうやらアクシデントの模様!審判が確認しますが……試合は続行できるようです!』


 審判が離れると、サキーの手つきがますますおかしなものになっていく。ただ触るだけでは満足せず、ゆっくりと揉んでくるようになった。


「サキー!真面目にやってよ!」


「私は大真面目だ。いずれわかるさ……」


 まさかこれは作戦の一部なのか。確かに危ないところだった。事前にみんなから警告されていなかったら動揺して敗北へ一直線、それもありえた。



「しかし素晴らしい……形も感触も完璧だ」


「変なこと言ってないで早くやめて!」


 なかなか手をどかしてくれない。力ずくで引き剥がさないとサキーはこのまま何時間でも続けそうだ。


「ぴゃうっ!?は、離れて!」


 ついに『先っぽ』を撫でてきた。さすがにこれ以上はだめだ。背中の力を使ってサキーを浮かせ、その間に抜け出した。



「逃げられたか……しかしまだほんの序章にすぎない」


 この攻撃を続ける気か。とんでもない勇者がいたものだ。いや、勇者としてではなく人間として失格と言っても過言ではないような……。


(……ずっとこれだと私はどこかで限界になっちゃうからギブアップ。血の一滴も流さずに終わるのなら平和でいいのかな………?)


 いや、惑わされてはいけない。この大観衆の前で辱めを受けるのだから、身体は無傷でも総合的に見れば大ダメージだ。



「てやっ!」


『今度はジャクリーンが攻勢か!サキーの左手首を掴んで捻っていく!破壊が先か、ギブアップが先か!?』


 立ったままでも両手を使って掴めば簡単には外せない。問題はサキーの空いた右手で、技をかけながらもその動きは要注意、何をしてきても対処できるようにと思ってはいた。


 

 ところが、サキーはまたしてもふざけているとしか思えない行動に出た。その手は私のお尻に伸びた。


「んっ……!このっ!」


『サ、サキー……ジャクリーンの臀部を撫で回している!何を考えているんだ!?』


 今回は誰の目にもサキーの奇行が明らかで、大闘技場は騒然としていた。私の技に抵抗しているようには全く見えず、ただ撫でたいから撫でているだけだからだ。



「胸だけじゃない。ここも……いや、何もかも素晴らしい。お前はいつも自分を卑下するが、もっと自信を持て。ジャクリーン・ビューティは美しい。強い。優しい。お前より価値のあるものはどこにもない」


「……こんな時にこんなことをされながら言われてもあまり喜べないのが残念だよ………んっ!」


 私の関節技でサキーがギブアップするよりも、サキーのいやらしい攻撃で私が立てなくなるほうが早そうだ。手首の拘束を解いて、再び離れるしかなかった。


『ジャクリーン、たまらず逃げた!この結果だけを考えればサキーの攻撃は成功と言えますが……』


 実況も観客たちも次の言葉が出せない。『勇者のくせにやることがせこい』、そう言いたくなるのを我慢していた。



「どうした、もう向かってこないのか」


「どこかの誰かが変な手ばかり使ってくるからね。そんなことしなくたって勝てるでしょ?」


 互いにノーダメージで試合を終えたいとしても、もっとうまい方法があるはずだ。サキーは何を考えているのか。


「そうだな……勝つだけならいくらでもやり方はある。しかし私はその先を見ている。決勝に来るのがエーベルだろうがマーキュリーだろうが私の優勝は間違いない………その後のことがとても重要なんだ」


 決勝戦すら通過点とは凄い自信だ。そしてサキーがこの戦い方を選んだのは大会後のためだという。その全容を隠すことはなく、今ここで明らかにされた。




「私の目的は単純だ!私たちの関係を明らかにするなら、ジャッキーを守ることに繋がる!」


「………え?」


「ジャッキーを罵り中傷する者は私が処罰する。あらゆる形の危害を加えようとする者は私が報復する。なぜならジャッキーは私の妻、最も大切な存在だからだ!」


 優勝したら皆の前で私との結婚を発表し、お父さんとお母さんもそれを認めるという約束だった。まだ準決勝の試合中なのに……早すぎる。


(そうか、サキーの中ではもう……)


 サキーはもう優勝したも同然の気でいるから、それなら今でもいいと思ったようだ。



「結婚していなければ許されない行為の数々をあえてここでやった。私たちの仲を知っていながらジャッキーに手を出すなら、この勇者サキーを敵に回すという警告のためだ!」


 力強い宣言だ。口だけの人間とは違い、サキーなら誓った通りに行動できる力と意志がある。


「ジャッキー……お前は私のものだ。そして私もお前のものだ。私たちなら二人で幸せになれる」


「サキー………」


「私たちが戦うのはこれが最初で最後だ!お前が安心して私と共にいられるためにも、この勝利は譲れない!」


 

 勢いよく突進してきた。サキーの熱い愛の言葉にときめいていた私は反応が遅れ、またしても仰向けに倒された。


「これで終わらせる!」


「ううっ………」


 覆いかぶさりながら抱きついてきた。腕の動きを完全に封じられて、いよいよ窮地だ。

 横浜日本一

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