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大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
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圧倒的実力差の巻

『た、倒れたっ!剣でうまく流したかに見えたサキーが吹き飛ばされて倒れた!』


 サキーがやられた。圧倒的な力の前には作戦や技術など無意味だった。



「……ふざけたことを口にするからだ。殺されなかっただけありがたく思え。審判!カウント!」


 倒れるサキーを押さえ込み、審判を呼ぶ。ところが審判はユミさんに応じなかった。


「何をしている!」


「カウントは取れない!まだ試合は始まっていない……よってあなたの攻撃も押さえ込みも全て無効だ!」


 これは助かった。一度間を取って回復できる。あとはサキーの戦意が残っているかだ。



「命拾いしたな。しかし心は砕けたのでは?」


「………」


「悪いことは言わない。棄権するんだ。さっきキヨが言った通り、手加減なんてできない。私自身が自分の力に驚いている」


 ユミさんはすでに落ち着きを取り戻していた。こうなるとサキーはかなり苦しい。



「剣士サキー、お前だって大会が始まるまではジャクリーン・ビューティと同じベッドで寝ていたじゃないか。あいつに慰めてもらえばいいだろう」


「……知っていたのか」


 サキーだけでなくみんなで寝ていた。いくらお城の大きなベッドでも、一つを六人で使っていたから当然狭かった。


「しかもただ寝ていただけではなく……眠っているジャクリーンにいろいろやっていたじゃないか!たまたま見てしまったが、目を疑ったぞ!」


「………私たちも見られていたのか」


(………え?)


 いや、それは知らない話だ。サキーが何かを言う前に他のみんなを問い詰める必要がある。



「いろいろやっていたって……?」


「いや、最初は匂いや触り心地を楽しむだけで満足できたんですが……」


「人の欲望には限りがないと知りましたよ。ですがわたくしたちも最後の一線はジャクリーン様と真に結ばれた時に越えようと決めていますから……」


 最後の一線とはどういうことだ。みんなは前科がたくさんあるから、確かにありえる話だったとはいえ……!


「起きた時に服が乱れていたのは……まさか!」


「しかしジャッキー様も全然起きなかったですよね。あんなに無防備じゃ何をされても文句は言えないと……」



「………!!こ、この〜〜〜っ!!」


 開き直ったようなラームの言葉に、温厚な私もさすがに我慢の限界だ。捕まえてその場に寝かせ、足を四の字に固めようとした。


「少しは反省……ありゃっ!?」


「すいません!抜けさせてもらいます!」


 ところが私は大事なことを忘れていた。身体を小さくできるラームにこんな技は意味がなかった。



「それなら……マユ!」


 ラームは諦めてマユにお仕置きだ。関節技で懲らしめてやろうと背後から腰を掴んだ。


「サソリの形に固めて……あららっ!?」

 

「ごめんなさい。私も関節技は効かない体質で……」


 スライムボディを利用して逃げられた。少し考えればわかるはずなのに同じ失態を続けてしまった。私もユミさんと同じように怒りでおかしくなっていた。ただしそれでもサキーを圧倒できるのがユミさん、ラームとマユに負けるのが私だ。




「……試合開始っ!」


『ようやく正式に第3試合が始まりました!今度は勇者ユミも冷静に相手を見ています!』


 ユミさんはサキーの出方を見る余裕ができた。サキーが前に出られないのはユミさんの力を知ってしまったせいで、傷は癒えても劣勢だ。



「どうした?来ないなら私からいくぞ―――っ!」


「くっ!」


 先に動いたのはユミさんだ。本来なら自分から攻める必要などない。しかし試合開始前の攻防でサキーの実力を理解し、反撃されても大したことはないと判断したようだ。


「僅かな望みに賭けて一か八か向かってくると思ったが、防戦一方ではそれすらない!」


「……どうかな!そう単純な話ではないかもしれないぞ」


 サキーに策はあるのか、ただの強がりなのか。



「くらえ、火炎斬り!」


「遅い!弱い!勇者には届かない!」


 逆襲の火炎斬りも簡単に避けられた。しかしサキーはもう次の手に出ている。


「セヤッ!」


 剣での攻撃は罠で、キックでユミさんを崩そうとした。どんな相手でも倒してしまえばチャンスはある。剣技で勝てないなら体術の戦いに持ち込む、そのサキーの狙いは伝わってきた。



「……むっ!」


「そんな蹴りで私を倒せるとでも?勇者が秀でているのは剣技だけではない。魔法もお前たちよりずっと高いレベルで使える!」


 古代の伝説の勇者は一人で魔王の本拠地に攻め入り、勝利したと言われている。仲間がいないのだから、回復も守備も一人でやらないといけない。万能であることが求められていた。後の時代の勇者たちにもその性質は受け継がれている。


「さすがに魔法の専門家であるキヨには負けるが、お前ごときの攻撃ならガードできる!城でしばらく指導してくれた恩に仇で返すのは少し心苦しいが……現実を教えるのもまた優しさだ」


「……試合中にお喋りは厳禁だ!くらえ!」


 今度は真空斬りだ。しかしこれもユミさんには効いていない。実力差があまりにもはっきりしていた。



「こいつ………!」


「涼しい風だった。さあ、どんどんこい!氷だろうが稲妻だろうが、納得いくまで技を出してみせろ」


 この試合の中でもどんどん強くなっている。誰も止められない存在になろうとしていた。


「勇者である私と剣聖にすら選ばれなかったお前とでは住む世界が違―――う!潔く負けを認めろ――――――っ!」


「ぐああっ……!」


 ユミさんの猛攻が始まるとサキーは守るしかない。それも長くは持たず、ついに………。



「うぐっ!!」


『ダウンだ!肩や肋骨を痛めたか、サキーは立ち上がれない!審判が確認に向かう!』


 サキーは審判を手で追い返し、続行の意思を伝える。その闘志に拍手が沸き起こったものの、これ以上続けるのは無謀だ。


「私がこれくらいで沈むはずがない、まだまだ……」


「いや、実はお前自身が誰よりもわかっているはずだ。逆転などありえないということを」


「……………」



 使えそうな作戦や技は出し尽くした。それで及ばないのなら、悔しいけれど諦めないと命が危ない。


「安心して棄権しろ。お前の分まで戦ってこの大会を制覇し、叶わなかった未来も実現させてやる」


「……………」


「剣聖として聖女と共に世界を救う夢があったと話してくれたな。それも私がやる。勇者と大聖女が手を組み一つになれば不可能なことは何もない!」


「……………!?」



 自分は軽い気持ちで話していても、聞く側が間違った受け取り方をすると恐ろしい事態になる。ユミさんの言葉がまさにそうで、この試合どころかとても多くのものに影響を与えることになった。

 横浜DeNAベイスターズがとうとう日本一まであと1勝としました。苦手としている敵地ハマスタに戻るのは不安ですが、ここまで来たら勝ちきってもらいましょう。


 史上最大の下剋上を前に、セ・リーグのライバルたちとの戦いを振り返ります。長くなりますので、興味がない方は読み飛ばしてください。



 巨人 8勝16敗1分。堅実な守備と安定した先発ローテを誇る相手に大きく負け越し。超投手有利のシーズンで守り勝つ野球を徹底した巨人は強かった。しかし打線は一年中迫力不足で、小粒なチームになった。こちらがミスをしなければ岡本を避けるだけでどうにかなると明らかになったCSでレギュラーシーズンの借りを返すことができた。



 阪神 11勝13敗1分。ほぼ互角の戦いを見せるも負け越し。7点差大逆転は熱かった。巨人と同じく守り勝つイメージで(佐藤輝以外)、見た目の打撃成績は凡庸ながら得点圏や接戦で活躍する選手が複数いて、さすがは昨年の日本一チームだった。しかしチームのピークはやはり去年で、明らかに上がり目のない野手を使い続けざるをえなかったのは痛かった。CSでは勢いの差で横浜が圧倒できた。



 広島 11勝14敗。広島が終盤に大失速したことが全ての始まりだったが、それでもこの対戦成績。9月以降は5勝1敗だったのに3つの負け越しなのだから、リーグ優勝のためにはここへの苦手意識をどうにかしないといけない。歴史的失速の原因はやはり戦力不足。外人野手が全員大ハズレで、長打力皆無はリリーフ疲弊に繋がってしまう悪循環。現場のやりくりだけでは限界がある。



 ヤクルト 15勝10敗。とにかく打ったし、打たれた。ハマスタでも神宮でも圧倒し、梶原や佐野はここぞとばかりに打撃成績を稼ぎまくった。一方で他球団相手に大人しい村上がなぜか横浜相手には大爆発、オスナにも手痛い一撃を何度も食らったので対策は急務。ヤクルトの弱点はとにかく投手で、助っ人先発二人で借金11、能力も適性もない小澤が抑え……などなど、存在自体が冗談みたいな投手陣だった。


 

 中日 15勝9敗1分。昨年に続きお得意様だったが、もっと勝ちたかった。あの高橋宏斗を何度も燃やしたり中川颯がホームランを打ったりとやりたい放題……のはずが8月以降は思うように勝てず。特に8月22 日の試合は痛恨の敗戦だった。追い出した選手たちが他球団で活躍、そのうちの一人京田の決勝打で最下位確定となってしまったあのお方はもういない。来年以降は楽な相手ではなくなるかもしれない。



 弱い相手には強い、強い相手には弱いを徹底した一年でした。CSで敗退していたらおそらく監督は退任させられたでしょうから、奇跡の生き残りでした。

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