表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大聖女の姉  作者: 房一鳳凰
第三章 スーパー闘技大会編
125/273

国王の逆襲の巻

「ハハハ……こんなもので許してやるか!」


「反省したでしょ、このダニクズたちも」


 王様や兵士たちは完全にダウンした。勝ち誇ったお父さんが壇上に立ち、大きな声で語り始めた。



『明日からは私の自慢の娘、ジャクリーン・ビューティだけを見ろ!ゲンキ・アントニオの貧相な息子どもとは違う、本物の強者を!』


「ジャッキー!ジャッキー!」


「ジャッキー!ジャッキー!」


『真の強さ、勇気、根性、愛………ジャッキーが最高の感動を与えてくれるだろう!』


「ジャッキー!ジャッキー!」


『いずれはマキと共にこの国を……いや、世界を救う人間となる!その伝説はすでに始まっているぞ!』


「ジャッキー!ジャッキー!」


 ラームたちはもちろんのこと、乗せられた一部の参加者もいっしょになって叫んでいた。



「フフ……やはり面白そうな女だぜ」


「……………」


 このままパーティーは終わり、選手たちはそれぞれの部屋に戻った。今日からはマキやラームも私の部屋に入ることは許されず、夜が明けるまで一人だ。


(久々に広いベッド、静かな夜……逆に落ち着かないな)


 これは眠れないだろうと思っていたら、すぐに意識を手放していた。自覚すらない心身の疲れがあったのか、私がいつでもどこでもすぐに眠れる人間だからなのか、時間ぎりぎりまでしっかり寝た。




「くそ〜〜〜っ………ビューティ家!王家を敵に回したことを後悔させてやる………」






 スーパー闘技大会は二日目の朝を迎えた。前座試合を三試合行い、休憩時間の後に決勝トーナメントが始まる。しかしまずは抽選会だ。


『ジャクリーン、数字は1!』


「うっ……また最初の試合か」


 この抽選に不正が入り込むことはない。何らかの偏りがあるとしてもそれは偶然だ。



『エーベル、4番!』


『フランシーヌが引いたのは……7番です!』


 選手がくじを引くごとに大きな歓声が起こり、時には悲鳴も聞こえてきた。短い時間で全員が引き終わり、二回戦の組み合わせが確定した。



『決勝トーナメント二回戦!第1試合はジャクリーン・ビューティ対キョーエン!』


「早速面白いことになったぜ!よろしくな!」


「は……はい………」


 避けたいと思っていたうちの一人と戦うことになってしまった。戦いを愛する相手だから、つまらない試合にすれば本来の実力を出しきれないこともありえる。私の勝機はそこしかない。



『第2試合はリョウオン対エーベル!シード選手同士の対戦となり、両者これが初の試合!』


「……………」


「悪霊退治は大聖女の仕事です。今の私の力がどれほどなのか、あなたで確かめさせていただきます」


 リョウオンの戦い方や得意技はまだ明らかになっていない。トーゴーから解放されたエーベルさんがどう戦うかもわからない。どちらが優勢なのか全く予想できない戦いだ。



『第3試合は注目の一戦!サキー対ユミ!共に剣での攻撃を得意としている二人です!』


「悪いな、勇者様。あんたが強くなるために面倒を見たが、指導役の私があんたを止めることになるとは」


「謝ることはない。そんな未来はありえない」


 サキーとユミさんの差はすでにほとんどなくなっていて、今ではユミさんが逆転しているかもしれない。サキーに頑張ってほしいけど、分が悪い勝負になる。



『そして第4試合はフランシーヌ対マーキュリー!』


「あなたは危険すぎる。ジャクリーンさんのためにも私がここで止めてみせる」


「……また……彼女の名前が………」


 フランシーヌさんの炎は普通の人間では防げない。ただし、マーキュリーは普通ではない。無事に試合を終えてくれることを願うばかりだ。




『ここで先程締め切られた優勝者予想のオッズが出ました!1番人気は勇者ユミ、3倍!』


「やはり私か……しかし3倍とは、まだ私の強さがわかっていない人間が多いようだな」


 ユミさんが1番人気で、マーキュリー、サキーと続いた。賭けた人数ではなく金額で決まるから、誰かがとんでもない大金を突っ込めばそれだけで人気が上がる。


『そして最低人気はやはりジャクリーン!なんと128倍!超大穴狙いでも彼女には賭けられないか!』


 ほとんど誰にも支持されないとこうなる。この少人数なのに100倍を超えるとは。


 選手自身やその家族も賭けに参加できるから、私は自分とサキーに金貨を一枚ずつ賭けた。銅貨にしようかと悩んだけど、一生に一度の思い出だからここは奮発した。



「おいジャクリーン!俺っちとやるんだ、当然デスマッチだよな?」


「いや、普通のルールでお願いします」


 即答で拒否した。あんな戦いを受けられるはずがない。


「そうか……気が変わったら言ってくれ。最高の刺激を逃す手はないと思うがな……」


 私は刺激なんか求めていない。キョーエンの闘志が冷えることを期待しているのだから、気が変わることはないと断言できる。


『選手たちが退場します!拍手をお願いします!』


 試合の直前まで待機だ。みんなとのんびりして、緊張を和らげながら出番を待つ。途中で休憩が入るからしばらく呼ばれることはない。



「デスマッチ抜きのキョーエンはどんな戦い方をするのか……そこまで警戒しなくてもよさそうですけどね」


「いざとなったら開始早々の丸め込みでいけますよ」


 真剣勝負なんだから試合内容が悪くてもいい。ビューティ家の危機を救うために少しでも上の成績が欲しい。世間の評価や名声はどうでもよかった。




「おいっ!ジャッキー!何をやっているんだ!?」


 部屋の扉が乱暴に開けられ、お父さんが息を切らしながら入ってきた。ただ事ではなさそうだ。


「どうしたの、お父さん?」


「どうもこうもあるか!お前、どうしてデスマッチを受けたんだ!?ありえないだろ!」


 寝耳に水だ。私ははっきり断ったはずなのに。



「お前が現れてサインまで書いたと言っていたぞ!その場にはゲンキを含めた複数の証人たちがいて……もう撤回できないぞ!」


「いやいや、私はずっとこの部屋に………」


 王様も証人の一人となると、デスマッチは避けられない。まったりとした部屋の空気は一変した。


「誰かがジャクリーン様に変装したのでしょう。姿、声、筆跡まで完璧に真似できる魔法の使い手が……」


「そして犯人はあいつ……国王だよ。お姉ちゃんを脱落させるためにくだらない台本を作ったんだ」




 ルリさんとマキの読みは完璧だった。王様は変身の術が使える魔術師を雇い、私に化けさせた。そしてキョーエンと第三者の証人たちの前でデスマッチへの変更を提案していた。


(グフフ……これで正真正銘お前はおしまいだ!)

 4勝2敗で横浜日本一 (理想)

 4敗で敗退 (現実)


 いよいよ日本シリーズ開幕!土日のハマスタで最低1勝はしないと横浜に戻ってくることはできないでしょう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ